学際的・国際的アプローチによる自殺総合対策の新たな政策展開に関する研究

文献情報

文献番号
201419043A
報告書区分
総括
研究課題名
学際的・国際的アプローチによる自殺総合対策の新たな政策展開に関する研究
課題番号
H26-精神-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
本橋 豊(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 椿広計(統計数理研究所)
  • 清水康之(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)
  • 伊藤弘人(国立精神・神経医療センター・精神保健研究所)
  • 澤田康幸(東京大学大学院経済学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
14,247,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有することに鑑み、保健医療のみならず他部門との連携の在り方を含めた学術的基盤を学際的・国際的観点から強化し、国際的動向を注視しつつわが国の自殺総合対策のさらなる推進に資することが目的である。自殺対策の科学的エビデンスをもとに実効ある政策へと速やかに繋げるための政策形成プロセスにについて明らかにし、「知と行動の統合」による実効ある自殺総合対策の政策形成を可能にする学術研究を実現する。 
研究方法
(Ⅰ)自殺総合対策の新たな政策展開に関する研究:(1)認知症と自殺対策に関する実証的研究:秋田県N市の65歳以上85歳未満の高齢者340人を対象に質問し調査を行った。認知機能の低下及び認知症に対する不安が精神的苦痛に及ぼす影響を検討した。(2)認知症高齢者と介護者の自殺企図についての調査研究:地域の基幹病院で受診した患者を対象に認知症患者の自殺企図行動の有病率を明らかにした。(3)自殺の時空間変動とその要因に関する統計的検討:自殺率と人口・経済統計資料等をリンケージしたデータを基に、日本の自殺データの地域特徴と年次推移、近年の自殺率減少に関連する要因に関する分析を行った。(Ⅱ)学際的な自殺対策の推進に関する研究:(4)経済問題から見た学際的自殺対策研究の推進:OECD26カ国の保険金支払い免責期間の独自調査と国別国際比較可能データを用いて自殺率と生命保険支払い免責期間の関係を分析した。また、鉄道会社から提供された駅における自殺件数の10年分データを用いて青色灯設置による自殺抑止効果について検証を行った。(5)死因究明制度に関する文献的研究:諸外国の死因究明制度を文献的に調査し、実情と課題、日本における政策展開の可能性について調べた。(Ⅲ)国際的動向を踏まえた自殺対策の推進に関する研究:(6)精神保健政策の国際動向からみた自殺対策の展開:WHOおよびOECDの自殺対策・メンタルヘルス対策の最新動向をヒアリングにより聴取し、課題と方向性を検討した。(7)国際的動向を踏まえた学術的基盤を強化する研究~米国の保健医療政策の動向から見た自殺対策の方向性~:米国の自殺対策の最新動向と自殺政策の在り方について面談調査を行った。(Ⅳ)自殺総合対策の検証・提言に関する研究:市民公開シンポジウム、自殺対策改革ラウンドテーブルにおいて、学際的観点から自殺総合対策の検証と今後の自殺総合対策の方向性に関する討議を行った。
結果と考察
(Ⅰ)自殺総合対策の新たな政策展開に関する研究 (1)認知症に対する不安があると回答した者は37.9%であった。精神的苦痛ありの調整オッズ比は認知機能低下群3.29(95%信頼区間1.18-9.15)、認知症に対する不安あり群2.50(95%信頼区間1.16-5.40)であった。(2)認知症高齢者と介護者の自殺企図についての調査研究:認知症と診断のついた患者は759名であり、このうち自殺企図によると考えられる傷病を有する患者は認知症患者で1名(0.13%)、認知症の無い患者で1名(0.42%)だった。(3)自殺の時空間変動とその要因に関する統計的検討:地域自殺対策を検討し,その効果評価に資するデータ基盤整備を進め、データ構造のニーズやモデリングの問題点などを明らかにした。(Ⅱ)学際的な自殺対策の推進に関する研究:(4)経済問題から見た学際的自殺対策研究の推進:保険契約は市場の失敗を通じて自殺を誘発する可能性があること、ホームドア設置・青色灯の設置が鉄道自殺を有意に低下させた。(5)死因究明制度の改善へ向けた文献的研究:オーストラリアでは死因のデータベース化により避けられる死の予防のための詳細な分析が行われ施策に反映されていることが明らかになった。(Ⅲ)国際的動向を踏まえた自殺対策の推進に関する研究 (6)精神保健政策の国際動向からみた自殺対策の展開:WHOの自殺予防対策のガイドライン、OECDは2014年6月に精神保健政策の報告書を精査し、自殺予防対策は地域での蓄積や資源を総動員してハイリスク者へいかに丁寧な支援を構築するかが問われていることが明らかになった。(7)国際的動向を踏まえた学術的基盤を強化する研究~米国の保健医療政策の動向から見た自殺対策の方向性~:米国ではinjury controlの枠組みの中での自殺対策が重要視されていた。アメリカの自殺対策の法律の成立において、特定の利益団体の政治的意見が強く反映される傾向が認められた。
結論
学際的・国際的研究により緊密な多分野連携による成果の情報共有が行われた。現場の実践の智恵を取り込みながら当事者参加を重視して自殺対策の政策形成に繋げる工夫が必要であり、欧米の政策決定過程を参考にしつつ、学際的連携を推進していくことが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-08-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419043Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,520,000円
(2)補助金確定額
18,520,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,218,979円
人件費・謝金 1,700,691円
旅費 3,451,770円
その他 4,246,405円
間接経費 4,273,000円
合計 16,890,845円

備考

備考
初年度のため、事務局人件費が9ヶ月分のため少なかったこと、及び消耗品支出が少なかったため、差異が出た。

公開日・更新日

公開日
2015-08-20
更新日
-