肝疾患患者における肝がん発症に寄与する宿主遺伝要因の同定・遺伝子機能解析を目指す研究

文献情報

文献番号
201423026A
報告書区分
総括
研究課題名
肝疾患患者における肝がん発症に寄与する宿主遺伝要因の同定・遺伝子機能解析を目指す研究
課題番号
H25-肝炎-若手-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西田 奈央(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本は先進国中で肝がんが最も多い国であり、近年では肝炎ウイルスが原因の肝がん発症だけでなく、HBV、HCV以外を背景とする肝がん患者が増加している。また、欧米だけなく日本においても肥満と糖尿病の増加が社会的な問題の一つとなっており、肥満や糖尿病から肝臓がんが誘発されることが裏付けられていることから、糖尿病と肝がんの関わりを明らかにすることを本研究の目的とする。
本研究は2つの最終目標達成を目指す。1つは、「B型肝炎およびC型肝炎由来肝がんの関連遺伝子の同定およびその遺伝子機能の解明」とし、もう1つは「各種肝疾患における2型糖尿病発症の関連遺伝子の同定とその遺伝子機能の解明」とする。
研究方法
研究全体の計画として、肝がん関連遺伝子の同定、および2型糖尿病患者における肝発癌関連遺伝子の同定を目指して、ゲノムワイドSNP解析やNGSを用いたゲノム解析を実施する。NGSを用いたゲノム解析では、100検体程度の肝がん患者を対象として全RNA解析や全ゲノム解析を実施し、癌化に関連する融合遺伝子やゲノム変異、ゲノム構造異常などを探索する(平成25-26年度)。また、肝がん患者群を対象としたGWASでは多くの検体を必要とするため、FFPEサンプルが使用できる状態になった後でゲノムワイドSNP解析を実施する(平成26-27年度、目標症例数:1,000検体)。また、2型糖尿病患者の中で肝細胞癌を有する群、有さない群に分けた関連解析を実施することで、2型糖尿病患者における肝発癌の関連遺伝子の同定を目指す。必要に応じて、疾患感受性遺伝子領域を対象としたTarget resequencingや全RNA解析、全ゲノム解析などを実施し、ゲノム解析データと各検体の詳細な臨床背景を加えて統合的に解析することで、その遺伝子機能の解明を目指す(平成27年度)。
結果と考察
(1) Affymetrix社やIllumina社のゲノムワイドSNPタイピングデータを用いて、StaGen社と共同でHLA遺伝子のTagging SNPの選択を行った結果、5つのHLA遺伝子について95.2%-99.5%の精度でImputationが可能となった
(2) 新たに収集した症例を対象としてHLA-DPB1タイピングを実施し、HLA-DPB1アリルとB型肝炎慢性化の関連解析を実施した。2014年に論文報告した結果と合わせた関連解析を実施したところ、B型肝炎慢性化に対して抵抗性の関連を示す3つのDPB1アリル、および感受性の関連を示す2つのDPB1アリルの関連がより確かとなることが明らかとなった。
(3) 個別のHLA-DPB1遺伝子型で関連解析を実施したところ、i) 感受性/抵抗性アリルを2つ有する症例で関連が相加的に強くなる、ii) 感受性アリルと抵抗性アリルのヘテロ症例ではどの組み合わせても抵抗性の関連を示す、iii) 感受性アリルのヘテロ症例、および抵抗性アリルのヘテロ症例ではホモ症例よりも有意に関連が強まる、ことが明らかとなった。
(4)これまでに取得済みのタイピングデータと共に新たに取得した892例のタイピングデータを用いて、HLA-DPB1アリルでの層別化GWASを実施した。2つの感受性アリルおよび3つの抵抗性アリルの有無で層別化GWASを実施したところ、抵抗性アリルを有する症例での層別化GWASにおいて、有意な関連を示す遺伝子領域を検出した。加えて、感受性アリルを有する症例での層別化GWASも実施し、P <10-5となったSNPを含む遺伝子領域について、東北メディカルメガバングとの共同研究でImputation解析を実施している。
(5) 2型糖尿病を背景に有する肝発癌患者および非肝発癌患者について、2型糖尿病の疾患感受性SNPとして報告された58SNPsを対象とした関連解析を実施したところ、有意な関連を示す遺伝子領域を検出した。
結論
これまでに取得したゲノムワイドSNPタイピングデータを用いてHLA Imputation(5つの遺伝子座)を実施することが可能となったことから、HLA-DPB1遺伝子以外のHLA class II遺伝子(DRB1遺伝子やDQB1遺伝子)やHLA class I遺伝子とB型慢性肝炎や肝発がんとの関連を調べることが可能となった。
HLA Imputationを実施し、HLA class II遺伝子だけでなくHLA class I遺伝子とB型慢性肝炎や肝発がんとの関連解析を実施する。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-01-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423026Z