侵襲性真菌症例から分離された原因真菌の分子疫学解析と疫学データべース化を用いた院内感染対策の研究

文献情報

文献番号
201420053A
報告書区分
総括
研究課題名
侵襲性真菌症例から分離された原因真菌の分子疫学解析と疫学データべース化を用いた院内感染対策の研究
課題番号
H24-新興-若手-015
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 公一(国立感染症研究所 真菌部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,295,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Candida属やAspergillus属による侵襲性真菌症に関する疫学研究は乏しく、治療ガイドラインは設けられているが予後は一般に不良である。Candida属は臨床検体から最も頻繁に分離される真菌であり、院内感染を引き起こすような高病原性株が存在することが報告されている。分離されたCandida属の疫学情報(遺伝学的系統解析結果や薬剤感受性試験結果)が充実すれば、高病原性株や薬剤耐性株の早期発見が可能になり、院内感染対策や治療方針の決定に大きく貢献できるものと期待される。 本研究では、侵襲性感染を引き起こしたCandida属を医療機関から提供していただくネットワークを構築し、継続的サーベイランスを行うこと、また、提供された菌株の遺伝子型解析を行い、侵襲性感染や薬剤耐性化を起こしやすい株の予測を可能にすることを目的とした。
研究方法
平成26年度は、平成25年度に引き続き、医療機関より分与いただいた酵母様真菌のリボソームDNAの部分塩基配列からCandida albicansを選抜し、Multi locus sequence typing (MLST)によってC. albicansの遺伝子型を決定し、菌が分離された臨床検体との相関を検討した。
結果と考察
平成25年度と同様に、特定の遺伝子型のCandida属が血液培養から分離される頻度が有意に高いことが示唆された。この結果から、皮膚や尿路に常在するCandida属の遺伝子型を調べ、その後の侵襲性感染のリスクを評価への応用の可能性が考えられた。
結論
ヒトの粘膜や消化管には複数種のCandida株が常在しているが、すべての株が侵襲性感染を引き起こすとはかぎらない。侵襲性感染を引き起こす種を迅速に鑑別できれば、重症感染のリスクを低減させることが可能であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201420053B
報告書区分
総合
研究課題名
侵襲性真菌症例から分離された原因真菌の分子疫学解析と疫学データべース化を用いた院内感染対策の研究
課題番号
H24-新興-若手-015
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 公一(国立感染症研究所 真菌部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Candida属やAspergillus属による侵襲性真菌症に関する疫学研究は乏しく、治療ガイドラインは設けられているが予後は一般に不良である。Candida属は臨床検体から最も頻繁に分離される真菌であり、院内感染を引き起こすような高病原性株が存在することが報告されている。分離されたCandida属の疫学情報(遺伝学的系統解析結果や薬剤感受性試験結果)が充実すれば、高病原性株や薬剤耐性株の早期発見が可能になり、院内感染対策や治療方針の決定に大きく貢献できるものと期待される。 本研究では、侵襲性感染を引き起こしたCandida属を医療機関から提供していただくネットワークを構築し、継続的サーベイランスを行うこと、また、提供された菌株の遺伝子型解析を行い、侵襲性感染や薬剤耐性化を起こしやすい株の予測を可能にすることを目的とした。
研究方法
平成24年度は医療機関からCandida株を分与していただくためのプロトコル作成と打ち合わせを行った。
平成25年度からは、医療機関より分与いただいた酵母様真菌のリボソームDNAの部分塩基配列からCandida albicansを選抜し、Multi locus sequence typing (MLST)によってC. albicansの遺伝子型を決定し、菌が分離された臨床検体との相関を検討した。
結果と考察
尿、呼吸器、血液・穿刺液から分離されたCandida albicansの遺伝子型にはそれぞれ特徴があった。侵襲性感染とは関連が低いと考えられる、尿と呼吸器では1グループの遺伝子型が多数を占めていた。一方、血液・穿刺液から分離された株は、尿、呼吸器ではきわめて分離頻度が低いものが多数を占めていた。本研究の結果から、特定の遺伝子型グループに属するCandida株が侵襲性感染を引きおこすリスクが他のグループの株よりも優位に高い可能性が示唆された。
結論
ヒトの粘膜や消化管には複数種のCandida株が常在しているが、すべての株が侵襲性感染を引き起こすとはかぎらない。侵襲性感染を引き起こす種を迅速に鑑別できれば、重症感染のリスクを低減させることが可能であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201420053C

成果

専門的・学術的観点からの成果
侵襲性のカンジダ症においては宿主の免疫状態が病態を規定する最大の因子である。しかし菌側の感染性については標準株を用いた病原因子の探索が精力的に行われる一方、菌株間の比較は十分にはなされていなかった。本研究では、特定の遺伝子型グループに属するCandida株が侵襲性感染を引き起こす可能性が高いことを示した。常在型と侵襲性型のCandida株の遺伝子情報を比較し、侵襲性感染にかかわる因子を同定することも可能になると期待される。
臨床的観点からの成果
侵襲性カンジダ症ではカテーテル感染が多く、衛生管理の徹底とカテーテル抜去以外に実質的な対策はなかった。ヒトの皮膚や腸管に常在するCandida株の侵襲性感染を引き起こすリスクを評価することが可能になれば、入院患者の常在菌を予め調べることで効率的な院内感染対策が可能になると考えられる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201420053Z