ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族に対する認知行動療法の効果:CRAFTプログラムの適用

文献情報

文献番号
201419053A
報告書区分
総括
研究課題名
ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族に対する認知行動療法の効果:CRAFTプログラムの適用
課題番号
H25-精神-若手-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
境 泉洋(国立大学法人徳島大学 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族に対して、当事者の受療を促進するための効果的なプログラムを構築することは、自ら支援機関を利用することが少ないとされるひきこもり支援において重要な課題となっている。本研究では、研究Ⅰとしてひきこもりの家族支援のニーズ調査、研究ⅡとしてCRAFTプログラムの効果検証、研究Ⅲとして実施者養成システムの在り方について検討を行うことを目的とした。
研究方法
研究Ⅰにおいて、各都道府県・各政令指定都市のひきこもり地域支援センター(62箇所)、精神保健福祉センター(17箇所)、精神保健福祉施策担当(67箇所)、青少年施策担当(67箇所)、発達障がい施策担当(67箇所)、発達障がい者支援センター(88箇所)を対象とした。なお、ひきこもり地域支援センターを設置していない地域においてのみ精神保健福祉センターを対象とした調査を実施した。
研究Ⅱにおいて、ひきこもり状態にありながらも支援・医療機関等の利用に至っていない人の家族で、研究参加施設を利用しており、研究参加への同意が得られた者に対するCRAFTによる支援の効果検証を行った。
研究Ⅲにおいて、CRAFTの実施者養成として、CRAFTの3つの研修方法を行った。一つは、CRAFTマニュアル(Smith & Meyers,2004)の訳本(境ら、2012)を用いた研修である。二つ目は、CRAFTプログラムの開発者であるMeyers氏による2日半の集中型研修である。集中型研修のためにMeyers氏をアルコール依存領域の専門家と連携して招聘した。3つ目は、ひきこもりの家族向けのCRAFTマニュアル(境・野中,2013)を用いて主任研究者が行った1日の研修である。これらの3つの研修を通して、CRAFTを学ぶ上での疑問とその回答集(以下、Q&A集)を作成した。また、本研究においてCRAFTプログラムを実施した支援者6名を対象に、①各機関でCRAFTを実施するメリット、②各機関で実施しやすくするためにCRAFTにどんな要素が必要か、③CRAFTを広汎性発達障害のある(疑われる)ひきこもりの事例に実施する際に必要と考えられる工夫、④各機関でのCRAFTの応用可能性について自由記述で回答を求めた。
結果と考察
研究Ⅰにおいて、調査の結果、調査を依頼した機関のほとんどが家族支援の必要性・緊急性を感じていた。同時に、取り組みに困難を感じているという結果も得られた。この結果から効果的な家族支援方法の開発・普及の必要性が示唆された。
研究Ⅱにおいて、17名の親に対してプログラムを開始した。親の平均年齢は57.47±6.73歳、続き柄は母親が14名、父親が3名であった。ひきこもり当事者の平均年齢は25.18±6.63歳、性別は男性13人、女性4人であった。PARSのカットオフポイントを超えるものは、幼児期ピークで2名(11.76%)、現在で3名(17.65%)であった。
研究Ⅲにおいて、CRAFTを実施するメリットとして、支援経験の浅い支援者が参考にできる体系的な支援プログラムであるという点が挙げられた。また、経験の有無にかかわらず、「適切な教育や経験」がなかったために不適応行動を呈するに至ってしまった人へ、過不足のない情報を届け、傷ついた心をケアすることが可能になるというメリットが上げられた。また、各機関でCRAFTを実施しやすくするために、どのような要素が必要かについては、CRAFTを学ぶ支援体制を構築する必要性が指摘された。広汎性発達障害のある(疑われる)ひきこもりの事例に実施する際に必要と考えられる工夫については、機能分析を含め、アセスメントをしっかりと行う重要性が指摘された。
結論
研究Ⅰとしてひきこもりの家族支援のニーズ調査、研究ⅡとしてCRAFTプログラムの効果検証、研究Ⅲとして実施者養成システムの在り方について検討を行った。今回得られた知見をもとに、CRAFTプログラムの効果検証、実施ガイドラインの作成、支援者養成システムの構築を進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-08-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419053Z