次世代拡散テンソルイメージング(DTI)を用いた聴覚系描出法の確立とその臨床応用研究

文献情報

文献番号
201419071A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代拡散テンソルイメージング(DTI)を用いた聴覚系描出法の確立とその臨床応用研究
課題番号
H25-感覚-若手-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤岡 正人(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 疋島 啓吾(沖縄科学技術大学院大学)
  • 神崎 晶(慶應義塾大学医学部 )
  • 大石 直樹(慶應義塾大学医学部 )
  • 岡野 ジェイムス洋尚(東京慈恵会医科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,695,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の画像解析(イメージング)の発展はめざましく、多臓器で革新的な診断法が開発・実用化されている。本研究は次世代拡散テンソルイメージング法(DTI)を聴覚系の実地臨床に応用発展せしめ、臨床応用研究(トランスレーショナルリサーチ)につなげることを目的としている。
研究方法
1)ヒト固定側頭骨を9.4T-MRI(クライオプローブ装備, brucker社)で撮像し側頭骨病理に匹敵するような高解像度画像撮像法の検討を行った。2)ヒト生体聴覚系の神経回路を、特に聴覚中枢伝導路を中心に1.5T(シーメンス社)および3T-MRI(GE社)を用いたDTIによって描出した。3)橋渡し研究に向けて小型霊長類マーモセットの側頭骨局所解剖に関する検討と、手術手技の検討を行った。
(倫理面への配慮)
固定側頭骨の解析では高磁場MRIを用いたが、ヒト生体の撮像では3Tまでとして安全性を担保した。ヒト生体撮影については事前に十分な説明を行って同意を得て撮像した画像を用いた。霊長類研究においては施行施設の動物実験委員会の承認を得て、NIHガイドラインに則ったプロトコルで行った。
結果と考察
1)固定側頭骨の画像評価
9.4T-MRI (クライオプローブ装備)で蝸牛神経、前庭神経、顔面神経内での神経線維走行描出、蝸牛内での神経走行、MRIでの擬似surface preparation、内耳道内4神経線維の定量化、極めて細い連絡線維の描出(例:Oort's anastomosis)に成功した。頂回転/基底回転の分離のみならず500Hz幅での各周波数毎の神経線維の蝸牛神経内におけるtonotopicな走行を描出し得た。これらの結果は当初の研究計画を遙かに超えており、側頭骨病理を凌駕しうる情報量をMRIで得られるようになった。
2)ヒト生体でのDTI撮像
初年度に生体側頭骨(内耳神経)の高解像度DTI撮像を試みたが予想していた精度の神経線維描出は得られなかった。予備実験で用いた小型霊長類のマーモセットと異なりヒトにおいては乳突蜂巣が発達していることが磁化率アーチファクトを上げているためと考えられた。そこでH26年度は聴覚上位中枢の神経回路描出に特化し、また臨床応用を念頭に現実的な磁場(1.5T, 3T-MRI)で臨床応用に最適化したシークエンスを確立した。その結果、蝸牛神経核から1次聴皮質(BA 41)さらに関連皮質野への線維連絡を極めて高精度のDTIで描出することに成功し、臨床応用に最適化したシークエンスを構築した。
3)小型霊長類コモンマーモセットを用いた前臨床研究
橋渡し研究に向けたマーモセット研究では、全自動化DP-OAEプログラムを構築し、耳科研究用の霊長類飼育設備と難聴モデル構築用ハードウェアの準備をほぼ終えた。中耳手術や内耳への薬剤局所投与プロトコルを確立した。来年度より前臨床研究(難聴に対する非臨床POC取得研究)に応用しうる研究プロトコルの樹立を目指す。
結論
一部、当初の予定から変更を余儀なくされたが、2年間の解析で全体としての進捗状況は概ね順調に進んでいる。側頭骨病理に応用可能な高解像度DTIと、臨床機MRIでの聴覚中枢神経回路の詳細な描出系の確立の二点で、臨床応用に近いところまで到達している。現時点では前臨床研究であり非臨床POCに相当する研究段階だが、最終年度に臨床症例で実地に即した検討を行いたい。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419071Z