B型肝炎の慢性化・ウイルス排除に関連する遺伝要因について、HLAアリルおよび免疫関連遺伝子群を網羅的に探索する研究

文献情報

文献番号
201423025A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎の慢性化・ウイルス排除に関連する遺伝要因について、HLAアリルおよび免疫関連遺伝子群を網羅的に探索する研究
課題番号
H25-肝炎-若手-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
澤井 裕美(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科人類遺伝学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、B型肝炎の慢性化・ウイルス排除や病態進展に関与する遺伝要因を免疫関連遺伝子を中心として網羅的に探索すると共に、既知の遺伝要因であるHLA-DPの詳細な検討を実施する。
研究方法
日本全国の研究協力施設からDNA及び血清を効率的に収集し、詳細な臨床情報と共に管理するシステムを用いた検体取集・臨床情報の蓄積を行った。新規に収集したサンプルは受託会社にてDNAおよび血清を抽出・分離した後に国立国際医療研究センターへ送られた。収集された臨床情報を元に病態毎に検体を分類し、ゲノム解析用の新たなIDが付加された。二重匿名化されたゲノムDNAと臨床情報は、東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野に送られた。
結果と考察
HLA-DP遺伝子の詳細な検討を目的とし、日本人HBV患者群489検体、HBV既往感染者群335検体、健常者群467検体に対して、HLA-DPA1およびHLA-DPB1のHLAタイピングを実施した。また、日本人での解析結果と比較する為、韓国集団計586検体、香港集団計661検体およびタイ集団計629検体についてもHLAタイピングを実施した。
日本人集団のHBV患者群と健常者群のHLA-DPB1アリルで関連解析の結果、HLA-DBP1*05:01、 HLA-DPB1*04:02で有意な関連が見られ、先行研究と同様の結果が得られた。また、それ以外に未報告の2つの抵抗性アリルと1つの感受性アリルで関連が示された。HLA-DPA1-HLA-DPB1ハプロタイプについても関連解析を実施したが、特定のハプロタイプで関連が相加的に強まる傾向は見られなかった。更に、抵抗性アリルをホモで有する場合とヘテロで有する場合を比較し、ヘテロで有する方がより有意な関連を示すことを明らかにした。感受性アリルについても同様の検討を行い、ヘテロでより有意な関連を示した。韓国集団、香港集団、タイ集団においても関連解析を実施し、韓国集団では日本集団と共通のアリル(HLA-DPB1*05:01, HLA-DPB1*04:02)が感受性・抵抗性に関連する事が示され、香港集団では共通のアリル(HLA-DPB1*02:01)が抵抗性に関連する事が示された。タイ集団では、日本集団とは異なるアリルの関連が示された。
HBVウイルス排除に関連するHLA-DPアリルを同定する為、日本人集団のHBV患者群とHBc抗体陽性群のHLA-DPB1アリルの関連解析を行ったところ、HLA-DBP1*09:01、 HLA-DPB1*04:02で有意な関連が見られた。またHLA-DPB1*02:01, HLA-DPB1*04:01, HLA-DPB1*04:02でも関連の傾向が見られ(0.1<p<0.5)、HBV持続感染と共通のアリルでの関連が示された。B型慢性肝炎患者群および無症候性キャリア群計261検体と肝硬変および肝癌患者群計207検体を用いた関連解析の結果、HLA-DPB1*02:01が病態進展にも関連するアリルとして同定された。
B型肝炎の慢性化に関連する新規の遺伝要因探索を目的としてGWASを実施した。P<10-4を示すSNPは529か所見られ、そのうちHLA領域に位置するSNPは471か所にのぼった。また、B型肝炎の癌化に関連する新規の遺伝要因探索を目的としてWASを実施した。P<10-5を示すSNPは53か所見られ、そのうちHLA領域のSNPは49か所にのぼった。4SNPを選択し、独立の日本人検体およびアジア集団の検体を用いて再現性を検証した。いずれの集団においてもGWASの解析結果と同様の傾向を示し、メタ解析の結果、4SNP中3SNPでゲノムワイド有意水準に達した。
<考察>
HBV持続感染に関連するHLA-DPB1アリルが集団によって異なる要因としては、各国における一般集団でのHLA-DPB1アリル頻度が大きく異なる事によると考えられる。一般集団におけるアリルの分布を更に詳しく調べると共に、更に検体数を増やした解析を実施する事で、HLA-DPアリルと病態の関わりをより詳しく調べる事が出来る。
結論
日本を含む東アジア集団サンプル約3,200検体について大規模HLAタイピングを実施し、慢性化、ウイルス排除及び病態進展に関与するHLA-DPB1アリルを同定した。アジアにおいて、慢性化および病態進展に関連するアリルの共通性と異質性を調べる事で、病態におけるHLA-DPの機能の理解に繋がると共に、日本およびアジアにおける治療方針決定に役立つ事が期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201423025Z