外国人におけるエイズ予防指針の実効性を高めるための方策に関する研究

文献情報

文献番号
201421018A
報告書区分
総括
研究課題名
外国人におけるエイズ予防指針の実効性を高めるための方策に関する研究
課題番号
H25-エイズ-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
仲尾 唯治(山梨学院大学 経営情報学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沢田 貴志(神奈川県勤労者医療生活協同組合港町診療所 内科)
  • 樽井 正義(慶應義塾大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,256,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国に在住する外国人のHIVに関する実態把握に基づき、全国の自治体ならびにエイズ診療拠点病院が改正エイズ予防指針に沿った施策の推進を実現できるための方策についての検討を行う。
研究方法
 ①外国人対応先進自治体への訪問聴き取り調査、②豊富な外国人対応経験をもつ医療機関へのHIV陽性外国人に関する後ろ向き質問紙郵送調査、③電話相談を通した外国人の受療阻害要因調査、④外国人コミュニティへの聴き取り調査、⑤国際会議参加ならびに帰国者追跡調査等を通した国際社会情報調査。
結果と考察
 上記研究方法のうち、初年度より中心課題と位置づけてきた①および②の2つの調査(第二次調査)について取り上げる。

 ①外国人対応先進自治体への訪問聴き取り調査:自治体第二次調査は現在継続中であるが、これまでの結果から、自治体を支援していくために必要な現実的な方向性が見えてきている。具体的には、全国の自治体において利用可能なつぎのシステムの開発と提供である。a.外国人住民への普及啓発に向けた資材 b.外国人住民への受検勧奨に向けた資材 c.保健所等受検・相談施設における日本語が不自由な外国人への受検支援資材、ならびに通訳対応 d.当該地域における外国人関連の窓口や資源についての情報収集 e.地域のネットワーク構築に役立つ他部門を巻き込んだ研修会等の開催、など。
 ②豊富な外国人対応経験をもつ医療機関へのHIV陽性外国人に関する後ろ向き質問紙郵送調査:a. HIV陽性により日本の拠点病院を受診した外国人の人口構造が2007年以前と比べ大きく変化している。東アジア出身者の割合が著しく増加し、若年のMSMと推測される層が多数を占めるようになってきている。この東アジア出身者のうち86.7%と大半が日本語の理解が良好とされており、保健所等受検・相談施設の利用者の割合が38.9%と他の地域の出身者と比べて群を抜いて高かった。これらは、日本語のMSMへの啓発を通じて早期受検が実現しているためと予測され、東アジア出身者には日本人MSM対策と連携した介入の強化が効果的と考えられる。b.出身国別に初診時CD4値を比較すると、英語での理解が得やすいフィリピン人や、近年通訳体制の整備が進んだタイ人と比べて、通訳が得がたいミャンマー人、南アジア出身者および、その他の東南アジア出身者の初診時CD4が低値となっており、言葉の壁が大きな障害となっていることが示唆された。同様の傾向は中南米出身者にも見られ、CD4が低値になってからの受診が多い東南アジア・南アジア・スペイン語圏中南米出身者に対しては、多言語での体制の整備が重要である。c.アフリカ出身者については、2002 年に実施された調査に比べてCD4が高値のうちに受診する割合が高くなっているものの、受検・相談施設での受検が最も少ない点が課題である。受検・相談施設における英語対応の向上、またアフリカ出身者への受検・相談施設に関する情報の普及が求められる。d.日本語・英語とも不自由な患者であっても、タイ語・ポルトガル語などであれば、殆ど全ての対象者に通訳が利用されていた。一方、アジアの少数言語などではそれが実現されておらず、通訳を患者関係者に頼っている傾向が見られた。こうした通訳体制が整っていない言語を出身国語にもつ外国人と、初診時のCD4値が低いHIV陽性外国人とはほぼ一致しており、早期受診を促進するためには今後、多言語での通訳体制の確立が急務である。e.これまでの調査と比べて治療継続率が高い傾向が見られた。これは、健康保険加入率が高くなっているためと思われ、この結果医療費が未払いとなるケースも減少している。円滑な診療体制の維持には未払医療費の補填等の制度的な保障も重要である。
結論
 日本に滞在する HIV 陽性外国人の構造的な変化に伴い、これに基づく現実的な対応が求められている。本研究において、早期受診が遅れている層の条件がCD4値との関連で明らかになりつつあり、それを改善していく方向性が一定程度明らかになった。これら本研究に基づき、早期受診が阻害されている層に対する通訳システムおよび普及啓発に関わるプログラムと資材の開発が重要な課題となることが示唆された。同様に、全国の保健所等検査施設における外国人住民の早期受検に繋がるプログラムと資材の開発が、最終年度において本研究が取り組むべき重点課題となることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201421018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,617,000円
(2)補助金確定額
7,617,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 558,876円
人件費・謝金 4,584,611円
旅費 881,622円
その他 1,232,987円
間接経費 361,000円
合計 7,619,096円

備考

備考
補助金確定額と実際の合計支出額に差が生じたことに伴い、自己負担の発生があったため。

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-