細胞内脂質合成を標的とした抗高病原性ウイルス療法の分子基盤

文献情報

文献番号
201420060A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞内脂質合成を標的とした抗高病原性ウイルス療法の分子基盤
課題番号
H25-新興-若手-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
浦田 秀造(長崎大学 熱帯医学研究所新興感染症学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 早坂 大輔(長崎大学 熱帯医学研究所ウイルス学分野)
  • 黒崎 陽平(長崎大学 熱帯医学研究所新興感染症学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は細胞内脂質合成を司る細胞内酵素S1P/SKI-1が、対象とするヒト高病原性ウイルス (ルジョウイルス、デングウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス)の抗ウイルス薬の標的となり得るか検討するころを目的とした。
研究方法
 ルジョウイルスにおいては感染性ウイルスを用いることができないため、ウイルスタンパク質発現プラスミドの培養細胞での過剰発現系を用いて解析を行った。デングウイルスは感染性ウイルスを用いて解析した。また、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスも感染性ウイルスを用いることができないため、ウイルスタンパク質発現プラスミドもしくはモデルウイルスでBSL-2で使用可能であるハザラウイルスを用いて解析した。S1P阻害低分子化合物としてPF-429242を用いた。
結果と考察
1. ルジョウイルス:感染性ルジョウイルスはバイオセーフティ― レベル(BSL)-4でのみ使用可能で
ある。昨年度、ルジョウイルス粒子産生過程の解析のため、ルジョウイルスZ発現プラスミド及び表面糖タンパク質 (GPC)発現プラスミドを構築し、細胞内発現及び、ウイルス様粒子 (VLP)産生を確認した。この発現プラスミドを用いてGPCの開裂はウイルス粒子が形成される細胞表面膜までの輸送には関与しないがウイルス様粒子への取り込みに重要であることを明らかとした。
2.デングウイルス:S1P/SKI-1阻害剤、PF-429242、がデングウイルス全血清型 (I-IV)のウイルス
複製を抑制することを見出した。また、デングウイルス2型において複数種の細胞株でもPF-429242が
ウイルス複製を抑制することを見出した。このPF-429242によるデングウイルス2型のウイルス複製
抑制はコレステロールや脂肪酸の補充では回復しないことも明らかとした。
3.クリミア・コンゴ出血熱ウイルス:クリミア・コンゴ出血熱ウイルスのモデルウイルスでBSL-2に
て使用可能なハザラウイルスを用いてSW13細胞における感染・複製がPF-429242処理により顕著に抑制されることを見出した。また、表面糖タンパク質発現プラスミド・S1P酵素活性欠損細胞株 (SRD12B)・PF-429242を用いてS1Pが表面糖タンパク質の開裂に重要であることも示した。
結論
 ルジョウイルス、デングウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスすべての異なるウイルス科においてS1Pが抗ウイルス標的として有効である可能性が示された。そしてルジョウイルスにおいてはその分子機構も明らかとした。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201420060Z