うつ病の妊産褥婦に対する医療・保健・福祉の連携・協働による支援体制(周産期G-Pネット)構築の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201419052A
報告書区分
総括
研究課題名
うつ病の妊産褥婦に対する医療・保健・福祉の連携・協働による支援体制(周産期G-Pネット)構築の推進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-精神-若手-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
立花 良之(国立研究開発法人国立成育医療研究センター こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科)
研究分担者(所属機関)
  • 久保 隆彦(シロタ産婦人科 産科)
  • 小泉 典章(長野県精神保健福祉センター)
  • 森 臨太郎(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 成育政策科学研究部)
  • 竹原 健二(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 成育政策科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、産科医・助産師・小児科医等の母子保健関係者がメンタルヘルス不調の母親の発見のゲートキーパーとなり、保健師や精神科医療機関につなぐことで母親の精神状態の重症化や養育不全などを防ぐ多機関連携モデル(以下母子保健のG-Pネットとする)の構築を目的とした。
研究方法
①東京都世田谷区において母子保健のG-Pネットを展開した。また、世田谷区の妊産褥婦のメンタルケアのための多機関連携の実態調査を行った。
②長野県須坂市において母子保健G-Pネットを展開した。
③産科医・助産師がかかわることのできる産後2週において、そののちの育児困難やメンタルヘルス不調に気づくために、注意すべき心身の問題・環境因子を探索的に調べた。
④周産期のハイリスクの母親を妊娠期から産後にかけて医療・保健・福祉で切れ目のない支
援するにあたって、産後1か月以降の身体的・精神的なトラブル(以降、マイナートラブルとする)の実態を調べ、産後1か月健診時の褥婦に対するでのケア・サポートのあり方を検討した。
⑤周産期のメンタルヘルス不調の母親に対するエビデンスレベルの高い介入方法を明らかにするため、コクランレビューについてのオーバーレビューを行うこととした。
結果と考察
】①世田谷区役所の会議室で、医療・保健・福祉の関係者が集まりメンタルヘルスや養育不全のハイリスクの母親への対応についての検討会を定期開催した。また、モデルの均てん化のための研修会を開催し、対応のマニュアルを作成した。世田谷区を医師会と連携して、メンタルケアの研修会を開催した。「顔の見える連携」を補うための、インターネットを使った患者紹介システムの運用を開始した。また、母子保健のG-Pネットを促進するための、診療報酬上のインセンティブ付加の提言を行った。実態調査で
は、産後メンタルヘルス不調の母親のサポートのための多機関連携によるセーフティネットの必要性、ハイリスク者が精神科医療機関をほとんど利用していないこと、その中で精神科医療機関がフォローしているケースは育児ストレス・養育不全・メンタルヘルス不調のハイリスク者が統計的に有意に多いことが明らかになった。
②須坂市では、長野県精神保健福祉センター・県立病院・須坂市健康づくり課が協働して、メンタルヘルス不調や養育不全についてのハイリスクの母親を妊娠期から同定し、支援していく体制が整備された。また、長野県全県の産科医療機関や保健所を対象に研修会を開催したり、産後うつ病の対応マニュアルを刊行したりして、均てん化を図った。
③初産婦・経産婦において、分娩後3か月時のリスクの有無を判別する心理社会面・身体面のリスクが明らかになった。
④産後1か月健診時の保健指導でケアすべき、マイナートラブルが明らかになった。
⑤産後うつ病に対する様々な介入プログラムについてのコクランシステマティックレビューのオーバービューレビューのプロトコールを作成した。
 世田谷区と須坂市での、母子保健におけるG-Pネットのモデルはどちらも、メンタルヘルス不調の母親の早期介入のための関係者の「顔の見える連携」づくりに有効で、かつ、既存の要保護対策地域協議会の機能を強化する役割を果たしうると考えられる。さらに、産後ケアにおいて、心身の不調や環境因子のリスク因子に産科スタッフが注意しつつケアすることで、その後のメンタルヘルス不調や養育不全を予防しうる可能性が示唆された。今後、産後ケアの中に、メンタルケアを組み込み、産後のメンタルヘルス不調や養育不全を予防していくことが必要であると考えられる。
結論
3年計画の2年目として、母子保健におけるG-Pネットのモデルを世田谷区と須坂市で展開した。医療・保健・福祉の関係者が集まってメンタルヘルス不調や養育不全のハイリスクの母親についての検討会を定期開催しており、当初の研究計画を達成できていると考えられる。どちらのモデルも、メンタルヘルス不調の母親の早期介入のための関係者の「顔の見える連携」づくりに有効で、かつ、既存の要保護対策地域協議会の機能を強化する役割を果たしうると考えられる。併せて、産後ケアにおいて産科医・助産師が、心身の不調や環境因子のリスク因子に産科スタッフが注意しつつケアすることで、その後のメンタルヘルス不調や養育不全を予防しうる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419052Z