精神障害者の地域生活支援の在り方とシステム構築に関する研究

文献情報

文献番号
201419048A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の地域生活支援の在り方とシステム構築に関する研究
課題番号
H26-精神-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 順一郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会復帰研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 萱間 真美(聖路加国際大学看護学部)
  • 原 敬造(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部)
  • 本田 美和子(国立病院機構東京医療センター臨床研究センター政策医療企画研究部)
  • 吉田 光爾(日本社会事業大学)
  • 佐藤 さやか(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部)
  • 西尾 雅明(東北福祉大学総合福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
6つの異なる次元の研究活動を通じて「『入院』という形に頼らない」「地域生活中心の」精神保健福祉医療システムへの転換の具体的な戦略を検討する。我が国で有効かつ実現可能な地域精神保健医療福祉システムとはどのようなものか、システム転換の障壁は何か、といった大きな課題を論じるための核となる資料を作成する
研究方法
1)ACT、多職種アウトリーチチームの治療的機能についての評価
包括的な地域生活支援が多職種によって提供されるAssertive Community Treatment (ACT)のチームを中心に、チームにおける認知行動療法(CBT)のニーズを把握し、アウトリーチ型CBTに関する研修内容を検討し、アウトリーチチームにおけるCBTの効果検討を実施する
2)全国の多職種アウトリーチ支援チームのモニタリング研究
H26年度に新設されながら多くの医療機関が参加できていない「精神科重症患者早期集中支援管理料」について、この制度の実施状況や実施にあたる課題を明らかにし今後推進するために必要な改善について検討する
3)地域生活を支えるための精神科診療所の役割に関する検討
精神科診療所におけるサービス提供状況現状を調査し、類型化を図ることで地域生活を支える社会資源としての精神科診療所の役割について検討する。とりわけ多機能型診療所に注目しそのニーズの量と質を推計する
4)精神障害者の退院促進および福祉サービスも含めた地域生活支援のあり方についての検討
全国の相談支援事業所に対して地域移行・地域定着の実際の活動の状況を調査し制度の運用の基礎資料を作成し、現状と課題を把握する
5)地域社会で暮らす認知症高齢者への包括的なケア技法の効果に関する検討
欧州の認知症ケアにおいて、認知症周辺症状に対する非薬物治療として実績とエビデンスのある、包括的なコミュニケーションに基づくケア技法ユマニチュードの導入を試みる。地域社会で家族を介護している一般市民に対して、ユマニチュードの基本技術の教育を行い介入前後での介護者および認知症高齢者の評価を行い、効果を測定する
6)多職種アウトリーチチームの研修のあり方についての検討
精神障害者に対するアウトリーチ事業関係者に2日間にわたる研修会を実施し、その参加者を対象にしたアンケート調査を行う。研修における学習アウトカム、参加者への影響などを評価することで、アウトリーチ支援にかかわる人材としての態度や実践スキルに好ましい変化を与える研修プログラムについて提言を行う
結果と考察
1)実態調査で、幻聴や妄想など統合失調症特有の精神症状とともに対人技能など疾患横断的な課題への支援もニーズが高いこと、理論は知っていても実践の段階で多くの支援者が困難を感じており、演習形式の研修が望まれていることが明らかとなった
2)H26年10月現在、全国で6機関のみが「精神科重症患者早期集中支援管理料」の届出を行っていた。届出を困難にしていた要因として、医師の24時間体制、月1回の往診体制等の届出基準の高さや、それに見合った診療報酬体系ではないことが最も多く挙げられた。次に、看護師、作業療法士、精神保健福祉士といったコメディカルの専任体制や24時間体制等の届出基準が高いことが、要因として挙げられた
3)日精診が実施したアンケートに回答した617の診療所から、多機能診療所と単機能診療所を無作為に抽出し、研究協力への同意の得られた70箇所中53箇所で初診患者のサービス利用状況に関する前方視的調査を開始した
4)約2年の調査期間に退院支援(地域移行)をうけて退院した精神障害者の総数は1040人、退院後生活支援(地域定着)の実績は2249人であった。事業所実績をみると期間中の退院者数0人の事業所が最も多く5割以上であった。地域移行・地域定着支援を進める上での困難を「とても感じる」の回答として、「公営住宅の確保」(70.3%)「民間住宅の確保」(65.8%)「GHの確保」(64.4%)など居所確保の困難が多く指摘された
5)「ユマニチュード」の教育資材の作成および教育方法ついて、地域医療・介護を実践している協力施設において3か月にわたり継続した教育を実践し、教育資材及び教育方法の内容を検討し完成させた。その後実際に自宅介護を行っている家族への訪問指導及び継続観察評価を行った
6)全国から27名の支援者が参加し、職域は医師2名看護系11名PSW系10名OT3名であった。自記式アンケートを用いた前後評価では、一部の項目で有意な変化が認められた。アウトリーチ支援者に対する研修プランとして、初任者研修、基本研修、ステップアップ研修の必要性と中級以上の実践者が必要と思う項目が整理された
結論
6つの研究活動は、ほぼ順調に研究活動を開始しH27年度に引き継がれる

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419048Z