慢性期脳卒中患者における重度上肢機能障害に対する革新的治療法の実用化研究:ランダム化比較試験によるブレーンマシンインターフェース(BMI)リハビリテーションの効果の検討

文献情報

文献番号
201419079A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性期脳卒中患者における重度上肢機能障害に対する革新的治療法の実用化研究:ランダム化比較試験によるブレーンマシンインターフェース(BMI)リハビリテーションの効果の検討
課題番号
H24-神経・筋-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊之(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 里宇 明元(慶應義塾大学 医学部)
  • 牛場 潤一(慶應義塾大学 理工学部)
  • 補永 薫(東京湾岸リハビリテーション病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
17,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は脳科学研究戦略推進プログラムにおいて、運動イメージを非侵襲的に脳波により感知し、ロボット装具を操作する画期的なブレーンマシーンインターフェース(BMI)リハビリシステムを開発した。本システムは簡便な脳波システムにより、実験室での限られた使用ではなく、一般の訓練室
での使用が可能である。我々は本システムを用いて、世界に先駆けて臨床におけるBMI治療手技を確立し、従来は代償動作の獲得のみにとどまっていた麻痺手の筋活動を認めない重度片麻痺患者への治療を可能とした(Shindo et al, J Rehabil Med 2011)。すでに30例以上の脳卒中慢性期重度上肢機能障害に用い、運動機能の改善を認めている。しかしながら、質の高いevidenceの獲得には、RCTが必要である。世界的にも未だ少数例でのケース報告のみであり、BMIリハビリに関するRCTは行われていない。本研究ではBMIによるロボット装具による訓練の重度上肢機能障害への効果を明らかとするためにRCTを行い、世界に先駆けてBMIリハビリの効果を明らかにするものである。
研究方法
対象は脳卒中後片麻痺患者とし、参加基準は1)発症後6か月以上経過し、在宅復帰をして、歩行、ADLは自立、2)上肢機能障害が残存し、手は胸の高さまで挙がるが、手指伸展筋群の筋活動を認めない、認知機能障害がなくMini Mental State Examination(MMSE)24点以上とする。BMI群では、手指伸展運動イメージ時の運動野における事象関連脱同期を用いて、運動イメージを感知することにより電動ロボット装具を操作してペグの取り外しを行うBMI訓練を40分間、10日間行う。対照群では、同じロボット装具ならびに脳波記録システムを用いてペグの取り外しを行うが、事象関連脱同期をトリガーとせずに行う。クロスオーバーデザインを用い、介入、対照の順序ランダム化して割付を行った。
結果と考察
11例の解析が終了した。BMI群、対照群両群において上肢運動機能の改善を認めたが、ペグの取り外し個数においてはBMI群の方が大きな改善を認めた。運動機能の改善にはともに運動企図に合わせて手指を動かすことで慢性期の重度片麻痺患者においても改善が認められるが、課題依存性の実際の上肢動作の改善は運動野の活動に同期させて行うBMIの方が効果が高い可能性が示唆された。
結論
慶應義塾大学病院ならびに東京湾岸リハビリテーション病院においてBMIリハビリのRCTを行った。BMIによるリハビリテーションにより慢性期の重度上肢機能障害を有する患者においても上肢機能の改善が得られた。本研究によりBMIは脳卒中リハビリテーションにおいて新しい治療法としての応用が可能であることが示された。本手法の実用化により医療・介護サービス提供体制の効率化ならびに機能強化を推進するとともに、長期にわたる要介護者のリハビリの効率化、機能強化、セラピストなどの限られた人的資源の効率的な利用に結びつき、医療経済的にも効果があると思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201419079B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性期脳卒中患者における重度上肢機能障害に対する革新的治療法の実用化研究:ランダム化比較試験によるブレーンマシンインターフェース(BMI)リハビリテーションの効果の検討
課題番号
H24-神経・筋-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊之(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 里宇 明元(慶應義塾大学 医学部)
  • 牛場 潤一(慶應義塾大学 理工学部)
  • 補永 薫(東京湾岸リハビリテーション病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は脳科学研究戦略推進プログラムにおいて、運動イメージを非侵襲的に脳波により感知し、ロボット装具を操作する画期的なブレーンマシーンインターフェース(BMI)リハビリシステムを開発した。本システムは簡便な脳波システムにより、実験室での限られた使用ではなく、一般の訓練室での使用が可能である。我々は本システムを用いて、世界に先駆けて臨床におけるBMI治療手技を確立し、従来は代償動作の獲得のみにとどまっていた麻痺手の筋活動を認めない重度片麻痺患者への治療を可能とした(Shindo et al, J Rehabil Med 2011)。すでに30例以上の脳卒中慢性期重度上肢機能障害に用い、運動機能の改善を認めている。しかしながら、質の高いevidenceの獲得には、RCTが必要である。世界的にも未だ少数例でのケース報告のみであり、BMIリハビリに関するRCTは行われていない。本研究ではBMIによるロボット装具による訓練の重度上肢機能障害への効果を明らかとするためにRCTを行い、世界に先駆けてBMIリハビリの効果を明らかにするものである。
研究方法
対象は脳卒中後片麻痺患者とし、参加基準は1)発症後6か月以上経過し、在宅復帰をして、歩行、ADLは自立、2)上肢機能障害が残存し、手は胸の高さまで挙がるが、手指伸展筋群の筋活動を認めない、認知機能障害がなくMini Mental State Examination(MMSE)24点以上とする。BMI群では、手指伸展運動イメージ時の運動野における事象関連脱同期を用いて、運動イメージを感知することにより電動ロボット装具を操作してペグの取り外しを行うBMI訓練を40分間、10日間行う。対照群では、同じロボット装具ならびに脳波記録システムを用いてペグの取り外しを行うが、事象関連脱同期をトリガーとせずに行う。クロスオーバーデザインを用い、介入、対照の順序ランダム化して割付を行った
結果と考察
本研究では、まずリハビリテーション専門医2名ならびに作業療法士2名にヒアリングをおこない、BMIリハビリテーションの対象疾患である脳卒中重度片麻痺患者の上肢に対する装具療法の臨床的ポイントについて洗い出しをおこなった。その結果、約7割の対象患者が手指および手関節の屈曲位を呈する痙性麻痺を呈しており、母指が対立位に保持できない非機能的肢位にあったことから、装具は母指を対立位に固定する形状とし、痙性麻痺に拮抗して四指を集団伸展することを可能とするために金属プレートによる指支持構造とした。対象患者によって屈曲角度や母指位置が異なったものの、将来的な量産化を視野にいれるため、共通デザインで利用可能な母指対立装具の作製をおこなった。11例の解析が終了した。BMI群、対照群両群において上肢運動機能の改善を認めたが、ペグの取り外し個数においてはBMI群の方が大きな改善を認めた。運動機能の改善にはともに運動企図に合わせて手指を動かすことで慢性期の重度片麻痺患者においても改善が認められるが、課題依存性の実際の上肢動作の改善は運動野の活動に同期させて行うBMIの方が効果が高い可能性が示唆された。
結論
慶應義塾大学病院ならびに東京湾岸リハビリテーション病院においてBMIリハビリのRCTを行った。BMIによるリハビリテーションにより慢性期の重度上肢機能障害を有する患者においても上肢機能の改善が得られた。本研究によりBMIは脳卒中リハビリテーションにおいて新しい治療法としての応用が可能であることが示された。本手法の実用化により医療・介護サービス提供体制の効率化ならびに機能強化を推進するとともに、長期にわたる要介護者のリハビリの効率化、機能強化、セラピストなどの限られた人的資源の効率的な利用に結びつき、医療経済的にも効果があると思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201419079C

収支報告書

文献番号
201419079Z