エイズ関連悪性腫瘍誘発機序の理解と抗体療法の有効性評価

文献情報

文献番号
201421023A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ関連悪性腫瘍誘発機序の理解と抗体療法の有効性評価
課題番号
H25-エイズ-一般-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所、難治性疾患研究)
研究分担者(所属機関)
  • 志村まり(国立国際医療研究センター 難治性疾患研究部)
  • 田中紀子(国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
  • 徳永研三(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 山下克美(金沢大学医薬保健研究学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
28,837,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Antiretroviral therapy (ART療法)が導入され、HIV-1(以下HIV)感染者の予後は著しく改善されたが、悪性腫瘍の発症率は依然高く、現在も死亡原因の約30%を占めている。悪性腫瘍の多くはB細胞性悪性リンパ腫であるが、その要因は不明である。申請者らは、DNAメチル化アレイ解析を行い、その後の階層的クラスター解析から、HIV関連リンパ腫と非感染リンパ腫ではDNAメチル化パターンが異なることから、HIV関連リンパ腫と非HIVリンパ腫が異なる分子機序で発症している可能性が考えられた。
 本課題では、HIV関連悪性リンパ腫の発症に関与する因子や、がん化を早期に把握できる解析システムを構築するとともに、患者血中に存在するゲノム不安定性誘導因子に対するヒト化単クローン抗体を用いて、血中濃度の変動の有無を把握する。
研究方法
a. ヒト健常人の末梢血より未分化B細胞(CD43陰性細胞=ナイーブ B 細胞)とそれ以外の単核球細胞(主にT細胞)を分離し、フィルターを介した二層培養を行なった。HIV-1をT細胞に感染させ、共培養を4日間行ない、回収した細胞のゲノムDNAをBisulfite処理後、whole genome amplification法により増幅し、Infinium HumanMethylation450 BeadChip(Illumina, San Diego, California, USA)を用いて、全ゲノムを対象としたDNAメチル化解析を行った。メチル化プロファイルを75%メチル化グループ, 25-75%メチル化グループ, 25%以下メチル化グループの3グループに分類し、対象群との比較解析を行った。
b.臨床検体の解析:健常人ならびにHIV感染者の末梢血より、ナイーブB 細胞とそれ以外の細胞を分離し、それぞれの細胞からゲノムDNAを抽出し、メチル化解析を行った。ヒト健常人3名の検体で得られたDNAメチル化様式の平均値とHIV感染者個々の様式を比較し、20%以上メチル化変化を示したターゲットを抽出した。
c.ヒト化抗体の作成: 96個のアミノ酸からなるVprの全長ペプチドをニワトリに免疫後、脾臓からTotal RNAを調製し、発現ファージデイスプレイライブラリ-を作成した。スクリーニングは、Vprの組み換え蛋白質を用いて行った。
結果と考察
a.ウイルス感染に伴うメチル化変化:共培養したナイーブB細胞も、T細胞と同様に、DNAメチル化様式に変動を認めた。ナイーブ B細胞にウイルスを添加した場合でも、DNAメチル化様式に変動が誘導されたが、ターゲット遺伝子の共通性は高いメチル化傾向を示すプローブでは40%、低メチル化傾向を示すプローブでは20%であった。即ち、T細胞のウイルス感染によって生じる2次因子(サイトカイン、ウイルス蛋白質など)が、ナイーブB細胞に対してメチル化様式を変化させている可能性が考えられた。

b. HIV感染者由来検体でのメチル化様式とゲノム不安定性:健常人3例(n=9)から得られた高、及び、低メチル化のターゲット数を基準として、HIV-1感染者2例(それぞれn=3)で検出された変動を調べた。興味深いことに、HIV感染単核球細胞だけでなく、ナイーブB細胞でも、低メチル化傾向を認めた。さらに、HIV感染者由来検体でのゲノム安定性試験(CGH)を行い、ゲノム領域のコピー数について調べた。感染者2例のうち、DNAメチル化変動の高い症例では特にゲノムコピー数変動の可能性が示唆された。
結論
本解析で、感染T細胞と共培養することによってナイーブB細胞で、低メチル化が誘導されることが分かった。近年、低メチル化とゲノム不安定性との関連性が報告されている。即ち、感染T細胞に派生する何らかの因子が、B細胞の低メチル化を惹起し、これがゲノム不安定性を誘導している可能性が考えられる。
 今後、臨床感染検体を用いた解析を継続し、感染に伴うメチル化変化とゲノム不安定性との関連を明らかする。また、患者活性中に存在するウイルス蛋白質の生物学的活性を評価することは重要と考え、今年度得られた抗Vpr単クローン抗体を用いた血中Vprのモニターシステムの確立を試みる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201421023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
37,487,000円
(2)補助金確定額
37,487,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,964,858円
人件費・謝金 7,248,841円
旅費 468,160円
その他 11,157,679円
間接経費 8,650,000円
合計 37,489,538円

備考

備考
自己資金として2,538円を使用しました。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-