不活化ポリオワクチンの有効性・安全性の検証及び国内外で進められている新規腸管ウイルスワクチン開発に関する研究

文献情報

文献番号
201420035A
報告書区分
総括
研究課題名
不活化ポリオワクチンの有効性・安全性の検証及び国内外で進められている新規腸管ウイルスワクチン開発に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
清水 博之(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 小池 智((財)東京都医学総合研究所 ゲノム医科学研究分野 ウイルス感染プロジェクト)
  • 多屋馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 藤本嗣人(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 染谷雄一(国立感染症研究所 ウイルス第二部 )
  • 片山和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部 )
  • 長谷川和也((公財)高輝度光科学研究センター)
  • 染谷 友美(木村 友美)(独立行政法人理化学研究所ライフサイエ ンス技術基盤研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
200,673,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2012年9月から、海外ですでに広く使われているcIPV含有単独IPVが、2012年11月からは日本で新たに開発されたsIPV含有4種混合ワクチンが定期接種に導入された。さらに、複数メーカーによりsIPVおよびcIPV抗原を含む4種混合ワクチン導入・開発が進められた。sIPV含有ワクチンは世界で始めて定期接種に導入された新たなIPVとして、導入後も有効性、安全性、品質管理等に関する検討が必要とされている。また、IPV導入後の集団免疫とワクチン接種率の動向を継続的に把握する必要がある。アジア諸国では、EV71、下痢症ウイルスワクチン等、様々な腸管感染ウイルスワクチン開発が積極的に進められているが、日本では、基礎研究の進展にも関わらず、sIPV以外の新規腸管ウイルスワクチン開発は具体化していない。国内外における研究・技術協力により、アジア諸国で開発・実用化が進められている新規腸管ウイルスワクチン開発のための研究基盤を整備する。
研究方法
・IPV導入後の予防接種状況ならびに抗体保有状況の推移を調査し、ポリオウイルスに対する集団免疫状況を把握する。
・sIPV含有ポリオワクチンの国家検定もD抗原定量試験に置き換わる可能性があり、その方法を確立する。
・流行予測調査事業ポリオ環境水調査で得られたエンテロウイルスゲノム解析を行う。
・国内外における研究・技術協力により、新規腸管ウイルスワクチン開発のための研究基盤を整備する。EV71病原性研究、ワクチン・抗ウイルス薬の評価系として小動物モデルによるEV71毒力検定系やワクチン検定法を確立する。
・40種類以上の抗原性の異なる遺伝子型が存在するノロウイルスワクチンの主要成分となるVLPの作製をめざす。全ての遺伝子型を網羅するようVLPを作製し、それぞれを分別可能なVLP 特異的抗体の作製を開始する。
・ノロウイルスVLP構造をX線結晶構造解析法等により決定し、ワクチン開発のための抗原デザインに活用する。 
結果と考察
・複数の異なるIPVの接種歴および接種歴ごとの抗体保有率調査を実施し、IPV導入後における高いIPV接種率と抗体保有率の変化を明らかにした。
・sIPV含有4種混合ワクチン製剤のD抗原ELISA法を改良することにより、sIPV国家検定へのD抗原ELISA法導入の可能性を検討した。
・アジア地域の実験室との研究協力に基づき、環境サーベイランスによるエンテロウイルス伝播様態の解析を実施した。
・EV71感染症予防治療法開発のため、SCARB2発現トランスジェニックマウスモデルを開発し、EV71感染による中枢神経症状の発現を確認した。
・ウイルス-受容体結合の分子的基盤を解析し、PSGL-1受容体結合に関与するVP1アミノ酸を同定した。
・全てのヒトノロウイルス遺伝子型の約90%のVLP作製に成功した。地方衛生研究所の協力を得て2000年以降に流行した遺伝子型のノロウイルス陽性便検体を収集した。
結論
・阪大微研会ポリオ研究所の抗セービン株抗体はソークワクチンを認識し、ソーク株標準物質に対して正しくD抗原量を定量することができ、また、仏サノフィ社の抗ソーク株抗体はセービンワクチンを認識し、セービン株標準物質に対して正しくD抗原量を定量することができた。
・我が国の環境水サーベイランスにより離されたエンテロウイルス遺伝子を解析し、ヒト集団内のエンテロウイルス多型を効率よく追跡出来ることを明らかにした。臨床検体や環境水から、より迅速にポリオウイルスを検出・同定するため、ポリオウイルス新規同定法および特異的濃縮法を開発し、培養細胞を用いない検出システムへの応用研究を進めた。
・EV71病原性発現機構の解析、ワクチン・抗ウイルス薬の評価系としてhSCARB2-Tgマウスを作製しEV71感染モデルとしての有用性を評価した。EV 71感染・病原性発現機構解析のため、EV71-受容体結合の構造学的基盤を明らかにし、PSGL-1受容体結合に関与するカプシドVP1アミノ酸を同定した。不活化EV71ワクチン候補(武田薬品工業)は、動物実験およびヒトにおける第一相試験で、効果的な中和抗体誘導効果を示した。
・ノロウイルスワクチン開発を目的とし、ウイルス粒子の立体構造解析を進めた。ヒトノロウイルスVLPを基盤とする第一世代ワクチンのシーズ候補である各種遺伝子型のVLPの作製に成功し、マスターシードウイルスを作出した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201420035Z