統合的遺伝子解析システムを用いたヒト発達障害研究

文献情報

文献番号
201419084A
報告書区分
総括
研究課題名
統合的遺伝子解析システムを用いたヒト発達障害研究
課題番号
H25-神経・筋-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松本 直通(横浜市立大学 医学研究科環境分子医科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
  • 加藤 光広(山形大学 医学部小児科学講座)
  • 小坂 仁(自治医科大学 小児科学講座)
  • 橋本 亮太(大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター/大阪大学大学院医学系研究科・情報統合医学講座精神医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
28,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本申請研究は、申請者が研究代表を務めたH22-24年度障害者対策総合研究事業の発展研究として平成25年度から開始し、点変異と遺伝子の構造異常の両方を効率的・安価に検出する新たな統合的遺伝子解析システムを用いて、ヒト発達障害関連の遺伝子異常を効果的に同定する診断システムを確立することを目指す。
研究方法
I.症例集積
小児神経臨床研究ネットワーク等を通じて全国の小児神経科医から年齢依存性てんかんとその類縁疾患を含めた計1040例と臨床遺伝ネットワーク等を通じて集積した知的障害関連疾患を2170例が集積した。
II. 統合的遺伝子解析システム開発
平成25年度研究で遺伝子パネル/全エクソーム解析の価格比(3.5万円/11万円(2013年時)=31.8%)を超える変異検出率をパネルで超えない限り、全エクソーム解析を第一選択とする方が安価で迅速であるとの結論に至った。よって明らかに検出率が32%を大きく超えることが期待できる疾患はパネルを作成するがそれ以外は全エクソーム解析を選択することとし、平成26年度は主として全エクソーム解析をメインプラットフォームとしてシステム構築を進めた。
III. インフォーマティクス解析
全エクソーム解析データを用いてNordプログラムのCNV検出性能を検討した。全エクソーム解析では、通常百リード程度で遺伝子パネルに比して浅いシーケンスリードであるが、遺伝子パネルと同様な検出感度を有することが判明した。全エクソーム解析データを用いてXHMM法で200 kb超のCNV領域の検出が可能かを検討した。
IV.バックアップシステム
従来型の超細密マイクロアレーもCNV異常の検出から責任遺伝子の特定する手法として依然重要で統合遺伝子解析システムと並行して適宜行っている。
V.効果的遺伝子診断システムの確立
全エクソーム解析の解析レベルを向上させ効果的な統合遺伝子診断システムをほぼ確立した。

本研究は、所属施設IRBの承認を受け適切な倫理的配慮と手続きを得て行われた。
結果と考察
遺伝子パネルと全エクソーム解析のパフォーマンスとコストの検討及び上記2手法のデータを利用したCNV解析システムをセットアップし、マイクロアレーデータとの比較を行った。遺伝子パネルはコストメリットは明らかだが、検出率が低い場合全エクソーム解析に移行せざるをえず、コスト・スピードの観点で全エクソーム解析を第一選択とするメリットが明白となり(平成25年度)、平成26年度は全エクソーム解析の統合システム開発に注力した。

全エクソームシーケンスデータを用いたCNV解析では、Nordプログラムも遺伝子パネル解析と同等の検出感度でCNVを検出し、XHMMではマイクロアレーで明らかとなった200 kbサイズ以上のCNVの90%以上が感度よく検出可能であり、マイクロアレーの検出限界である10 Kb以下の欠失等が検出される可能性があること等などが判明し、その特徴を生かしたデータ活用が可能であることが判明した。

平成26年度研究では、全エクソーム解析の解析レベルを向上させ、統合遺伝子解析システムの確立を目指した。一方で全エクソーム解析で平成26年は難治性てんかん性脳症の原因としてPIGA異常 (Neurology 2014, 雑誌の表紙を飾る)・PIGN異常(Neurogenet 2014)・PIGO異常(Epilepsia 2014)・PIGT(Neurogenet 2014)等のGPIアンカー欠損症が、重要な原因の一角を占めていることを明らかにした。さらに先天性白質形成不全症にTUBB4A変異(Neurology 2014)等の単離にも成功し、これらの知見は発達障害における遺伝子変異同定率の向上に寄与する。
結論
以上に示したように点変異とCNV検出が可能な統合解析システムをほぼ確立した。平成27年度は確立した本システムを活用し発達障害症例の原因解明を迅速に進めたい。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419084Z