精神保健医療制度に関する法制度の国際比較調査研究

文献情報

文献番号
201419038A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療制度に関する法制度の国際比較調査研究
課題番号
H25-精神-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山本 輝之(成城大学 法学部)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐禎人(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,585,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成25年の精神保健福祉法の改正より保護者制度が廃止され、それに伴って医療保護入院の要件から保護者の同意を削除し、それに代わって「その家族のうちのいずれかの者の同意」を要件とすることに改められた。しかし、このような改正に対しては、①精神障害者の家族の負担を軽減することが保護者制度を廃止する大きな理由であったにもかかわらず、今回の改正はそれを解消することにはならない、②保護者制度の廃止の基礎には、地域精神医療の推進という目的があったにもかかわらず、今回の改正は依然として家族を精神障害者に対する医療とケアの責任者とする思想を維持するものであり、地域精神医療の充実を図るということの阻害となる等の問題点が指摘されている。そこで、本研究は、諸外国における、①精神医療に関する法制度の概要、②入院形態、③入退院の手続き、④精神障害者の人権を擁護するための制度、および⑤精神障害者の医療とケアにおける家族の役割等を中心に調査を行い、それらの検討の成果を踏まえて、わが国の精神保健福祉法制度の新たな構築に向けて現実的で実現可能な具体的な提言を行うことを目的とする。
研究方法
 研究1年目である平成25年度は、①アメリカ(カリフォルニア州、ニューヨーク州)、②フランス、③イギリス、④韓国について、また、平成26年度は、⑤ドイツ(バイエルン州を中心に)、⑥カナダ(アルバータ州カルガリー、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)について、訪問調査を行った。その際、1)「共通調査項目」、2)「仮想事例1、2」を作成し、各国語に翻訳し、事前に各国の調査先に送付し、精神医学関係者と法学者で構成する調査班を各国に派遣し、法執行機関、精神科病院等を訪問していただき、それぞれの担当者に対し、1)、2)に基づいて各国の法制度とその実際の運用についてインタビューを行った。その後、研究代表者、分担研究者、研究協力者で組織した研究会を開催し、各国の調査責任者を中心に調査結果を報告していただき、その内容について詳細な分析・検討を行った。
結果と考察
 これまでの調査により得られた成果の概要としては、調査の対象とした多くの国において、①自発入院と非自発入院の2つの入院形態を採用しており、わが国における医療保護入院に要件に当たるようなケースは、非自発入院の対象としていること、②非自発入院の決定については、裁判所あるいは行政機関の審査を要件としていること、③精神障害者の医療とケアにおける家族の役割については、入院患者の意見を代弁する等のアドボケートの役割が求められていること等が分かった。これらの調査結果とわが国の法制度及びその実際の運用状況などと比較検討することにより、多くの重要な成果を得ることができた。
結論
 研究最終年度である、平成27年度は、さらに、⑦イタリア、⑧オーストラリア、⑨台湾について、以上と同様の調査を行う予定である。そのうえで、研究代表者、分担研究者、研究協力者で組織する研究会を開催し、調査結果を詳細に分析・検討し、その成果を踏まえてわが国の精神保健福祉法制度の新たな構築に向けて現実的で実現可能な具体的な提言を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419038Z