多剤耐性HIV変異株に強力で高い中枢神経系透過性を有する新規抗HIV薬の開発

文献情報

文献番号
201421021A
報告書区分
総括
研究課題名
多剤耐性HIV変異株に強力で高い中枢神経系透過性を有する新規抗HIV薬の開発
課題番号
H25-エイズ-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
満屋 裕明((独)国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 慎一((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 宮川 寿一(国立大学法人熊本大学血液内科・膠原病内科・感染免疫診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
57,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
満屋らのグループは1998年開始した米国パデュー大学・Arun Ghosh教授らとの共同研究で、野生HIV-1株及び種々の多剤耐性HIV変異株に対して強力な抗HIV-1活性を発揮し、かつ新しい薬剤耐性の発現に抵抗する新規のHIV-1プロテアーゼ (PR) 阻害剤、darunavir (DRV) の開発に成功 (Koh, Ghosh & Mitsuya. Antimicrob Agents Chemother 47:3123-3129, 2003; Ghosh & Mitsuya et al. US Patent No. 7470506, 2008)、DRVは2006年に米国食品医薬品局 (FDA) に認可され、現在では日本を含む世界各国でファーストラインの治療薬として汎用されている。しかし、DRVに対する耐性HIV-1変異株の出現とその機序が報告され、(Hayashi & Mitsuya. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 111:12234-12239, 2014)、また、HIV-1感染者・AIDS発症者でのHIV-1感染に起因する中枢神経系 (CNS) 障害が問題となっており、CNS透過性を有する更に強力な治療薬の開発が求められている。本研究は、 (1) HIVの薬剤耐性獲得に高い抵抗性を示し良好なCNS透過性を有する治療薬の開発、(2) HIV関連CNS障害の診断法の確立を目途とし、開発した化合物の国内での申請者らによるfirst-in-human clinical trialsを推進し、また企業への早期導出を図る事とする。
研究方法
野生HIV-1株及び30数種の多剤耐性HIV-1変異株全てに対して既存のPR阻害剤では見られなかった程の強力な抗HIV-1活性を発揮する新規化合物KU-241デザイン・合成・同定した。 In vitroの抗HIV-1活性及び細胞毒性は、MTTアッセイやp24アッセイを用いて測定、結晶構造解析や熱力学的解析を行いKU-241のPRに対する挙動を分子・原子レベルで解析した。結晶化は、hanging drop vapor diffusion法を用いて行い、熱力学的アッセイはdifferential scanning fluorimetryを用いて行った。多施設で共同臨床試験を実施する為、診断に用いる全国共通の臨床心理コアバッテリを決定、各施設に勤務する臨床心理士が決定したコアバッテリを用いて一定の診断結果を出せるようにする為の研修会を東京と福岡で開催した。
結果と考察
KU-241が野生株及び30数種の多剤耐性HIV-1変異株全てに対して既存のPR阻害剤では見られなかった程の強力な抗HIV-1活性を発揮することを明らかにした。また、マウス内での血中半減期がDRVより長い事を確認した。KU-241はPRと多数の水素結合を形成するだけでなく、フルオロ基導入により複雑で多岐にわたる van der Waals 結合形成を実現している事が明らかとなり、DRVを遥かに凌駕する親和性でPRに結合している事が確認された。KU-241のselectivity index (SI:大きければ毒性が低いと期待される) は1,000,000を超え、高い安全性が期待される。KU-241のfirst-in-human 臨床試験は、国内実施を前提としており既に国際特許出願が完了している (USPTO application 61994462)。HIV関連CNS障害の評価・診断法の確立と使用方法の均一化を行った。共通の診断基準の決定と使用法の標準・均一化を図る事で、施設ごとのHIV関連CNS障害の罹患率などを共通基準での評価が可能となり、多施設共同臨床試験によるCNS透過性を有する抗HIV剤の評価が可能になると期待される。
結論
2003年のDRVの報告以来、より強力な抗HIV-1 活性を有し、耐性発現を許さないか著しく遅延させ、かつCNS透過性が期待される新規のPIの研究・開発・最適化を継続、500数種の化合物を新規にデザイン・合成、臨床応用最有力化合物として2個のフッ素原子を含む化合物KU-241の同定に成功、国際特許の出願を行った (USPTO application 61994462)。結晶構造解析等の結果から、KU-241とPRの相互作用様式を解明した。
神経心理検査の選定を行った後、神経心理検査を精力的に行っている全国18施設の心理士による検討会及び、琉球大学の富永教授の監修を経て、今後日本で行うHAND診断のための神経心理コアバッテリを決定、コアバッテリを用いる臨床心理士の習熟度の標準・均一化を図り、多施設共同の臨床試験へ向けた体制整備を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201421021Z