精神疾患患者の整形外科領域を中心とする合併症に関する研究

文献情報

文献番号
201419049A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患患者の整形外科領域を中心とする合併症に関する研究
課題番号
H26-精神-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高岸 憲二  (国立大学法人群馬大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 伯(国立大学法人群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 仙波 浩幸(豊橋創造大学保健医療学部)
  • 江口 研(医療法人仁誠会大湫病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 精神科病院に入院している患者の高齢化は歴然とした事実であり、精神状態の改善を中心とした治療だけでなく、身体合併症およびADLの管理によるQOLの維持は、今後の地域移行を推進するにあたり重大な課題である。本研究の目的は、精神科長期在院患者の転倒および骨折・骨粗鬆症などロコモティブシンドローム(ロコモ)とされる整形外科的疾患の現状を調査すること、また転倒の要因をレトロスペクティブに検討・解析することである。また、薬物・運動療法学ならびに理学療法学的見地より治療法を検討することである。
研究方法
初年度は1)精神科入院患者の骨粗鬆症ならびにロコモの実態調査に関する研究、2)精神科病院における転倒・骨折等の現状に関する調査に関する研究、身体精神合併症患者に対する理学療法ガイドラインの作成に関する研究の3事業を行った。
1) 精神科長期在院患者のロコモの実態調査、骨塩定量、既存脊椎圧迫骨折の評価、骨折リスクの評価を行い、統合失調症患者のロコモ、骨粗鬆症の実態およびリスクを評価した。
2) 過去の転倒・骨折のデータを、レトロスペクティブに集計して解析を行うとともに、現在公益社団法人日本精神科病院協会に登録している全国の1200以上の会員病院に対してアンケート調査を実施するために委員会を立ち上げ、調査項目の検討を行った。平成25年度の統合失調症入院患者の転倒事故の実態、骨折事故の発生数、他院で治療を受けた後の再入院時の状態像、骨粗鬆症の診断・検査・治療、転倒リスクアセスメントの実施と活用、歩行訓練等のリハビリテーションの実施、転倒予防目的の行動制限の実施などについて分析検討する。
3) 統合失調症、双極性感情障害、うつ病性障害があり、骨関節疾患、多発外傷や脊髄損傷など日常生活動作の低下や身体機能障害を併発し、身体機能の回復・再獲得のため入院して集中的な身体的リハビリテーションが必要な身体精神合併症患者を対象とする。対象者の基本属性、情報、理学療法実施期間、精神症状、運動機能及び日常生活、その他医学的イベントを自由記述方式で評価する。
 基本情報は、年齢、性別、身体障害診断名、精神科診断名、入院経路、入院種別、入院日数、転帰、合併症及び併存症である。精神症状は、カルテより精神症状の有無、精神機能の全体的評定尺度(GAF)、カルテより精神症状の有無、質問紙法に精神的健康度(GHQ-12)、健康関連QOL(SF-8)、理学療法実施時の観察からオリジナルな精神症状評価表をそれぞれ聴取する。身体障害は、リハビリテーション実施計画書に記載の関節可動域測定、徒手筋力検査法(MMT)などすべての項目、日常生活動作として機能的自立度評価表(FIM)を用いる。 精神疾患患者の理学療法が可能な施設の選定および研究協力を得た。
結果と考察
1) 精神科患者の整形外科疾患の現状調査について、現在までに予定例数の200名のうち、140名について同意を得た上でデータを取得中である。現在130名分のデータの中間解析を実施した。平均年齢61.1(24〜90)歳、男性59名、女性71名の患者群である。ロコモ25を用いてロコモの実態調査を行ったところ、59名(46.1%)がロコモと判定された。しかし、患者本人が自己のADLに関して過大評価もしくは過小評価することがあり、専門職による介助が必要であると考えられた。骨密度検査の結果、全体で63名(48.5%)の患者が骨粗鬆症と診断された。さらには、26名(20.0%)の患者が骨密度低下と1個以上の脆弱性骨折を有する重症骨粗鬆症と診断された。既存椎体骨折の有無について、胸腰椎単純レントゲンを撮影し評価を実施した。胸腰椎全体としては、41.1%の患者に最低1個の椎体骨折を認め、最大で11個の椎体骨折を認めた患者も存在した。
2) 骨折・転倒に関する全国調査は、精神科病院協会加盟病院へ調査票の発送が完了しており、現在回収中である。
3) 理学療法関連調査に関しては、最初に協力機関の募集を行い、10月調査開始を目指したが、対象者、リハビリ実施内容、スタッフの質など要件を満たす機関が乏しく、実施指導に時間がかかってしまい、平成27年1月開始となった。参加協力施設は、現在4病院の協力が得られており、その他3施設と交渉中である。
精神科長期在院患者において骨粗鬆症を合併する患者の割合が高いことが示唆され、容易に脊椎及び下肢骨に骨粗鬆性の骨折が生じることが推測された。
結論
約半数の精神科長期入院患者は、ロコモと判定された。同様に、約半数の患者が骨粗鬆症と診断されており、また重度骨粗鬆症例も5人に1人認められた。精神科病院長期入院患者では高率に整形外科疾患的合併症が併発していることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419049Z