抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンによるHTLV-1の革新的感染予防モデルの開発とその有効性の検討

文献情報

文献番号
201420057A
報告書区分
総括
研究課題名
抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンによるHTLV-1の革新的感染予防モデルの開発とその有効性の検討
課題番号
H24-新興-若手-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
水上 拓郎(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 佐竹 正博(日本赤十字社 中央血液研究所)
  • 田所 憲治(日本赤十字社 中央血液研究所)
  • 山口 一成(熊本大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病はヒトT細胞白血病ウイルス I 型 (HTLV-1) の感染によって引き起こされる末梢性T細胞の腫瘍性疾患である。現在、母子感染を予防する事がHTLV-1の感染防止及び蔓延防止の最も有効な手段であると考えられ、人工栄養あるいは短期母乳との併用による感染予防策が講じられている。しかし完全人工栄養法を選択しても約3%の母子感染が発生している事から、新たな感染予防方法の研究・開発が望まれてきた。
研究方法
日本赤十字血液センターでは高感度なCLEIA法を用い、HTLV-1抗体検査を実施している。HBVと同様にHTLV-1抗体陽性血漿由来のグロブリンを用いることでHTLV-1感染防止が可能であると示唆される。そこで本研究課題においては、日本赤十字社の協力を得て、抗HTLV-1ヒト免疫グロブリン (HTLV-IG)の開発を目的とし、in vitro でのHTLV-IG感染予防能について検討した。
結果と考察
まず、感染細胞としてMT-2, SLB-1を用い、マイトマイシンC処理後に非感染細胞であるJurkat細胞と共培養する事で、感染モデルを構築し標準化することに成功した。また本感染系に陽性血漿を添加した結果、有意に感染を阻止する事が可能である事が明らかとなった。そこで、日本赤十字社にあるHTLV-1陽性血漿を用いて、in vitroのスクリーニングを行った結果、Proviral load (PVL)が4以上の検体で有意に感染を阻害する事が明らかとなった。更に、SLB-1とJurkat細胞の共培養によるシンシチウム形成の阻害に関しても同様の結果が得られた。日本赤十字社にある陽性血漿30例について、PVL, Western blotting, ELISAを行い、その特性を明確にし、感染阻害・あるいはシンシチウム形成阻害効果に関するパラメーターとの相関を調べたが、PVLがもっとも高い相関を示した。
 そこで、ヒト化マウスにおけるHTLV-1感染抑制効果を調べる目的で、NOGマウス用いたヒト化マウスの作成を行い、マイトマイシンC処理したMT-2細胞を感染させる事で、HTLV-1感染モデルの作出に成功した。更に、高力価IGの精製に成功し、その有効性をヒト化マウスを用いて検討した。
 その結果、PVL4以上の陽性血漿から製造された抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンを投与したマウスは何れも観察期間内 に HTLV-1感染細胞の出現を認めず、HTLV-1感染を完全に阻止している事が明らかとなった。
結論
 以上の結果より、HTLV-IGはHTLV-1感染防御に有効である事が明らかとなった。今後は、PVL4以下の検体から製造されたHTLV-IGなどを用い、有効性を確認し、原料血漿基準案を策定するとともに、安全性についてより詳細に評価する必要があると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201420057B
報告書区分
総合
研究課題名
抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンによるHTLV-1の革新的感染予防モデルの開発とその有効性の検討
課題番号
H24-新興-若手-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
水上 拓郎(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功 (国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 大隈 和 (国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 佐竹 正博 (日本赤十字社 中央血液研究所)
  • 田所 憲治 (日本赤十字社 中央血液研究所)
  • 山口 一成 (熊本大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病はヒトT細胞白血病ウイルス I 型 (HTLV-1) の感染によって引き起こされる末梢性T細胞の腫瘍性疾患である。現在、母子感染を予防する事がHTLV-1の感染防止及び蔓延防止の最も有効な手段であると考えられ、人工栄養あるいは短期母乳との併用による感染予防策が講じられている。しかし完全人工栄養法を選択しても約3%の母子感染が発生している事から、新たな感染予防方法の研究・開発が望まれてきた。
研究方法
 日本赤十字血液センターでは高感度なCLEIA法を用い、HTLV-1抗体検査を実施している。HBVと同様にHTLV-1抗体陽性血漿由来のグロブリンを用いることでHTLV-1感染防止が可能であると示唆される。そこで本研究課題においては、日本赤十字社の協力を得て、抗HTLV-1ヒト免疫グロブリン (HTLV-IG)の開発を目的とし、in vitro でのHTLV-IG感染予防能について検討した。また、ヒト化マウスを用いたin vivoモデルを構築し、HTLV-IGの有効性と安全性を確認する事を目的とした。
結果と考察
 H24年度はまず、感染細胞としてMT-2, SLB-1を用い、マイトマイシンC処理後に非感染細胞であるJurkat細胞と共培養する事で、感染モデルを構築し標準化することに成功した。また本感染系に陽性血漿を添加した結果、有意に感染を阻止する事が可能である事が明らかとなった。平成25年度は、日本赤十字社にあるHTLV-1陽性血漿を用いて、in vitroのスクリーニングを行った結果、Proviral load (PVL)が4以上の検体で有意に感染を阻害する事が明らかとなった。更に、SLB-1とJurkat細胞の共培養によるシンシチウム形成の阻害に関しても同様の結果が得られた。日本赤十字社にある陽性血漿30例について、PVL, Western blotting, ELISAを行い、その特性を明確にし、感染阻害・あるいはシンシチウム形成阻害効果に関するパラメーターとの相関を調べたが、PVLがもっとも高い相関を示した。
 平成26年度は、ヒト化マウスにおける感染抑制効果を調べる目的で、NOGマウス用いたヒト化マウスの作成を行い、マイトマイシンC処理したMT-2細胞を感染させる事で、HTLV-1感染モデルを作出した。更に、高力価IGの精製に成功し、その有効性をヒト化マウスを用いて検討した。その結果、PVL4以上の陽性血漿から製造された抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンを投与したマウスは何れも観察期間内にHTLV-1感染細胞の出現を認めず、HTLV-1感染を完全に阻止している事が明らかとなった。
結論
 以上の結果より、HTLV-IGはHTLV-1感染防御に有効である事が明らかとなった。今後は、PVL4以下の検体から製造されたHTLV-IGなどを用い、有効性を確認し、原料血漿基準案を策定するとともに、安全性についてより詳細に評価する必要があると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201420057C

収支報告書

文献番号
201420057Z