新しい難聴遺伝子診断システムの開発および臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
201419067A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい難聴遺伝子診断システムの開発および臨床応用に関する研究
課題番号
H25-感覚-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 工 穣(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 熊川 孝三(虎の門病院耳鼻咽喉科・聴覚センター)
  • 東野 哲也(宮崎大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学耳鼻咽喉科学講座)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院)
  • 岩崎 聡(信州大学医学部人工聴覚器学講座)
  • 松永 達雄(東京医療センター臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,069,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性難聴は新生児1,000名に1名に認められる比較的頻度の高い障害である。当研究室では先天性難聴の遺伝子解析に精力的取り組んでおり、数多くの遺伝子変異を発見、報告してきた。また、臨床上の有用性が明らかとなった13遺伝子46変異に関しては先進医療を経て「遺伝学的検査(先天性難聴)」として保険収載され、研究の成果を臨床に還元してきた。現在、保険診療で実施している遺伝子診断の診断率は30~40%程度であり、今後の診断率の向上のためには新規変異の追加が必要不可欠である。しかし、難聴の原因としては、おおよそ100種類ぐらいの遺伝子が関与することが示唆されており、効率的に解析する事が困難であったが、次世代シークエンサーが実用化され、多くの原因遺伝子を網羅的に解析することが可能となった。そこで、本研究では、3年間の研究期間を通じて、近年、実用化された次世代シークエンサー(超並列シークエンサー)を用い、既知の難聴原因遺伝子を網羅的に解析する新しい遺伝子診断システムの開発および臨床応用を目的に研究を行っている。
研究方法
平成26年度は次世代シークエンサーを用いた新しい遺伝子診断システムの感度・特異度を明らかにすることを目的に難聴患者384例を対象に、現在保険診療で用いられている「インベーダー法」の結果、既存の遺伝学的検査手法としてよく利用されるTaqMan genotyping法および遺伝学的検査のゴールデンスタンダードである直接シークエンス法(サンガー法)と「次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析法」の結果との比較を行った。また、インベーダー法により原因遺伝子変異の認められなかった症例を対象に次世代シークエンサーを用いた新しい遺伝子診断システムで解析を行い、新規の原因遺伝子変異の検出を試みた。
結果と考察
次世代シークエンサーを用いた新しい遺伝子診断システムと、従来法との比較検討を384例で実施したところ、新しい遺伝子診断システムは、検査間および症例間で比較的ばらつきの少ない均質なデータが得られることが明らかとなった。また、検査結果の比較では、99.98%と非常に高い一致率を有しており、優れた検査手法であることが確認された。また、直接シークエンス法と比較しても同等な特異度を有していることが明らかとなった。
また、次世代シークエンサーを用いた新しい遺伝子診断システムの診断率の向上に関しては、インベーダー法などでヘテロ接合体変異が検出されていた症例の、もう一方のアレルに認められる変異、過去に報告のある病的変異を解析することにより、新規変異を含めなくても11%程度の診断率の向上が期待できることが明らかとなった。
さらにまた、新規遺伝子変異の探索に関しては、日本人難聴患者においては非常に稀なACTG1、TMPRSS3、MYO15Aなどの遺伝子変異を効率よく見出す事が出来た。今後、原因別に治療の効果に関するエビデンスを確立することによりオーダーメイド医療の基盤を確立することが可能であると考えられる。
結論
平成26年度の検討により、次世代シークエンサーを用いた新しい遺伝子解診断システムは、従来の遺伝子検査手法であるインベーダー法と同等(一致率99.98%)の性能(正確性)を有することを、384例という大規模検体を用いて確認できた。また、従来法では原因が特定されなかった難聴症例より、ACTG1、TMPRSS3などの非常に稀な遺伝子変異による難聴症例を見出し論文として報告する事ができた。このように新しい検査手法が十分な精度を有すること、また診断率の向上が期待できることが多数検体を用いた検討により明らかとなったことより、今後の臨床応用に向けての体制作りを行う計画である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419067Z