小児におけるB型肝炎の水平感染の実態把握とワクチン戦略の再構築に関する研究

文献情報

文献番号
201422009A
報告書区分
総括
研究課題
小児におけるB型肝炎の水平感染の実態把握とワクチン戦略の再構築に関する研究
課題番号
H25-肝炎-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
須磨崎 亮(筑波大学 医学医療系)
研究分担者(所属機関)
  • 乾 あやの(横浜市東部病院小児肝臓消化器科)
  • 井上 貴子(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 内田 茂治(日本赤十字社中央血液研究所)
  • 江口 有一郎(佐賀大学医学部肝疾患医療支援学)
  • 惠谷 ゆり(大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌科)
  • 清原 知子(国立感染症研究所ウイルス第二部第五室)
  • 久保 隆彦(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター)
  • 黒川 真奈絵(聖マリアンナ医科大学大学院疾患プロテオーム)
  • 佐々木 美香(岩手医科大学小児科小児科)
  • 高野 智子(大阪府立急性期・総合医療センター小児科)
  • 滝川 康裕(岩手医科大学内科学講座消化器内科)
  • 田中 純子(広島大学医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学)
  • 福島 敬(筑波大学医学医療系)
  • 村田 一素(国立国際医療センター 国府台病院)
  • 柳瀬  幹雄(国立国際医療研究センター消化器内科学)
  • 山崎 一美(長崎医療センター臨床研究センター)
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 牛島 高介(久留米大学医療センター小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
36,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎(HB)ワクチン定期接種化の検討のために、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で科学的根拠を求められた3課題について研究した。1.小児期のB型肝炎ウイルス(HBV)感染の実態把握、2.HBワクチン接種後のHBs抗体陽転率とHBs抗体持続期間、3.遺伝子型の異なるHBVに対するHBワクチン効果。
研究方法
課題1:1)茨城県と岩手県における小学校4年生を対象にした生活習慣病予防健診、2)国立感染症研究所の感染症流行予測調査、3)小児の病院受診者の3集団から得た残余血清を用いてHBs抗原とHBc抗体を測定し、さらに4)若年初回献血者のデータ、5)数理モデルを用いた垂直・水平感染比率の検討、6)HBV高度侵淫時期の保存検体を用いた学童の感染実態調査を行った。課題2:1)岩手医科大学と筑波大学の医療系学生にHBワクチン接種し、HBs抗体を測定し陽転率を調査。2)筑波大学附属病院および国立国際医療センターでHBV感染リスクの高い医療従事者対象にHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体検査を実施。HBs抗体<100 mIU/mLの者にビームゲンを1回皮下注し、HBs抗体価を測定して免疫記憶を確認。課題3:遺伝子型C由来ワクチンであるビームゲンを接種して得たヒトモノクローナルHBs抗体を用いてヒト肝細胞キメラマウス、初代肝細胞三次元培養系を用いた感染実験とELISA法によるHBs抗体の反応性の検討を行った。また、遺伝子型Aの母子感染予防処置に遺伝子型Cを使用した症例の経過を調査した。
結果と考察
課題1:1)茨城県では昨年と合わせ総計7,284人中HBs抗原陽性者0人、HBc抗体陽性31人(0.43%)。岩手県では3,927名で実施し、HBs抗原陽性0人、HBc抗体陽性3人(0.076%)であった。HBc抗体陽性者はHBs抗原陽性者と比べ明らかに多く、地理的に散在し、幼児期から学童期にかけて小児の日常生活の中でHBV一過性感染が小規模集団で起こっている可能性がある。2)15府県の健康小児(10-15歳)1,000名でHBs抗原陽性は、2検体(0.2%, 95%CI 0-0.48%)であった。3)大都市・北海道・九州地方を中心とした多施設共同研究を8施設で行い、4,479検体を検討した。HBs抗原陽性者は1例(0.022%)、HBc抗体陽性者は45例(1.00%)であった。HBc抗体陽性者の年齢別検討では、乳幼児期から一定確率の感染者が存在し、乳児期のワクチン接種が望ましいと考えられる。1)-3)を合わせると、HBs抗原陽性率は6/18,690(0.032%, 95%CI 0.006-0.058%)、HBc 抗体陽性率は83/15,890(0.52%, 95%CI 0.41-0.63%)であった。さらにHBV母子感染予防処置により母子感染者は激減したが、水平感染によると推計されるHBV感染者や既往感染者が一定数存在していることが判明した。母子感染予防処置に加え、定期接種化により水平感染を予防することの重要性が示された。課題2:昨年度と合わせ802名を検討。初回ワクチン1シリーズ終了後のHBs抗体価10 mIU/ml未満は43名(5.4%)、10~100 mIU/mlは199名(24.8%)、100 mIU/ml以上は560名(69.8%)。 2)過去にHBワクチン接種した病院職員でHBs抗体陰性率は16.9-22.5%であった。さらに接種後に職業感染が疑われる人が少数ながら存在した。HBs抗体陰性でも、HBワクチンの1回接種により陽転化する人は88.4%であり、多くの人で免疫記憶があることが明らかになった。課題3:遺伝子型C由来のHBワクチンにより得られた抗体は、遺伝子型Aやエスケープ変異株のHBVに対しても反応し、一定濃度以上では感染防御効果を有することが示された。また、遺伝子型Aの母子感染予防処置に遺伝子型Cのワクチンを用いた調査によると、4例ともHBs抗体価は1,000 mIU/mL以上に上昇し、感染防御が可能であった。以上のことより、定期接種化に際し、遺伝子型A、Cいずれのワクチンも使用可能と考えられた。
結論
本結果を2015年1月の厚生科学審議会(予防接種基本方針部会および予防接種・ワクチン分科会)で報告し、乳児を対象にB型肝炎定期接種化を行う方針が承認された。今後は定期接種化に向けて、HBV感染症およびワクチン接種の意義について正しい知識の理解・普及に努めると同時に、産科・小児科・内科医のさらなる連携のためのシステム作りを行う。また、追加接種の必要性についての検討、ワクチン不応例やエスケープ変異株に対する対策、混合ワクチンの開発が急務である。

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201422009Z