新評価方法を用いたフォールディング病の分子シャペロン療法の検討

文献情報

文献番号
201419086A
報告書区分
総括
研究課題名
新評価方法を用いたフォールディング病の分子シャペロン療法の検討
課題番号
H25-神経・筋-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(新潟大学 脳研究所生命科学リソース研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 西澤正豊(新潟大学脳研究所神経内科)
  • 柿田明美(新潟大学脳研究所・神経病理学)
  • 赤澤宏平(新潟大学医歯学総合病院・医療情報部)
  • 永井義隆(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
  • 石川欽也 (東京医科歯科大学・長寿・健康人生推進センター)
  • 佐藤俊哉(北里大学医学部・ 実験動物)
  • 他田正義(新潟大学脳研究所神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
21,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年多くの神経変性疾患が蛋白質のフォールディング異常で引き起こされる事が明らかとなった.このフォールディング異常を標的とした治療は,病態の進行を抑制する画期的な治療法に繋がる.我々はポリグルタミン病をモデルとして蛋白質フォールディング異常を抑制する化学シャペロンとしてQAI1を見出した. QAI1は,臨床応用されており,有力な治療薬候補化合物である.しかし,今までに見いだされた多数の候補化合物のヒトへの臨床応用は,現実には成功していない.この要因の一つが治療効果の評価方法にある.稀少疾患である本症は介入研究の成否は誤差の少ない評価方法に左右される.これには連続変数による評価が理想的である.我々は障害程度を連続変数として表す検査プログラムを開発した.本研究では,本評価方法を用いて,QAI1の進行抑制効果を検討する
研究方法
私たちは, iOS6.0/iPadを用いた定量的検査システムを開発した.本年度は引き続き(1) 本検査システムにおいてどのような課題が小脳性運動失調を検出するのに適しているのか,課題の至適条件.(2) その課題条件のもとで,健常群とSCD疾患群との違い,疾患重症度との相関を検討した.健常者33例, 脊髄小脳変性症(SCD)患者68例 を対象とした.一方,本評価方法は上肢のみしか評価できない問題があるため,小脳性歩行障害を定量評価するために,Kinect® を用い3次元動作解析システムを構築した.健常者15例,SCD患者16例(を対象とし,歩行運動中の頸点のX軸成分の座標成分を解析した.本研究は遺伝子解析を必要とするため、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に沿って、実施した.ならびに人を対象とする医学系研究に関する倫理指針の各指針に則り、本研究を進めた.
結果と考察
iPataxでは,対象を健常者33例,SCD患者68例 (MJD/SCA3 18例,SCA6 12例,MSA 8例,CCA 16例,他の失調症15例) に増やし解析した.速度の変動係数はSARA合計およびSARA上肢機能と高い正の相関を示した.(2) 同一例における経時的変化では,CVの値のばらつき [(最大値-最小値)/最大値] は平均13.4% (最大 24.2%, 最小4.15%) であった.一方,SARA合計のばらつきは平均19.3% (最大 54.2%, 最小0.0%) であり,iPataxよりもデータのばらつきが大きかった.(3) 運動学習の効果:健常群,疾患群ともに,1分間の課題遂行の中で時間経過に伴いCVの減少を認め学習効果を認めた.この減少率は疾患群に比して健常群で高く(p<0.01),かつ疾患群ではSARAと有意に相関した.次に小脳性歩行障害を定量評価するために,Kinect&#174; を用い3次元動作解析システムを構築した.健常者15例,脊髄小脳変性症(SCD)患者16例(MJD 6例,SCA6 2例,CCA 2例,その他 6例)を対象とし,歩行運動中の頸点のX軸成分の座標成分を解析した.周波数解析では,SCD患者群では遅い周波数成分が増加し,歩行率(歩行回数/秒)を反映する中間の周波数成分(0.8&#12316;3.9 Hz)のばらつきも増加した.SCD患者群では頸点X座標のピーク解析にて振幅および歩行周期の変動係数が増加した.これら変動係数の増加はSARA合計 および SARA歩行と高い正の相関を示した.以上より,安価に簡便に小脳性歩行障害を定量評価する方法を開発した.
神経・筋疾患は長期療養を必要とするため日常生活への支障が大きく,その病態の進行阻止治療は悲願である.しかし,未だ現実とはなっていない.この原因として,その希少性と多様性故に,評価できる検出力をもった治験が計画されていない事が上げられる.十分な検出力のある治験には,大きな症例数か,鋭敏でブレのない評価方法が必要である.しかし,症例数には自ずと限界がある.そのため,評価方法に成否が左右される.その評価方法は,従来,主観の混入するカテゴリー分類が用いられてきた.本症の稀少性を顧みると,簡便で,どこでも,主観の混入なしに評価できることが望ましい.本申請計画にあるタブレット端末を用いた評価方法は,これらを解決する画期的な医療診断デバイスとなる可能性がある.また本研究申請で対象とする薬剤はすでに臨床で使用されている薬剤であり,薬剤のリポジショニング研究にも道を開く.これを凌駕するために評価方法について,複数回測定するなどの変更を加える必要がある.
結論
本検査システムは小脳性運動失調の定量評価に有用であることに加え,小脳機能として重要な運動学習を評価できる可能性が期待できる.最終年度,本評価方法を用いた実際の薬効判定を行う.

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201419086Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
28,000,000円
(2)補助金確定額
28,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,100,698円
人件費・謝金 1,619,926円
旅費 161,876円
その他 656,500円
間接経費 6,461,000円
合計 28,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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