非AIDS関連悪性腫瘍増加時代における消化管腫瘍の研究-内視鏡を用いた早期発見プログラム確立-

文献情報

文献番号
201421034A
報告書区分
総括
研究課題名
非AIDS関連悪性腫瘍増加時代における消化管腫瘍の研究-内視鏡を用いた早期発見プログラム確立-
課題番号
H26-エイズ-若手-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
永田 尚義(独立行政法人国立国際医療研究センター 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,565,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)HIV感染者、非感染者における消化管Non-AIDS defining malignancy (NADM)および前癌病変の頻度の違いを明らかにすること。
2)NADMのリスク因子(発ガン物質である喫煙・アルコールの曝露、免疫、高齢など)を同定すること
3)消化管粘膜組織における発癌性病原体(EBV、HPV、ピロリ菌)を調べ、前癌病変への関与を明らかにすること。
研究方法
研究1)HIV感染者における消化管NADMの頻度を明らかにする研究(多施設共同研究を予定)エイズ治療拠点病院の協力をあおぎ、HIV感染者における食道癌、胃癌、大腸癌、肛門管癌のデータを集計する。HIV患者における消化管NADMの罹患率を明らかにするものである。
研究2)HIV感染者、非感染者における前癌病変の頻度の違いを検討する研究(単施設)
内視鏡生検組織から、詳細に前癌病変の病理学的評価を行い、NADMの前癌病変(胃、大腸、肛門管)の頻度を明らかにする。さらに、HIV感染症の有無による違いを検討する。
研究3)NADMのリスク因子を同定する研究
臨床因子とくに発癌物質(喫煙、アルコール)、免疫状態を詳細に評価し、前癌病変と発生との関連をcase-control研究から明らかにし、NADMハイリスク患者を同定する。
研究4)消化管粘膜における発癌性ウイルスと前癌病変への関与を明らかにする研究(1-3年度)
直腸-肛門前癌病変におけるoncogenic-HPVの関与、また、胃腸上皮化生発生とEBV感染の関与を明らかにする。HPV感染、EBV感染をPCR法にて調べる。また、日本人に多いヘリコバクターピロリ菌の胃粘膜感染状況をしらべ、HIV患者、非HIV患者との比較を行う。
結果と考察
研究1)消化管NADMの頻度(多施設共同研究)
AIDS拠点病院へ共同研究を依頼。各施設での臨床情報収集が困難な事がわかり、研究期間を2年から3年に延長する。
研究2)HIV感染者、非感染者の前癌病変の頻度
HIV感染者と非HIV感染者の大腸癌の前癌病変(大腸腺腫)の頻度を調べたところ、HIV感染者では16%(29/177)、非HIV感染者では22.6%(44/177)で有意な違いを認めなかった(adjusted odds ratio, 0.66, p=0.16)。過去約4年でHIV感染者と非HIV感染者の肛門管癌の前癌病変の頻度は、HIV感染者では13%(32/244)、非HIV感染者は0.04%(1/2433)とHIV感染者で極めて高率(p<0.01)であると分かった。多変量解析では、HIV感染は肛門管前癌病変のリスク因子と分かった(adjusted OR, 177, p<0.001)。胃腸上皮化生に関しては、病理読影を追加し検討を行う予定である。
研究3)NADMのリスク因子同定
HIV感染者177人における大腸腺腫の関連では、年齢 (adjusted OR, 2.3, P<0.01)がリスク因子であったが、MSM、CD4 値、HIV-RNA値、過去の抗HIV治療歴、喫煙、アルコールは大腸腺腫発症と関連を認めなかった。一方、HIV感染者244人における肛門管前がん病変のリスクは、喫煙(OR, 3.8)、CD4低値(per 100/μl decrement, OR, 1.3)であるとわかった。
研究4)発癌性ウイルスと前癌病変との関与
大腸腺腫とoncogenic HPV感染との関連リスクを調べたところ、関連は認めなかった(adjusted OR, 0.25, p<0.01)。一方、肛門前癌病変との関連では、oncogenic HPV感染との関連を認めた(adjusted OR, 5.4、p=0.008)また、oncogenic HPVの中でもHPV type 16 or 18が最も関連が強い(OR, 4.9, p<<0.001)ことが分かった。胃腸上皮化生とEBV感染との関連、ヘリコバクターピロリ菌とHIV感染症との関連は次年度以降検討していく。
結論
日本でもHIV感染者は肛門管癌のリスクであることが示唆された。一方、大腸腺腫は非HIV患者と比べて有病率に差がなく、リスクとはならなかったが、HIV感染者も年齢とともにリスクが上昇することから、大腸癌スクリーニングは一般集団と同様な体制が必要であることが示唆された。症例数の蓄積によりハイリスク患者を同定できる可能性があり次年度以降の課題である。また、胃癌リスクにおけるHIV感染症の関与は、次年度以降さらなる解析が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-01-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201421034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,334,000円
(2)補助金確定額
3,334,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 873,248円
人件費・謝金 437,715円
旅費 0円
その他 1,254,037円
間接経費 769,000円
合計 3,334,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-