文献情報
文献番号
201422005A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス検査体制の整備と受検勧奨に関する研究
課題番号
H26-肝政-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 真吾(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 今井 光信(田園調布学園大学 人間福祉学部)
- 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所)
- 村田 一素(国立国際医療研究センター国府台病院)
- 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
保健所及び委託先医療機関並びに一般医療機関における肝炎ウイルス検査を充実させ、より多くの潜在的感染者を肝臓専門医のいる医療機関での受診につなげるため、保健所等における肝炎ウイルス検査体制の実態把握、整備及び効果的広報の実施並びに肝炎に関する正しい知識の普及啓発のための研究を行うとともに、医療機関において手術前等に行われる肝炎ウイルス検査の結果の説明状況等を把握することを目的とした。
研究方法
全国の保健所を対象とする肝炎検査に関するアンケート調査を実施。また「保健所等における肝炎ウイルス検査相談マニュアル」の評価等をアンケート調査によって分析。病院における入院時及び手術前スクリーニングを含む肝炎ウイルス検査と結果の説明に関する実態を調査。全国の自治体における肝炎ウイルス検査に関する情報提供ウェブサイトを完成させ、そのアクセス数等を解析。川崎市において肝炎ウイルス検査に関するインターネットアンケート調査をし現状を分析。
結果と考察
保健所における肝炎検査に関する全国保健所アンケート調査では、回答のあった施設の94.4%で特定感染症検査事業の肝炎ウイルス検査を実施していた。検査数と陽性数はHBVは30,917件と507件(1.64%)、HCVは26,548件と396件(1.49%)であった。実施条件に関しては年齢制限なし82.8%、居住地制限なし69.8%、受検経験制限なし42%、匿名可44.9%で、また月2回以下の検査実施施設が54.8%、土日検査は0.9%、夜間検査は0%であった。テレビ等での報道が受検促進につながること、他の検査機関での過去の検査結果を自覚していない人が多いことが分かった。
病院における肝炎ウイルス検査と検査結果の説明に関する実態調査において、厚生労働省の「手術前等に行われる肝炎ウイルス検査の結果の説明について」の通知後、結果説明に関する取り組みを行っている施設が38.7%から43.2%に微増した。新たに取り組みを始めた施設の81.1%から改善されたとの回答があった。今後、病院での肝炎ウイルス検査の結果が陽性・陰性にかかわらずすべての受検者に適切に伝わるよう取り組みを強化することが重要である。
自治体における肝炎ウイルス検査の広報に関する研究として、全国の自治体で実施されている肝炎ウイルス検査情報を提供するためにウェブサイト「肝炎ウイルス検査マップ」(http://kensa.kan-en.net)を作成、2014年の総訪問数は453,971件にのぼった。肝炎に関するニュース等がマスメディアで取り上げられると訪問数が急激に増加することが分かった。キーワード検索でも上位に表示されており、肝炎ウイルス検査の情報提供サイトとして有効に機能していると考えられる。
保健所等における肝炎ウイルス検査相談マニュアルに関する研究において、昨年度作成した「保健所等における肝炎ウイルス検査相談マニュアル」の保健所等職員による評価、改訂点などにつきアンケート調査で検討した。利用法としては、知識の整理、検査や結果説明時の対処法の確認、事業の確認などが、また新人教育や申し送りなど事業の均てん化に有用であるとの意見も多かった。本マニュアルは保健所職員を介した知識の普及・啓蒙活動を円滑にし、その間接的効果による受検者数の増加が期待される。
保健所等における肝炎ウイルス検査に疫学情報を活用するための研究において、川崎市で実施した肝炎ウイルス検査に関するインターネットアンケート調査では、肝炎検査以外の目的(がん検診等)で行った医療機関で肝炎ウイルス検査を受けていた人や、検査に関する情報を得やすい手段として、市からの検診の通知、広報誌、HPなどを挙げる人が多かった。市内の委託医療機関で実施した分析結果では、HBV感染のリスク要因としてHBV感染者又はその可能性のある方との性交渉、輸血を行うような手術、HCV感染のリスク要因として輸血を行うような手術、1992年以前の輸血、妊娠・分娩時の大量出血、長期の血液透析、ボディピアスや入れ墨が考えられた。
感染症発生動向調査から見たB型肝炎の発生状況は2014年の年間報告数は178例(罹患率1.4/人口10万)であった。性別は男性が77%と大半を占め40歳代が最も罹患率が高く、女性では20歳代が最も高かった。感染経路はほとんどが性的接触による感染であった。対策の立案、評価のための発生状況の正確な把握のためには、地方自治体担当者や臨床医へ情報の還元と届出に関する周知を図ることと、本サーベイランスの捕捉率の定期的な把握が必要である。
病院における肝炎ウイルス検査と検査結果の説明に関する実態調査において、厚生労働省の「手術前等に行われる肝炎ウイルス検査の結果の説明について」の通知後、結果説明に関する取り組みを行っている施設が38.7%から43.2%に微増した。新たに取り組みを始めた施設の81.1%から改善されたとの回答があった。今後、病院での肝炎ウイルス検査の結果が陽性・陰性にかかわらずすべての受検者に適切に伝わるよう取り組みを強化することが重要である。
自治体における肝炎ウイルス検査の広報に関する研究として、全国の自治体で実施されている肝炎ウイルス検査情報を提供するためにウェブサイト「肝炎ウイルス検査マップ」(http://kensa.kan-en.net)を作成、2014年の総訪問数は453,971件にのぼった。肝炎に関するニュース等がマスメディアで取り上げられると訪問数が急激に増加することが分かった。キーワード検索でも上位に表示されており、肝炎ウイルス検査の情報提供サイトとして有効に機能していると考えられる。
保健所等における肝炎ウイルス検査相談マニュアルに関する研究において、昨年度作成した「保健所等における肝炎ウイルス検査相談マニュアル」の保健所等職員による評価、改訂点などにつきアンケート調査で検討した。利用法としては、知識の整理、検査や結果説明時の対処法の確認、事業の確認などが、また新人教育や申し送りなど事業の均てん化に有用であるとの意見も多かった。本マニュアルは保健所職員を介した知識の普及・啓蒙活動を円滑にし、その間接的効果による受検者数の増加が期待される。
保健所等における肝炎ウイルス検査に疫学情報を活用するための研究において、川崎市で実施した肝炎ウイルス検査に関するインターネットアンケート調査では、肝炎検査以外の目的(がん検診等)で行った医療機関で肝炎ウイルス検査を受けていた人や、検査に関する情報を得やすい手段として、市からの検診の通知、広報誌、HPなどを挙げる人が多かった。市内の委託医療機関で実施した分析結果では、HBV感染のリスク要因としてHBV感染者又はその可能性のある方との性交渉、輸血を行うような手術、HCV感染のリスク要因として輸血を行うような手術、1992年以前の輸血、妊娠・分娩時の大量出血、長期の血液透析、ボディピアスや入れ墨が考えられた。
感染症発生動向調査から見たB型肝炎の発生状況は2014年の年間報告数は178例(罹患率1.4/人口10万)であった。性別は男性が77%と大半を占め40歳代が最も罹患率が高く、女性では20歳代が最も高かった。感染経路はほとんどが性的接触による感染であった。対策の立案、評価のための発生状況の正確な把握のためには、地方自治体担当者や臨床医へ情報の還元と届出に関する周知を図ることと、本サーベイランスの捕捉率の定期的な把握が必要である。
結論
本研究はわが国の肝炎ウイルス検査の充実を図るために多角的なアプローチを行うことができた。今後、ここで得られた成果を活用し、肝炎ウイルス感染の終息に向けた取り組みが成功することを期待する。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
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