T細胞誘導を主とする予防エイズワクチン開発に関する研究

文献情報

文献番号
201421020A
報告書区分
総括
研究課題名
T細胞誘導を主とする予防エイズワクチン開発に関する研究
課題番号
H25-エイズ-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 彰方(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 立川 愛(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 村越 勇人(熊本大学 エイズ学研究センター)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 寺原 和孝(国立感染症研究所 免疫部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
44,082,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 立川 愛 東京大学(H26.4.1~H27.1.31)→国立感染症研究所(H27.2.1~H27.3.31)

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的
世界のHIV感染者数は3千万人を超え、毎年2百万人以上の新たな感染が発生している。本邦では平成25年の年間新規報告件数が過去最高であった。アフリカを中心とする世界のHIV感染拡大を抑制することは国際的最重要課題の一つであり、本邦の感染拡大抑制のためにも必要である。そのためには、感染者の早期診断・治療の推進に加え、切り札となるワクチンの開発が切望されている。我々はこれまで、優れた細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能を有するセンダイウイルス(SeV)ベクターを用いた予防エイズワクチン開発研究を推進し、ワクチンによるGag抗原特異的CTL誘導が持続感染阻止に結びつく可能性をエイズモデルで明らかにしてきた。平成25年には、このT細胞誘導ワクチンの国際共同臨床試験第1相が国際エイズワクチン推進構想(IAVI)主動でルアンダ、ケニア、英国にて開始され、次の有効性評価のステップ(第1ー2相)への進展には、発現する抗原の最適化が求められている。そこで本研究では、このT細胞誘導ワクチンの実用化に向け、HIV持続感染阻止に結びつくよう最適化した抗原発現系設計を目指すこととした。これまでの我々の研究で、GagおよびVifが有効なCTLの標的抗原候補であることが示されたことから、Gag・Vif蛋白質内の標的領域断片を繋いだ最適化抗原を設計する計画として、CTLエピトープ情報を基に設計した最適化抗原発現ワクチンのエイズモデルにおける有効性の検証を進めるとともに、世界各地域で主要HLA遺伝子型および流行HIV株が異なることをふまえ、HLA遺伝子型とCTLエピトープ情報の収集に基づくHIV最適化抗原設計を推進することとした。
研究方法
研究方法
SIV Gag・Vif断片連結抗原を構築し、その免疫原性の確認のため、マウスに断片連結抗原発現DNAを2回筋注後、断片連結抗原発現AdVベクターを1回筋注し、抗原特異的CTL反応誘導の有無を調べた。また、HIV防御免疫として腸管粘膜免疫反応が重要視されていることをふまえ、SeVベクター経鼻接種後の腸管由来リンパ球における抗原特異的T細胞反応を解析した。一方、世界各地域で比較的高頻度にみられるユニバーサルHLAアレル関連HIVゲノム変異の同定を進めるとともに、ガーナHIV感染者のHLA遺伝子型同定およびHIVゲノム塩基配列解析を継続した。また、HIV感受性に影響をおよぼすHLA関連遺伝子多型の検索を行った。
結果と考察
結果と考察
Gag・Vif断片連結抗原については、断片連結により発現・分解パターンが変化し抗原提示効率が低下する可能性が考えられたが、マウス実験で抗原特異的CTL誘導がみられたことから免疫原性は確認できた。また、経鼻SeVベクターワクチンの腸管粘膜T細胞反応誘導能を確認した。この結果は、HIVワクチンで重視されている腸管粘膜免疫誘導のためのデリバリーシステムとしてSeVベクターが有用であることを示すものである。ユニーサルHLAのA*02:01、A*33:03、B*07:02、B*35:01、B*44:03、C*03:04、C*04:01について、HIV関連変異と考えられる変異をgag・pol・nef領域に多数見出した。ガーナHIV感染者の解析では、ウイルスゲノム塩基配列およびHLA遺伝子型の情報を蓄積した。また、IkBL多型とHIV感染感受性との関連が見出された。断片連結抗原発現SeVベクターワクチンについて、平成27年度にエイズモデルでSIV持続感染成立阻止効果を検証する計画である。有効性が示され、設計合理性を確認することができれば、この設計理論を基にしたT細胞誘導HIVワクチン抗原設計に直結することが期待される。その際、本研究で得られたガーナ等の主要HLA遺伝子型と流行HIV株のゲノム塩基配列・CTLエピトープの情報は、臨床試験対象地域のワクチン最適化抗原設計の基盤として重要である。また、HIV感受性に影響をおよぼすHLA関連遺伝子多型に関する情報は、臨床試験の際の有効性評価において有用である。
結論
結論
SeVベクターを用いたT細胞誘導HIVワクチン臨床試験の次のステップへの進展に向け、最適化抗原設計を目指した研究を展開した。SIV Gag・Vif断片連結抗原を設計し、マウスでの断片連結抗原発現ベクター接種実験により免疫原性を確認後、断片連結抗原発現SeVベクター構築を開始した。平成27年度には、この断片連結抗原発現SeVベクターワクチンの有効性をエイズモデルで評価し、抗原設計の合理性を検証する計画である。また、経鼻SeVベクターワクチンの腸管粘膜T細胞反応誘導能を確認した。一方、臨床試験対象地域の最適化抗原設計のための基盤情報として、主要HLA遺伝子型と流行HIV株のゲノム塩基配列等の情報収集を継続した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201421020Z