双極性障害の神経病理学に基づく診断法の開発

文献情報

文献番号
201419076A
報告書区分
総括
研究課題名
双極性障害の神経病理学に基づく診断法の開発
課題番号
H25-精神-実用化(精神)-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所 脳科学研究センター精神疾患動態研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 村山繁雄 (東京都健康長寿医療センター)
  • 齊藤祐子(独立行政法人国立精神・神経医療センター)
  • 國井泰人 (福島県立医科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
8,487,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
双極性障害は、躁状態、うつ状態を繰り返し、社会生活の障害を引き起こす重大な精神疾患であるが、その原因については不明な点が多く、診断法、治療法の開発が急務である。我々はこれまで、磁気共鳴スペクトロスコピー研究、死後脳研究、動物モデル研究などから、双極性障害にミトコンドリア機能障害が関与すること及び脳内の情 動関連部位へのミトコンドリア機能障害細胞の蓄積が、気分障害の病態に関与する可能性を示した。一方、双極性障害患者死後脳と気分障害モデル動物の遺伝子発現解析およびリチウムの薬理作用から、タウと双極性障害の関連が注目されている。本研究の目的は、双極性障害における局在性ミトコンドリア機能障害およびタウ蓄積の意義について、患者死後脳を用い、動物モデルと比較しながら明らかにすることである。
研究方法
本研究では、死後脳の収集と、ミトコンドリア機能障害とタウを中心とした免疫組織化学的解析に焦点を絞る。加藤は、死後脳および動物モデルにおける免疫組織化学的解析法を開発し、モデルマウスで病変候補脳部位を同定する。一方、國井と共に、双極性障害患者の献脳登録の推進に向けて、啓発活動を行う。村山、齊藤、國井は、各々が関わるブレインバンクにおいて、生前登録した患者の剖検を推進し、双極性障害患者の死後脳の蓄積を進めると共に、既に得られた試料を用いた神経病理学的な解析を行う。
結果と考察
 福島県立医科大学では、ブレインバンク事業において、双極性障害患者の生前登録を進め、2015年3月までに、35名の双極性障害患者が登録された。登録者の分布は、北海道から九州まで全国に及んでいた。一方、実際の死後脳の集積に関しては、2015年3月現在で、6名の双極性障害患者の脳が集積された。
 国立精神・神経医療研究センターでは、リサーチリソースネットワークおよび高齢者ブレインバンクの双極性感情障害例の過去の13症例を見直し、タウオパチーをはじめとする神経変性疾患が一部にあることを報告した。また、生前同意登録システムに基づくブレインバンクに精神疾患を加えるべく倫理申請を行った。
 高齢者ブレインバンクでは、これまで行ってきた気分障害の病歴に関する後方視的な病歴確認に加え、本年度から、認知症スクリーニングにGeriatric Depression Scaleを加えることにより、前方視的検討も開始した。後方視的に大うつ病の病歴を確認した6例について検討したところ、タウオパチー2例(嗜銀顆粒性疾患、神経原線維変化優位型老年性変化、1例ずつ)、脳血管障害2例、神経病理学的有意所見なし2例であった。双極性障害、うつ病で神経病理学的異常のない各二例をさらに検討したが、高感度免疫組織化学的検討において、対象タンパクを拡げても、異常所見は得られなかったことから、これらの神経病理学的異常を認めない症例の脳リソースは、気分障害の生物学的研究に貢献すると期待される。
 理化学研究所脳科学総合研究センターでは、モデルマウスを用いて開発した、ミトコンドリアDNA(mtDNA)欠失に伴うシトクロムc酸化酵素(Cox)蛋白サブユニット減少を反映するCox陰性細胞を検出する方法をヒト死後脳に応用し、ヒト死後脳でCox陰性細胞を免疫組織化学的に検出する方法を確立した。マウスでCox陰性細胞が見られた候補部位に相同なヒト脳の部位を明らかにするため、抗カルレチニン抗体および抗アセチルコリンエステラーゼ抗体を用いた免疫染色により検討を行い、その解剖学的な特徴づけを進めた。双極性障害患者死後脳における予備的な検討を進め、双極性障害患者においても、Cox陰性細胞が存在する可能性が示唆された。
結論
 各施設で集積された双極性障害患者の死後脳については、本研究班における研究に限らず、幅広く研究者に提供される予定である。また、本研究で開発された免疫組織化学的手法は、今後ヒト死後脳の神経病理学的検索に用いることができる。更に、ヒト視床室傍部の解剖学的な検証により、これまで神経病理学的な所見の記載が困難であった視床室傍部についてより詳細な所見を記載できるようになると期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-08-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419076Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,033,000円
(2)補助金確定額
11,033,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,681,515円
人件費・謝金 1,766,938円
旅費 343,903円
その他 2,694,644円
間接経費 2,546,000円
合計 11,033,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-08-20
更新日
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