大災害後の身体・知的障害児に関与する要因と福祉サービス介入の役割及び効果検証

文献情報

文献番号
201419095A
報告書区分
総括
研究課題名
大災害後の身体・知的障害児に関与する要因と福祉サービス介入の役割及び効果検証
課題番号
H24-身体・知的-一般(復興)-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 隆博(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 菅原 準一( 東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 佐藤 喜根子( 東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 仲井 邦彦( 東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 坂本 修( 東北大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災後、被災地において周産期合併症や低出生体重児の割合が増加している。低体重は様々な障がいの重要な要因で、震災被災に伴う身体的、知的出生障がい児の増加を強く懸念している。
本研究では、被災地の身体、知的障がい児おける身体的発育、発達に加え、特に認知行動面をも含む観察調査を子どもの成長のマイルストーンに照らし戦略的に把握するとともに、ゲノム解析を追加して環境適応の視点を考慮した解析を行なう。また、自治体の保健師などによる福祉施設や家庭訪問と連携し、環境、栄養、生活指導も行うことを目的とする。
研究方法
研究方法として、①対象者の登録:石巻、気仙沼市近辺の住民票を有する妊娠初期(12-16週)の女性を登録②登録期間:2011年1月〜2013年12月③児の登録基準:低出生体重児(2500g未満)、早産児(37週未満)、先天性奇形(ダウン症などの染色体異常症、兎唇などの小奇形も含める)④現地における研究体制の確立:エコチル調査の研究体制を活用。石巻、気仙沼市の二カ所に現地調査センターを設置している。⑤調査内容: 基本属性(在胎週数、出生身長、体重とポンデラル指数、頭囲、性、出産順位などの出産状況)、環境タバコ煙ばく露(児の尿中コチニン)、児の成長と発達:身長、体重、血圧の測定を経時的に実施。加速度計による運動量の測定も行う。神経行動学的な発達検査:新生児行動評価を生後3日目に実施、新版K式発達検査2001を生後6ヶ月(修正月齢)に実施した。⑥被災状況調査:質問票調査とカルテ記載内容から情報を収集(被災スコア)。⑦自治体の保健師と連携した介入指導:自治体が行う家庭訪問と連携し、生後4ヶ月までに全ての児の家庭に訪問。栄養や生活習慣の指導に随行あるいは助言。⑧子宮内環境の評価:成長、分化に関与する遺伝子群のエピゲノム解析を実施した。⑨自治体、医療機関との合同会議:定期的に情報交換、意見交換。市民公開シンポジウムを開催した。
結果と考察
①対象者の登録:石巻及び気仙沼の住民票を有する妊娠初期女性1,727名の登録。該当する妊娠女性の80.5%の同意率②児の登録基準:低出生体重児(2500g未満)201名登録③現地における研究体制の確立:エコチル調査の研究体制を活用(9名の調査員:東北大学との雇用契約を締結)、4医療機関と連携した。④調査内容と統計学的解析:基本属性(在胎週数、出生身長、体重とポンデラル指数などの出産状況)の比較。2群間の比較では、受動喫煙の有無で有意差を認めた(P<0.05)。しかし、本人の喫煙、収入、学歴などに差は認められなかった。児の成長と発達:身長、体重、血圧の測定を経時的に実施。生後6ヶ月で、身長、体重差は正常体重児よりも小さいが、有意差を認めなかった。神経行動学的な発達検査:新生児行動評価を生後3日目に実施開始、新版K式発達検査2001、生後6ヶ月(修正月齢)。発達指数の比較でも差を認めなかった。統計解析は、JUMP ver.1.0を使用した。⑤被災状況調査:全壊は20%、半壊18%、一部損壊18%、被害なし6%、不明25%であった。⑥生活環境の評価:低出生体重児の胎盤組織を用いたエピゲノム解析では、発育促進に関与する遺伝子群の発現の低下が認められた。⑦自治体との連携した取り組み:自治体、医療機関との合同会議は非定期的に情報交換、意見交換を複数回実施した。
結論
東日本大震災の罹災地にて、出生コホート調査を実施し、出生体重と関連する要因を明らかにするとともに、罹災状況との関連性を検討した。出生体重については、介入可能な要因として、妊娠前BMI、妊娠期間中の体重増、母親の喫煙習慣、母親の受動喫煙、母親学歴および母親就労が抽出された。今後の公衆衛生学的または産科臨床上の活動が期待された。一方、罹災状況と出生体重または神経行動学的な指標との間に関連性は認められなかった。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201419095B
報告書区分
総合
研究課題名
大災害後の身体・知的障害児に関与する要因と福祉サービス介入の役割及び効果検証
課題番号
H24-身体・知的-一般(復興)-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 隆博(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 菅原 準一(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 佐藤 喜根子(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 仲井 邦彦(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 坂本 修(東北大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災後、被災地において周産期合併症や低出生体重児の割合が増加している。低体重は様々な障がいの重要な要因で、震災被災に伴う身体的、知的出生障がい児の増加を強く懸念している。
本研究では、被災地の身体、知的障がい児おける身体的発育、発達に加え、特に認知行動面をも含む観察調査を子どもの成長のマイルストーンに照らし戦略的に把握するとともに、ゲノム解析を追加して環境適応の視点を考慮した解析を行なう。また、自治体の保健師などによる福祉施設や家庭訪問と連携し、環境、栄養、生活指導も行うことを目的とする。
研究方法
津波被害が大きかった宮城県沿岸部である石巻市、女川町、南三陸町および気仙沼市の4市町にて、各地域の産婦人科医療機関で妊婦健診を受診し、分娩した女性を対象とする出生コホート調査を進めた。出産時の母親年齢、出産順位、妊娠前体重、分娩直前の体重、出生児の体格指数(出生体重、身長、頭囲、胸囲)、出産日、児の性別、在胎日数、アプガースコア、母親または児の疾患情報などは、カルテより転載した。母親の喫煙および飲酒習慣、母親と父親の教育歴、家庭の総収入(税引き前)などは質問票調査により収集するとともに、喫煙習慣についてはカルテ記載の情報との照合を行った。出生児の成長と発達を記録するため、ブラゼルトン新生児行動評価を生後3日目頃に実施し、さらに新版K式発達検査2001を修正月齢7ヶ月頃に実施した。東日本大震災の罹災状況については、「被災なし」、「一部損壊」、「半壊」、「全壊」、または「不明」に分類し、「不明」は解析から除外した。
結果と考察
石巻及び気仙沼の住民票を有する妊娠初期女性1,727名の登録。低出生体重児(2500g未満)201名登録。基本属性(在胎週数、出生身長、体重とポンデラル指数などの出産状況)の比較。児の成長と発達:身長、体重、血圧の測定を経時的に実施。神経行動学的な発達検査では、新生児行動評価を生後3日目に実施開始、新版K式発達検査2001、生後6ヶ月(修正月齢)。被災状況調査では、全壊は20%、半壊18%、一部損壊18%、被害なし6%、不明25%であった。自治体との連携した取り組み:自治体、医療機関との合同会議は非定期的に情報交換、意見交換を複数回実施した。
結論
低出生体重は、受動喫煙の影響が大きいことが推測された。また、在胎週数、妊娠期間中の母親の体重増、妊娠前BMIおよび児の性別が出生体重と関連し、在胎日数、妊娠期間中の母親の体重増、妊娠前BMIとは正に関連し、児の性別では男児で出生体重が増加することが確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201419095C

収支報告書

文献番号
201419095Z