精神障害者の就労移行を促進するための研究

文献情報

文献番号
201419042A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の就労移行を促進するための研究
課題番号
H26-精神-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 剛(NTT東日本関東病院 精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 良雄(メディカルケア 虎ノ門)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院 医学系研究科 精神医学)
  • 酒井 佳永(跡見学園女子大学 文学部 臨床心理学科)
  • 中村 純(産業医科大学  医学部 精神医学)
  • 伊藤 順一郎(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部)
  • 後藤 隆(日本社会事業大学 社会福祉学部   福祉計画学科   社会調査法)
  • 山内 慶太(慶應義塾大学看護医療学部大学院健康マネジメント研究科 精神医学 医療マネジメント)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神障害者の就労・復職支援の方法を確立することは、精神障害者の生活の質の改善、社会の生産性の向上のために欠かせない。
本研究は、精神障害者の就労移行状況における課題の把握(中小企業との連携強化方法の提示、地域における諸機関との連携の標準化、疾病・服薬の運転技能への影響の検討、文献レビュー、再発状況の把握、短期間のリワークプログラムモデルの開発)、うつ病患者をふくむ精神障害者に対する復職体制の構築(リワークプログラム利用群の長期予後、リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究、リワークマニュアルの有効性の検証、リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究、リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化、発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化)、精神障害の就労支援(医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討)、就労する精神障害者等の企業内支援のあり方と支援者育成(職場で支援を行うための人材養成の在り方の検討)を目的とする。
研究方法
課題ごとの方法については、研究報告書に詳述した。
結果と考察
中小企業との連携強化方法の提示については、①中小企業において社員研修会等で使用できる一次予防スライドの作成、②復職時の伝達項目の整理、③復職後のフォローアップツールの改訂を行った。地域における諸機関との連携の標準化については、①他の医療機関との連携が進んでいる実態の把握、②事業場との連携から高度な情報提供が求められている傾向の把握、③事例対応の困難度に関連する要因の分析、④業務量・人件費の試算を行った。疾病・服薬の運転技能への影響の検討では、社会復帰準備期にあるうつ病患者では、残遺するうつ症状や認知機能障害があっても、運転技能については健常対照群と同等の水準であることを確認した。文献レビューについては、アルゴリズムを確定し、世界におけるリワーク支援の研究の知見を系統的に明らかにする。再発状況の把握については、再発時のストレス状況、上司の対応を把握するシートを作成し、再発状況に関する知見を明らかにする。リワークプログラム利用群の長期予後についは、復職後平均4.8年、中央値3.3年継続して就労できること、教育歴や職位が就労継続に影響すること、復職後の就労中断は、そのおよそ半数が復職から1年以内に生じることが明らかにされた。リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究では、リワークプログラム利用者の就労継続性は有意に良好であり、リワークプログラムの再休職予防の効果が示唆された。また、復職後1年間に再休職・失職により発生する社会的コストを推計した結果、リワークプログラムは、社会的コストの削減につながっていた。短期間のリワークプログラムモデルの開発については、短期リワークプログラムが1年間の復職継続率を高める可能性が示された。リワーク指導マニュアルのRCTでは、リワークマニュアルの改訂、リワークマニュアルの有効性を検証するための研究プロトコルの作成が行われた。リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究については、研修事業内の概要・研修項目がまとめられ、内部評価項目の検討が開始された。リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化については、53施設で行われている111の独自性が高いプログラムについて分析を行った。発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化については、リワークプログラムにおいて原則とするべき方針、発達障害の観点から望ましいと考えられる助言がまとめられた。医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討については、参加機関が一般就労を目指す援助付雇用としての水準を満たしていることが確認された。職場で支援を行うための人材養成の在り方の検討については、「社会性」「他者性」の検討、障害特性と企業における実際のタスクの分析のマッチングの必要性の把握が行われた。
結論
本研究は、今年度、ほぼ予定された成果をおさめることができた。来年度は、各課題をさらに進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201419042Z