B型肝炎の新規治療薬を開発するための宿主の自然免疫系の解析に関する研究

文献情報

文献番号
201423036A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎の新規治療薬を開発するための宿主の自然免疫系の解析に関する研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤田 尚志(京都大学 ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 宣之(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 土方 誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 柘植 雅貴(広島大学 自然科学研究支援開発センター)
  • 渡邊 綱正(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 水腰 英四郎(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 竹原 徹郎(大阪大学 医学研究科)
  • 斎藤 泉(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
201,667,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)自然免疫は細胞に備わるウイルス増殖抑制機構であり、その活性化はウイルスの感染排除に重要と考えられるがHBVに対する自然免疫機構は解明が進んでおらず、その解明を行う。
(2)HBVによる免疫系の阻害機構を解明し、新たな治療法の開発の基盤とする。
(3)複数のストラテジーによってHBV感染の治療法の糸口を開発することにより、新たな薬剤の開発、遺伝子治療法の開発へつなげる。
研究方法
(1)HBV感染の受容体分子として報告されたヒトNTCPを肝細胞株に強制発現し、ウイルス粒子からの感染系を作り、HBV増殖と自然免疫の関連を解析する。
(2)培養細胞でのHBV増殖に対するcGASおよりSTINGの影響を検討した。
(3)ヒト不死化肝細胞HuS-E/2細胞にhNTCP発現した細胞を用いてHBV感染実験を行う。
(4)培養細胞でのHBV感染実験を行い、誘導される遺伝子を解析する。
(5)HBV genotype C感染患者血清をヒト肝細胞キメラマウスに接種し、HBV持続感染マウスを作製する系を用いてHBVによる宿主遺伝子発現への影響を次世代シークエンサーを用いて解析する。
(6)ヒト肝臓置換キメラマウスおよび初代ヒト肝細胞にHBVを感染させ、その増殖、サイトカイン似寄るウイルス増殖抑制を検討する。
(7)HBV感染患者から樹状細胞(DC)をplasmacytoid DCとmyeloid DCに分離して分画し、各種遺伝子発現を検討する。対照として非感染健常者の同分画を用いて比較を行う。
(8)NK細胞のサブセット分類とその機能解析を行う。HBV感染者と非感染者でNK細胞表面マーカー、ウイルスDNA量、抗ウイルス剤、インターフェロン治療応答性の関連を検討する。
(9)HBVに対するshRNAを発現するアデノウイルスベクターを作成し、そのウイルス増殖抑制効果を検討する。発現ベクターの構築を行なう。
(10) VARNAを発現しないアデノウイルスベクターを作成し、その有用性を検討する。
結果と考察
(1) HBVの受容体として報告されたヒトNTCPをHepG2細胞に発現させた。この細胞はHBV粒子からの感染が可能であった。この細胞で細胞質ウイルスRNAセンサーであるRLRの機能を阻害するとHBV増殖が高率に増加した。以上よりHBVはRNAセンサーによって感知され、増殖が制御されていると考えられた。
(2)cGASの発現量とHBVの増殖は逆相関しており、このセンサーがHBVを感知して免疫応答を起こしていることが示唆された。
(3)HuS-E/2細胞にNTCPを発現させた細胞はHBVを増殖させることができるが、その効率は株ごとに異なっており、なんらかの制御機構が働いていることが示唆された。
(4) 培養細胞にHBVを感染させ、宿主の遺伝子発現の変動を検討した結果、ケモカインの発現誘導が顕著であることが観察された。マウスでの実験位置いてもケモカインの発現誘導が観察され、これらの感染病態への関与が示唆された。
(5)ヒト肝キメラマウスを用いた感染実験で、遺伝子発現プロファイルを解析した所、感染後8週で大きな発現変化が観察され、解析の結果、これらの遺伝子の制御領域の解析を行った。
(6)ヒト肝キメラマウスより分離した初代(ヒト)肝細胞にHBVを感染させると、IFN-λが強く誘導されることを見出した。しかしながら抗HBV効果はIFN-α、-λで差がなかった。
(7)樹状細胞(DC)の遺伝子発現のパターン解析により、病態に関連した遺伝子群を同定することができた。これらからHBV感染による免疫抑制の指標となるものを探し出し、治療効果の判定に用いる可能性が示唆された。
(8) HBV感染者のNK細胞の解析により、高ウイルス群ではNK細胞の低下が見られた。HBV感染によって増加すると考えられるNK亜型を同定し、それらが細胞傷害性が高いことより、肝傷害との関連が示唆された。一方、同亜型はIFN治療によって増加することから、治療効果との関連も示唆された。
(9) HBVに対する複数のshRNAを発現することによってHBV増殖抑制効果が明らかとなった。VAを欠損する新規アデノウイルスベクターは宿主遺伝子発現を大きく変動することがなく、治療目的に有用であることが示唆された。
結論
各研究グループで研究の基礎の系が確立し、実際にHBV感染実験結果が得られてきている。着実に研究が進行していると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201423036Z