文献情報
文献番号
201422002A
報告書区分
総括
研究課題名
職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究
課題番号
H26-肝政-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 哲(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 坂本 穣(山梨大学医学部附属病院肝疾患センター)
- 柿崎 暁(群馬大学医学部附属病院肝疾患相談センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
18,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまでの調査結果では、肝炎患者労働者を対象とした調査で、3割は治療期間中に特に配慮を受けていなかったと答えていた。事業者に対する調査では61.5%で特別な配慮を要することはなかったと答えている。しかし、中小企業では治療のために離職する事例もあるため、平成26年度は、働きながら治療を受けられる体制作りを中心に検討を行った。肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業では、社会労務士による相談に加えて、労働局や自治体と連携している施設が増えており、このような連携により持続的支援が期待される。
研究方法
平成25年から「肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業」が開始されている。これまでの研究班の成果をモデル事業に反映して頂くため、平成25年、26年にモデル事業に参加している肝疾患相談センターとの間で連絡会を開催、相談員が就労支援を実施する上での課題について討議を行った。山梨県、群馬県ではこれまで多くの肝疾患コーディネーターを養成している。肝疾患コーディネーターを対象として現在の活動状況と就労支援の相談事例の有無と事例について調査を実施した。地域における中小企業で肝炎対策を目的に、肝疾患相談センター、産業保健総合支援センター、労働基準協会、保健所、商工会議所等の複数の関連機関を包括したモデル構築実現のため、2次医療圏(神奈川県湘南西部)を対象として、地域・職域連携推進事業の枠組みの中で肝炎対策と肝炎患者労働者に対する治療と就労の両立支援を目的に関連機関の連携に向けた調整と経営者への啓発を行う。
結果と考察
(1)「肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業」との就労支援の在り方の共有
肝疾患連携拠点病院を中心とした11施設との肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業では、社会労務士による相談に加えて、労働局や自治体と連携している施設が増えており、このような連携により持続的支援が期待される。主治医等が積極的に就労支援の機会を紹介することで、相談件数の増加が認められていることから医師による呼びかけも重要と考えられた。
(2)肝疾患コーディネーターの就労支援を含む活動状況に関する調査
これまで多くの肝疾患コーディネーターを養成している山梨大学、群馬大学の肝疾患コーディネーターを対象とした調査では、現在は活動の機会がないケースもあった。これまで就労支援の相談事例は少ないものの認められた。問題が複雑なため対応出来ないケースもあり、社会労務士のような専門職による相談も解決のために有効と考えられた。相談事例から、休日や平日夕方に対応可能な施設と積極的な病診連携を行うことで治療を継続できた事例があり、専門医、肝疾患相談センターが積極的に支援することが有効と考えられた。
(3)肝炎患者の就労に関して社会保険労務士の役割に関する検討
2名の社会労務士と当付属病院の総合相談室と合同で就労支援について議論した。慢性疾患のために離職してしまうと再就職するのが困難となるため、出来るだけ社内の制度を利用して雇用を継続することが重要であること。個人事業者に対する障害年金制度、法人化した場合の利点について紹介があった。
(4)地域の中小企業を対象とした肝炎対策と治療と就労の両立に関する啓発
神奈川労務安全衛生協会平塚支部との連携により、2次医療圏の約80事業所の経営者を対象に、職場における肝炎対策、肝疾患における就労支援の必要性について健康経営の観点から講演し、経営者に肝炎対策と就労支援について理解を求めた。さらに、保健福祉事務所と共同で産業保健スタッフを対象とした「治療と就労の両立支援-地域・職域の連携を目指して-」を開催した。
(5)慢性肝疾患の労働者へ行う就労配慮に関する事例登録システムの開発
慢性肝疾患の労働者への就業配慮に関する事例登録のため、産業医が労働者へ行う就業配慮の効果を検証することを目的とし、事例登録システムの開発を行った。平成27年度から事例収集を始める。
肝疾患連携拠点病院を中心とした11施設との肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業では、社会労務士による相談に加えて、労働局や自治体と連携している施設が増えており、このような連携により持続的支援が期待される。主治医等が積極的に就労支援の機会を紹介することで、相談件数の増加が認められていることから医師による呼びかけも重要と考えられた。
(2)肝疾患コーディネーターの就労支援を含む活動状況に関する調査
これまで多くの肝疾患コーディネーターを養成している山梨大学、群馬大学の肝疾患コーディネーターを対象とした調査では、現在は活動の機会がないケースもあった。これまで就労支援の相談事例は少ないものの認められた。問題が複雑なため対応出来ないケースもあり、社会労務士のような専門職による相談も解決のために有効と考えられた。相談事例から、休日や平日夕方に対応可能な施設と積極的な病診連携を行うことで治療を継続できた事例があり、専門医、肝疾患相談センターが積極的に支援することが有効と考えられた。
(3)肝炎患者の就労に関して社会保険労務士の役割に関する検討
2名の社会労務士と当付属病院の総合相談室と合同で就労支援について議論した。慢性疾患のために離職してしまうと再就職するのが困難となるため、出来るだけ社内の制度を利用して雇用を継続することが重要であること。個人事業者に対する障害年金制度、法人化した場合の利点について紹介があった。
(4)地域の中小企業を対象とした肝炎対策と治療と就労の両立に関する啓発
神奈川労務安全衛生協会平塚支部との連携により、2次医療圏の約80事業所の経営者を対象に、職場における肝炎対策、肝疾患における就労支援の必要性について健康経営の観点から講演し、経営者に肝炎対策と就労支援について理解を求めた。さらに、保健福祉事務所と共同で産業保健スタッフを対象とした「治療と就労の両立支援-地域・職域の連携を目指して-」を開催した。
(5)慢性肝疾患の労働者へ行う就労配慮に関する事例登録システムの開発
慢性肝疾患の労働者への就業配慮に関する事例登録のため、産業医が労働者へ行う就業配慮の効果を検証することを目的とし、事例登録システムの開発を行った。平成27年度から事例収集を始める。
結論
肝疾患コーディネーターがこれまで受けた相談事例の中で、就労に関するものは少ないながら認められた。相談内容により社会労務士のような専門職の相談を要するものも認められた。中小企業の事業者への講演から、健康経営の観点で治療と就労の両立支援は受け入れ易いようだが、保健所及び各自治体が委託する医療機関での無料検査について十分情報が伝わっておらず、市町村実施のがん検診と合わせて肝炎検診についても紹介する必要がある。今後、職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮について、詳細な事例を集積することで治療経過の中でどのような具体的支援が有効であったか明らかにする。地域を包括した就労支援の在り方として、肝炎対策や就労支援を進める導入段階として、地域・職域連携推進事業の枠組みに取り入れてもらうことは有効と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
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