自己幹細胞からの革新的肝再生療法の開発と応用

文献情報

文献番号
201423018A
報告書区分
総括
研究課題名
自己幹細胞からの革新的肝再生療法の開発と応用
課題番号
H25-肝炎-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所、難治性疾患研究)
研究分担者(所属機関)
  • 大河内仁志(国立国際医療研究センター 細胞組織再生医学研究部)
  • 霜田  雅之(国立国際医療研究センター 細胞組織再生医学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本課題では、研究代表者が発明したペプチドベクター(NTP:nuclear trafficking peptide)を用いて、蛋白質を用いた細胞形質転換法を確立する。NTPはcell penetrating peptideとして機能し、NTPを付加した蛋白質を細胞の培養液に添加すると、既存のどのペプチドベクターよりも効率良く、細胞内に蛋白質が運搬される。そこで、人工転写因子や人工制限酵素をNT付加蛋白質として間葉系幹細胞に作用させ、肝臓細胞へ分化誘導させる技術やウイルス感染に対して抵抗性を示す細胞の作成技術を開発する。
研究方法
a. ヒト間葉系幹細胞(hMSCs)から肝臓細胞への分化誘導:間葉系幹細胞から肝臓細胞への分化を誘導するためのシステムが複数報告されているが、肝臓細胞が作成できるまでに要する期間は3-4週間と長期である。一方、Hepatocyte nuclear factor (HNF)3β等の遺伝子をhMSCに導入すると肝臓細胞への分化が速やかに誘導できることが報告されている。そこで、NTP付きの転写因子を作用させることで、分化誘導に要する期間を短縮し、速やかにin vivoで機能する細胞を作成する。NTP付きHNFsを調製し、培養系に添加した後、肝臓細胞への分化誘導の有無を解析した。また、近年、人工制限酵素として開発されたTALE(transcription activator-like effectors)に転写因子として機能するVP64(4つのVP16からなる転写因子)を融合させた人工転写因子をNTPと組み合わせることで、標的遺伝子の発現が誘導できるか否かについても検証した。

b. NTPを用いたゲノム編集技術の確立: C型肝炎ウイルスの複製に関与する宿主因子として、フォスファチジルイノシトール4キナーゼIIIα(PI4KIIIα、以下hPI4Ka)遺伝子が同定されている。そこで、同遺伝子を標的としたNTP付加型人工制限酵素を作成し、ゲノム編集の可能性を検証した。人工制限酵素として、TALE-nuclease(TALEN)を用いた。
結果と考察
a. hMSCsから肝臓細胞への分化誘導: NTP付加HNF3βと4 α をコムギ胚芽無細胞系蛋白質発現システムで発現・精製し、実験に供した。NTP付加型HNF3βとHNF4αタンパク質を 同時に、nMレベルで、3回作用させたところ、培養15日後に肝臓分化の指標である種々のmRNA発現量の増加を認めた。
 次に、より強力に分化転換を促すため、NTPのN末側のTagをグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)ではなく、6xHis Tagに変更した分子を使用した。大腸菌発現誘導系にて大量に精製したNTP付加型HNF3βとHNF4α蛋白質を10nM,30nMおよび、50 nMの1回添加後、肝臓細胞への分化誘導の有無を評価した。その結果、添加3日目において内在性HNF3β、HNF4α及び肝臓分化指標であるα-フェトプロテイン(AFP)とサイトケラチン18(CK18)の発現増加を認めた。また、NTP付きTALE-VP64も機能性を示すことが分かった。

b. NTPを用いたゲノム編集技術の確立:NTP付加型TALENもNTPを付加していないものと同様の頻度でin vitroでのゲノム編集活性を示した。培養細胞に同蛋白質を作用した後、抽出したゲノムDNA中のPI4KIIIα遺伝子変異を調べた。その結果、低頻度ながら、変異が認められた。また、今回hPI4Ka のエクソン31の配列を標的としてTALENを作成したが、これは、類似した配列を有する同遺伝子エクソン12領域に対しては、ゲノムDNAの切断活性は示さなかった。
結論
a. hMSCsから肝臓細胞への分化誘導
今回、NTPを付加した転写因子に加えて、NTP付加型TALE-VP64蛋白質も人工転写因子として機能することを認めた。TALE-VP64による遺伝子発現誘導は、転写因子そのものを用いるシステムと比較して、様々な利点が考えられる。次年度では、間葉系幹細胞から肝臓細胞への分化誘導を効率的に行うことができるTALE-VP64人工転写因子を同定し、分化誘導した細胞のin vivoでの機能性を評価する。
b. NTPを用いた蛋白質によるゲノム編集
ゲノム編集の効率はまだ十分ではないが、NTP付き人工制限酵素を用いてPI4KIIIα遺伝子に変異を導入することが可能になった。次年度では、ゲノム編集効率の改善とともに、第三世代の人工制限酵素であるClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat (CRISPR)システムの有用性も検討する。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
46,800,000円
(2)補助金確定額
46,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 26,048,217円
人件費・謝金 9,233,907円
旅費 0円
その他 717,876円
間接経費 10,800,000円
合計 46,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
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