先天性サイトメガロウイルス感染症による難聴のマス・スクリーニングおよび治療法に関する研究

文献情報

文献番号
201419062A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性サイトメガロウイルス感染症による難聴のマス・スクリーニングおよび治療法に関する研究
課題番号
H24-感覚-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 聡(国立大学法人信州大学 医学部人工聴覚器学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宇佐美 真一(信州大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 小池 健一(信州大学 医学部小児科学講座)
  • 塩沢 丹里(信州大学 医学部産科婦人科学講座)
  • 小川 洋(福島県立医科大学 医学部附属会津医療センター)
  • 工 穣(信州大学 医学部耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,944,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サイトメガロウイルス感染(以下CMV感染)は胎内感染症の中で最も多いウイルス感染症の一つで、全新生児の0.5~2.5%に先天性感染が認められると報告されている。先天性CMV感染がある児のうち、10%に神経学的な発育障害や網脈絡膜炎を認め、先天性感音難聴を高頻度で併発する。また、出生時には無症状であった児のうち35%は、遅発性の中等度~高度難聴を発症する。難聴の特徴としては、両側性、一側性、中等度、最重度と多様である。特に、遅発性の場合には、新生児聴覚スクリーニング検査で難聴を見逃すケースも認められるため、発見が遅れ適切な介入が遅れることが問題である。
本研究では、長野県をモデルケースにマス・スクリーニングを実施し、先天性CMV感染のある児をピックアップして、定期的にフォローアップを行う事により、本邦における罹患者頻度、各症状の発症頻度および臨床像に関するまとめを行い、疾患の実態を把握することを目的としている。また、実態把握と平行して、各症状の発現を区別可能な検査手法の開発、各症状の発症メカニズムの解明および適切な介入法に関する検討を行い、早期治療、早期療育のための基盤を確立することを目的とする。
研究方法
本年度は前年度までに継続し、前年度までに確立したFTAカードによるサンプル採取とTaqMan assayを組み合わせた新しいマス・スクリーニング系を用いて、長野県をモデルにマス・スクリーニングの前向きの多施設共同コホート研究を行った。具体的には、信州大学医学部附属病院、松本市民病院、諏訪赤十字病院、丸の内病院、飯田市立病院、篠ノ井総合病院、北信総合病院の合計7施設において、新出生児の両親を対象に説明用パンフレットを用いて十分に説明を行った後に書面で同意を取得し、先天性代謝異常症スクリーニング検査(ガスリー検査)を行う際に、併せてFTAカードに血液検体を採取した。測定には、1.2mm径のマイクロパンチを用いて血液検体をくりぬいた後にFTA wash bufferで洗浄を行い、Taq Man法を用いた定量PCR法によりサイトメガロウイルスUS14遺伝子の測定を行った。また、保存臍帯を用いた先天CMV感染症の検査、また、マス・スクリーニングで発見後のフォローアッププランを作成するとともに継続的にフォローアップを行った。
結果と考察
長野県をモデルにしてマス・スクリーニングでは、4,034例の解析を実施したうち、実際にFTAカードで陽性と判断された16例のうち保存臍帯サンプルの得られた15例について再検査を行った所、8例で保存臍帯でも陽性であることが確認され、スクリーニング検査として有効であることが確認された。また、長野県における先天サイトメガロウイルス感染症児の割合は、8例/4,034例(0.2%)であり、本邦における過去の報告である0.3%とほぼ同程度の先天サイトメガロウイルス感染症児がいることが明らかとなった。また、難聴患者における先天CMV感染症の割合を明らかにすることを目的に、351例より保存臍帯の提供を受けて、CMV DNAの検出を試みた結果31例(9.0%)よりCMV DNAを検出した。さらに、CMV陽性であることが診断された児に対して、症候の有無にかかわらず、定期的にフォローアップするためのフォローアップ手法に関して、小児科および耳鼻咽喉科を主体にプランの検討を行い、マススクリーニング後の陽性例に対する介入の流れを定めるとともに、実際にフォローアップを行っている。
結論
本研究により、定量性およびスループットに優れた定量PCR法による検出システムを構築するとともに、その感度および特異度に関して明らかにした。また、FTAカードを用いたマススクリーニングとして4032名の新生児のスクリーニング検査を実施し、8例の先天サイトメガロ感染児をピックアップすることが出来た。また、これらの児に対しては小児科および耳鼻咽喉科の連携により定期的にフォローアップを行っている。さらにまた、難聴患者における先天CMV感染症児の割合が約10%程度であることを見出した。以上のように3年間の研究期間を通じて、マス・スクリーニングシステムを開発し実用化することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

文献情報

文献番号
201419062B
報告書区分
総合
研究課題名
先天性サイトメガロウイルス感染症による難聴のマス・スクリーニングおよび治療法に関する研究
課題番号
H24-感覚-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 聡(国立大学法人信州大学 医学部人工聴覚器学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宇佐美 真一 (信州大学 医学部耳鼻咽喉科 )
  • 小池 健一(信州大学 医学部小児科学講座)
  • 塩沢 丹里(信州大学 医学部産科婦人科学講座)
  • 小川 洋(福島県立医科大学 医学部附属会津医療センター)
  • 工 穣(信州大学 医学部耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サイトメガロウイルス感染(以下CMV感染)は胎内感染症の中で最も多いウイルス感染症の一つで、全新生児の0.5~2.5%に先天性感染が認められると報告されている。先天性CMV感染がある児のうち、10%に神経学的な発育障害や網脈絡膜炎を認め、先天性感音難聴を高頻度で併発する。また、出生時には無症状であった児のうち35%は、遅発性の中等度~高度難聴を発症する。難聴の特徴としては、両側性、一側性、中等度、最重度と多様である。特に、遅発性の場合には、新生児聴覚スクリーニング検査で難聴を見逃すケースも認められるため、発見が遅れ適切な介入が遅れることが問題である。
本研究では、長野県をモデルケースにマス・スクリーニングを実施し、先天性CMV感染のある児をピックアップして、定期的にフォローアップを行う事により、本邦における罹患者頻度、各症状の発症頻度および臨床像に関するまとめを行い、疾患の実態を把握することを目的としている。また、実態把握と平行して、各症状の発現を区別可能な検査手法の開発、各症状の発症メカニズムの解明および適切な介入法に関する検討を行い、早期治療、早期療育のための基盤を確立することを目的とする。
研究方法
本研究では遠隔地域からのサンプル収集が容易かつ簡便にスクリーニング可能なシステムの構築を目的に、先天性代謝異常症スクリーニング検査(ガスリー検査)を行う際に、FTAカードによるサンプル採取を行うとともに、郵送で収集し、TaqMan assayを行う新規マス・スクリーニング系を開発しした。また、開発されたマス・スクリーニング系用いて、長野県をモデルにマス・スクリーニングの前向きの多施設共同コホート研究を行った。具体的には、信州大学医学部附属病院、松本市民病院、諏訪赤十字病院、丸の内病院、飯田市立病院、篠ノ井総合病院、北信総合病院の合計7施設において、新出生児の両親を対象に説明用パンフレットを用いて十分に説明を行った後に書面で同意を取得し、FTAカードに血液検体を採取した。測定には、1.2mm径のマイクロパンチを用いて血液検体をくりぬいた後にFTA wash bufferで洗浄を行い、Taq Man法を用いた定量PCR法によりサイトメガロウイルスUS14遺伝子の測定を行った。また、保存臍帯を用いた先天CMV感染症の検査、また、マス・スクリーニングで発見後のフォローアッププランを作成するとともに継続的にフォローアップを行った。
結果と考察
長野県をモデルにしてマス・スクリーニングでは、4,034例の解析を実施したうち、実際にFTAカードで陽性と判断された16例のうち保存臍帯サンプルの得られた15例について再検査を行った所、8例で保存臍帯でも陽性であることが確認され、スクリーニング検査として有効であることが確認された。また、長野県における先天サイトメガロウイルス感染症児の割合は、8例/4,034例(0.2%)であり、本邦における過去の報告である0.3%とほぼ同程度の先天サイトメガロウイルス感染症児がいることが明らかとなった。また、難聴患者における先天CMV感染症の割合を明らかにすることを目的に、351例より保存臍帯の提供を受けて、CMV DNAの検出を試みた結果31例(9.0%)よりCMV DNAを検出した。また、陽性となった検体を用いてCMVの塩基配列解析を行い、本邦においても海外でみられるように、抗原部位であるgB遺伝子に少なくとも2系統あることを明らかにした。さらに、CMV陽性であることが診断された児に対して、症候の有無にかかわらず、定期的にフォローアップするためのフォローアップ手法に関して、小児科および耳鼻咽喉科を主体にプランの検討を行い、マススクリーニング後の陽性例に対する介入の流れを定めるとともに、実際にフォローアップを行っている。
結論
本研究により、定量性およびスループットに優れた定量PCR法による検出システムを構築するとともに、その感度および特異度に関して明らかにした。また、FTAカードを用いたマススクリーニングとして4032名の新生児のスクリーニング検査を実施し、8例の先天サイトメガロ感染児をピックアップすることが出来た。また、これらの児に対しては小児科および耳鼻咽喉科の連携により定期的にフォローアップを行っている。さらにまた、難聴患者における先天CMV感染症児の割合が約10%程度であることを見出した。以上のように3年間の研究期間を通じて、マス・スクリーニングシステムを開発し実用化することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201419062C

収支報告書

文献番号
201419062Z