B型肝炎の核酸アナログ薬治療におけるdrug freeを目指したインターフェロン治療の有用性に関する研究

文献情報

文献番号
201423002A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎の核酸アナログ薬治療におけるdrug freeを目指したインターフェロン治療の有用性に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田中 榮司(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 新海 登(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 平松 直樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 鈴木 義之(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 肝臓センター)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 西口 修平(学校法人兵庫医科大学 内科学肝・胆・膵科)
  • 柘植 雅貴(国立大学法人広島大学 自然科学研究支援開発センター)
  • 神田 達郎(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 姜 貞憲(医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 消化器病センター)
  • 黒崎 雅之(日本赤十字社武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 峯 徹哉(学校法人東海大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、核酸アナログ(NUC)中止に際しIFNまたはPeg-IFNをシークエンシャルに併用することの有用性およびその効果予測因子を検討することを目的とする。2014年度は、後向き研究の成績をまとめるとともに、前向き研究ではPeg-IFN投与終了時点までのデータで中間解析を行った。
研究方法
NUC/IFNシークエンシャル治療の後向き研究では、NUC終了時に通常型IFNを4週間併用し、さらに20週間IFN単独で投与した。効果判定はIFN投与終了後24ヶ月の時点で行い、HBV DNAが4.0 log copies/ml未満、ALTが30 IU/L未満、HBeAg陰性の3条件を満たすものを著効とした。対象とした50例の背景では、年齢の中央値は35歳と比較的若く、男性が3/4を占めた。NUCの投与期間中央値は6ヶ月で、IFNへ切替時のNUCはLVDが80%を占めた。
NUC/Peg-IFNシークエンシャル治療の前向き研究のプロトコールは大きくA群とB群に分かれ、A群ではNUC中止直後にPeg-IFNを投与し、B群では中止後肝炎が再燃した時点でPeg-IFNの投与かNUC薬の再投与を行う。全例Peg-IFNα2a(180μg)を使用し48週間投与とした。登録期間内に合計146例が登録され、A群が104例、B群が42例であった。2014年度は、10月の時点でPeg-IFNの48週投与が終了したA群の83例を対象に、Peg-IFN投与中のHBs抗原量の低下速度に関連する因子を検討した。対象とした83例の背景因子では、年齢中央値は44歳と比較的高齢であり、性別は男性が多かった。NUC投与期間の中央値は5.6年と長く、使用NUCもLVD+ADV、ETV単独、ETV+ADVが主であった。
結果と考察
NUC/IFNシークエンシャル治療での著効と関連する因子の多変量解析では、IFN開始時のHBs抗原が3.0 log IU/ml未満(P = 0.002)とHBcr抗原が4.5 log U/ml未満(P = 0.003)の2つが有意の因子として抽出された。IFN投与終了後の経過観察期間において、ALTとHBV DNAの最高値が24ヶ月著効と有意に関連していた。すなわち、ALT値は128 IU/l以上となることが非著効を予測する有意な因子(P< 0.001)であり、HBV DNAは4.5 log copies/ml以上になることが非著効を予測する有意な因子(P< 0.001)であった。ALTが128 IU/l以上になった時点を再燃とすると、IFN終了後6ヶ月までは再燃が高頻度であり、その後は比較的低頻度となった。
 NUC/Peg-IFNシークエンシャル治療におけるPeg-IFN投与中のHBs抗原の推移は、切替時のHBs抗原が3.6 log IU/ml以上の症例では経過中ほとんど変化しなかったのに対し、3.6 log IU/ml未満の症例では比較的急速に低下する症例が少なからずみられた。今回、HBs抗原低下速度をROC解析した結果より、HBs抗原が年間0.56 log IU/ml以上低下する症例を急速低下例と定義した。この急速低下例の予測因子の多変量解析では、Peg-IFNへ切替時のFactor Xが15.0 pg/ml以上(P = 0.005)とHBs抗原が3.0 log IU/ml未満(P = 0.006)が有意の因子として算出された。Peg-IFNへ切替時のHBs抗原が高値例(3.6 log IU/ml以上)では、Factor Xの低値例、高値例とも急速低下例はなかったのに対し、HBs抗原の非高値例(3.6 log IU/ml未満)では、Factor Xの高値例(57%、8/14)で低値例(18%、7/40)に比較して有意(P = 0.012)にHBs抗原急速低下例が多い傾向がみられた。Peg-IFNへ切替時のFactor Xの分布をみると、Cut-off値として用いた15.0 pg/mlを境に2峰性の分布を示した。また、使用する核酸アナログの種類によりFactor X量が大きく異なっていた。Peg-IFNαの安全性評価では既報と明らかな差はなかった。
結論
NUC/IFNシークエンシャル治療において、IFNへ切替時のHBs抗原とHBcr抗原はシークエンシャル治療の導入を判断する指標になる可能性が示唆された。また、同治療の効果判定は、治療終了後の少なくとも6ヶ月以降に行うべきである。
NUC/Peg-IFNシークエンシャル治療において、Peg-IFNへ切替時のHBs抗原低値とFactor X高値がPeg-IFN投与中のHBs抗原量急速低下を予測する有意の因子であり、HBs抗原消失を目指す治療の指標となる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201423002B
報告書区分
総合
研究課題名
B型肝炎の核酸アナログ薬治療におけるdrug freeを目指したインターフェロン治療の有用性に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田中 榮司(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 新海 登(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 平松 直樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 鈴木 義之(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 肝臓センター)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 西口 修平(学校法人兵庫医科大学 内科学肝・胆・膵科)
  • 柘植 雅貴(国立大学法人広島大学 自然科学研究支援開発センター)
  • 神田 達郎(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 姜 貞憲(医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 消化器病センター)
  • 黒崎 雅之(日本赤十字社武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 峯 徹哉(学校法人東海大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型慢性肝炎の核酸アナログ(NUC)治療において単純中止が可能な症例の比率は低く、効率的な中止には積極的な治療介入が必要と考えられた。本研究班では、NUC中止に際しIFNまたはPeg-IFNをシークエンシャルに併用することの有用性およびその効果予測因子を検討することを目的とする。
研究方法
NUC/IFNシークエンシャル治療の後向き研究では、NUC終了時に通常型IFNを4週間併用し、さらに20週間IFN単独で投与した。効果判定はIFN投与終了後24ヶ月の時点で行い、HBV DNAが4.0 log copies/ml未満、ALTが30 IU/L未満、HBeAg陰性の3条件を満たすものを著効とした。対象とした50例の背景では、年齢の中央値は35歳と比較的若く、男性が3/4を占めた。NUCの投与期間中央値は6ヶ月で、IFNへ切替時のNUCはLVDが80%を占めた。
NUC/Peg-IFNシークエンシャル治療の前向き研究のプロトコールは大きくA群とB群に分かれ、A群ではNUC中止直後にPeg-IFNを投与し、B群では中止後肝炎が再燃した時点でPeg-IFNの投与かNUC薬の再投与を行う。全例Peg-IFNα2a(180μg)を使用し48週間投与とした。登録期間内に合計146例が登録され、A群が104例、B群が42例であった。2014年10月の時点でPeg-IFNの48週投与が終了したA群の83例を対象に、Peg-IFN投与中のHBs抗原の低下速度に関連する因子を検討した。対象とした83例の背景因子では、年齢中央値は44歳と比較的高齢で、性別は男性が多かった。NUC投与期間の中央値は5.6年と長く、使用NUCはLVD+ADV、ETV単独、ETV+ADVが主であった。
結果と考察
NUC/IFNシークエンシャル治療の著効と関連する因子の多変量解析では、IFN開始時のHBs抗原が3.0 log IU/ml未満(P = 0.002)とHBcr抗原が4.5 log U/ml未満(P = 0.003)の2つが有意の因子として抽出された。IFN投与終了後の経過観察期間において、ALTとHBV DNAの最高値が24ヶ月著効と有意に関連していた。すなわち、ALTは128 IU/l以上となることが非著効を予測する有意な因子(P< 0.001)であり、HBV DNAは4.5 log copies/ml以上になることが非著効を予測する有意な因子(P< 0.001)であった。ALTが128 IU/l以上になった時点を再燃とすると、IFN終了後6ヶ月までは再燃が高頻度であり、その後は比較的低頻度となった。
NUC/Peg-IFNシークエンシャル治療において、Peg-IFN投与中のHBs抗原の推移は、切替時のHBs抗原が3.6 log IU/ml以上の症例では経過中ほとんど変化しなかったのに対し、3.6 log IU/ml未満の症例では比較的急速に低下する症例が少なからずみられた。今回、HBs抗原の低下速度をROC解析し、同抗原が年間0.56 log IU/ml以上低下する症例を急速低下例と定義した。この急速低下例の予測因子の多変量解析では、Peg-IFNへ切替時のFactor Xが15.0 pg/ml以上(P = 0.005)とHBs抗原が3.0 log IU/ml未満(P = 0.006)が有意の因子として算出された。Peg-IFNへ切替時のHBs抗原が高値例(3.6 log IU/ml以上)では、Factor Xの低値例、高値例とも急速低下例はなかったのに対し、HBs抗原の非高値例(3.6 log IU/ml未満)では、Factor Xの高値例(57%)で低値例(18%)に比較して有意(P = 0.012)にHBs抗原急速低下例が多い傾向がみられた。Peg-IFNへ切替時のFactor Xの分布をみると、Cut-off値として用いた15.0 pg/mlを境に2峰性の分布を示した。また、使用する核酸アナログの種類によりFactor Xが明らかに異なっていた。Peg-IFNαの安全性評価では既報と明らかな差はなかった。
結論
NUC/IFNシークエンシャル治療において、IFNへ切替時のHBs抗原とHBcr抗原が著効を予測する有意の因子であり、両抗原はシークエンシャル治療の導入を判断する根拠になる可能性が示唆された。また、同治療では、治療終了後の少なくとも6ヶ月以降に効果判定を行う必要がある。
NUC/Peg-IFNシークエンシャル治療において、Peg-IFNへ切替時のHBs抗原低値とFactor X高値がPeg-IFN投与中のHBs抗原急速低下を予測する有意の因子であり、HBs抗原消失を目指す治療の指標となる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201423002C

収支報告書

文献番号
201423002Z