福祉機器の利活用と開発を促進するための社会技術基盤の創成

文献情報

文献番号
201419056A
報告書区分
総括
研究課題名
福祉機器の利活用と開発を促進するための社会技術基盤の創成
課題番号
H25-身体・知的-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
諏訪 基(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 誠志(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 小野 栄一(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 硯川 潤(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,215,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,福祉機器の開発・利用に関連した様々な合意形成プロセスに,ユーザとステークホルダが直接 参加・関与するための社会技術基盤を確立することで,福祉機器の真に効果的な利活用を促進することを目的とする. 技術的な課題を展開したロードマップの策定から個別ニーズを反映した機器開発に至るまでの,様々なスケールでの意思決定の場に,障害者と多様な立場の関係者間の相互理解や合意形成の機会を導入するための基礎的指針や社会技術基盤の構築を目指す.
研究方法
本研究では,実践事例としてのワークショップ開催と,それらの分析を通じた方法論構築を並行して実施する.
■ ワークショップ運営
 各ワークショップは,異なるテーマ設定で2 回実施する (Phase1・2). Phase 1の内容を分析・検討して改善点を抽出し,Phase 2にフィードバックすることで,実践的な手法構築を狙う.
i) ユーザパネル: 福祉機器に関係するユーザや専門職・エンジニア間の議論を通じて,未達のニーズを抽出し,それらを達成するための技術ロードマップを作成する.
ii) マッチングカフェ: オープンな場での既存技術の体験・試用や交流を通じて,障害当事者と機器開発者の相互理解を深め,ニーズに見合った技術を探索することで,新たな機器開発へと展開する.
iii) デザインワークショップ: 特定のニーズを解決するための福祉機器を,ユーザである障害当事者と開発者の協働で設計・試作・評価する. プロトタイプを議論のきっかけとすることで実用上の制約条件を抽出し,評価機試作とモニター評価までをワンセットとして実施する.
■ 方法論構築
 上述の実践事例を分析・モデル化することで,下記の3 項目を中心に社会技術的アプローチの基盤となる方法論を構築する.
a) 多様な立場の参加者間の相互理解を実現するファシリテーション手法
b) コンセンサス醸成のためのユーザパネルの組織手法
c) 多様な参加形態を可能にする インターネットコミュニティの活用手法
結果と考察
以下のように,実際のワークショップの運営や事例調査などから,本研究で目的とする参加型の意思決定のファシリテーション手法構築に必要な素材の収集を中心に研究を進めた.
【ユーザパネルの構築】
ユーザパネルに求められる事項を抽出するためのワークショップを開催し,機能モデルを構築した.また,その中の「当事者ロールモデル共有」に関するグループワークを実施し,障害種別間での福祉機器に関する姿勢の違いや共通点をまとめ,パネル運営の指針とした.
【マッチングカフェ(国リハコレクション)】
10月18日(土)に国リハコレクシュン2014を企画・開催した.障害に配慮した衣服に関してファッションショー(モデル11人)および展示・デモ(30企画、33機関)に障害当事者団体,衣服作製に関わる企業,学校,ボランティア,研究機関,支援活動機関,関連協会などの協力を得て行った.障害当事者と開発者のみでなく,出展機関同士の交流も極めて好評であった.試作品や商品を前に気さくに話せる「サロン的な場の継続」と「課題を知ってもらう工夫」のさらなる検討が必要と思われた.
【デザインワークショップ】
これまでに,のべ30回・70時間にわたるワークショップを5つのテーマ(災害対策,自助具開発,バリアフリートイレデザインなど)について開催してきた.障害当事者に加え,開発者やリハ専門職など多様な立場の参加者が相互理解を深めながら議論を進める場を運営することで,後述の議論促進(ファシリテーション)手法の構築につなげた.また,時空間的な制約を受けない facebook 上での仮想ワークショップも開催し,議事進行プロセスを記録・分析した.
【ファシリテーション手法の確立】
上記デザインワークショップの事例から,i) 設計概念の共有,ii) 試作による制約条件の抽出,iii) 相互理解の醸成,がそれぞれ議論の促進要素として抽出された.また,ワークショップの逐語録を内容分析の手法を用いて分析した結果,ファシリテータによる相互理解促進の効果が確認された. Facebook 上での仮想ワークショップの分析からは,インターネットコミュニティにおける議事進行の数理的特徴が確認されると共に,ファシリテーションの重要性や簡易なコミュニケーションツールの必要性が示唆される結果を得た.

結論
これまでに,上記3種のワークショップの試行運営を複数回完了し,議事進行の逐語録分析などから方法論構築のための要素分析を完了している.また,デザインワークショップやSNS活用については,効果の数理的分析にも前倒しで着手できた.H27年度は,ワークフローのモデル化など方法論細部の構築と並行して,実事例蓄積と効果検証を進める.

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419056Z