アルコール依存症に対する総合的な医療の提供に関する研究

文献情報

文献番号
201419046A
報告書区分
総括
研究課題名
アルコール依存症に対する総合的な医療の提供に関する研究
課題番号
H26-精神-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 進(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 米山奈奈子(国立大学法人秋田大学大学院医学系研究科 精神保健看護学)
  • 長 徹二(三重県立こころの医療センター 精神医学)
  • 成瀬暢也(埼玉県立精神医療センター 精神医学)
  • 吉田精次(特定医療法人あいざと会藍里病院 精神医学)
  • 白川教人(横浜市こころの健康センター 精神医学)
  • 堀井茂男(公益財団法人慈圭会 慈圭病院 精神医学)
  • 杠 岳文(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター 精神医学)
  • 吉村 淳(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 精神医学)
  • 齋藤利和(札幌医科大学医学部神経精神医学講座)
  • 大嶋栄子(特定非営利活動法人リカバリー,社会福祉学)
  • 湯本洋介(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
16,154,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交代 佐久間寛之(平成26年4月~平成27年5月)→湯本洋介(平成27年6月~)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はアルコール依存症(以後、ア症と略)の予防、治療、社会復帰を支援するために必要な実態を把握し、支援のためのモデル構築、ガイドライン、マニュアル作成などをその目的とする。また、合わせて、家族に対する支援事業や、ア症の啓発を推進するための研究や事業も実施する。
研究方法
本研究は13名の分担研究者が各事業を展開する。1)「ア症の普及・啓発に関する研究」は、一般市民や家族向け依存症の普及啓発用DVDやリーフレットを作成し、その評価を行う。2)「ア症の実態に関する研究」は、ア症の合併する精神障害の治療・対応マニュアルのアップデートを行う。3)「ア症家族の支援に関する研究」は、 依存症家族の実態とニーズに関する調査分析を行い、それを基にして啓発活動を展開する 。4)「家族のための対応や疾患についてのマニュアル作成」は、家族と援助職対象のパンフレット・DVD原案の作成、家族に対する対応マニュアルを作成し、その効果を評価する。5)「医療機関、行政、自助グループ、社会復帰施設の連携の在り方に関する研究」は、新法を踏まえた各機関の連携のモデルを探る。6)「関係機関(行政、社会復帰施設など)の機能向上のための研究」は、関係機関の機能を効果的に生かすという視点で関係機関の対応マニュアルの作成を行う。7)「ア症の早期発見・早期治療導入の研究」は、職域や地域における継続的なアルコール問題への介入プログラムを作成し、その効果を検討する。8)「ア症に対する簡易介入の適応に関する研究」は、どのようなア症患者が簡易介入によって長期に節酒を維持できるかその特徴を明らかにする。9)「ア症の治療転帰とその予測因子に関する研究」は、ア症の入院患者の転帰調査を行い、その予後因子を検討する。10)「薬物治療の有効性評価と薬効の向上」研究は、問題飲酒群に比較的効果のある抗うつ薬、非定型向精神薬の探索を試みる。11)「ア症の診断・治療ガイドライン作成」は、国内外のエビデンスを探索し、それを基にしたガイドラインを作成する。12)「ア症の社会復帰支援に関する研究」は、当事者へのインタビュー調査および関係機関への質問紙調査を実施し、かつ包括的社会復帰アプローチの実施成果について考察を行う。13)「ア症の治療・社会復帰に関する社会資源情報の作成」は、全国の治療・回復施設のリストをホームページ上に公開し、その評価を得る。
結果と考察
本研究の、3年計画における初年度の達成度について示す。ア症の普及・啓発に関しては、啓発のためのDVDやパンフレットの素案が作成され、次年度以降のこれらの教材の効果に対する評価に向けて準備が整っている。家族向けの支援に関するアンケートの作成が完了し、調査を行う用意が整い、普及・啓発に関しての初年度目標は達成できた。ア症の実態調査については、初年度の目標であった患者特性を把握するための質問用紙が作成され、すでに実際の調査を行っている。合併精神障害に関しては、抑うつ症状とアルコール問題の関連についての研究を行うことができた。一方で、目標に掲げた薬物療法の治療反応性については今後の研究をすすめていく。ア症に対する関係機関の連携については、現状の支援並びに機関連携についての状況を把握することができた。また、関係機関に求められる機能の抽出方法を確立することができた。ア症患者の社会復帰促進因子や阻害因子の検索について、先行研究のレビューによりそれぞれの因子を見いだすことができた。また、関係機関の情報ホームページ作成については、調査に用いる項目についての検討や実際の運用についても深めることができ、調査用紙の作成や情報獲得の手段をより具体化することができた。以上より、次年度以降の目標である関係機関向けマニュアルや情報ホームページ作成に向けての準備が整い、ア症関係機関や連携についての調査は初年度目標を達成できた。ア症の早期発見・早期治療については、地域や職域での教育プログラムを作成した。ア症に対する簡易介入の研究では、調査票の作成が完成して、既に調査を開始しており、初年度の目標は達成できた。次年度以降も調査を継続してデータを蓄積していく。ア症の診断・治療ガイドライン作成については、初年度の目標である文献のレビューを行ったため、これをもとにして次年度以降具体的なガイドライン作成に着手していきたい。
結論
ア症に関する総合的な医療の提供に関する研究について、その目的や方法、今年度の進捗状況について述べた。次年度に向けてさらに研究を深め、本研究で得られた知見が、アルコール健康障害対策基本法の実施計画策定の際にエビデンスに基づいた情報を提供し、ア症の治療や社会復帰の向上、かつ家族の理解や対応力の向上に寄与することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419046Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,000,000円
(2)補助金確定額
20,374,403円
差引額 [(1)-(2)]
625,597円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,195,232円
人件費・謝金 382,200円
旅費 1,892,032円
その他 5,058,939円
間接経費 4,846,000円
合計 20,374,403円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
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