精神障害者の重症度判定及び重症患者の治療体制等に関する研究

文献情報

文献番号
201419037A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の重症度判定及び重症患者の治療体制等に関する研究
課題番号
H25-精神-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
安西 信雄(帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 河崎 建人(公益社団法人日本精神科病院協会)
  • 平田 豊明(千葉県精神科医療センター)
  • 吉邨 善孝(済生会横浜市東部病院)
  • 村上  優(独立行政法人国立病院機構 榊原病院)
  • 平林 直次(国立精神・神経医療研究センター)
  • 藤井 康男(山梨県立北病院)
  • 萱間 真美(聖路加国際大学)
  • 井上 新平(高知大学)
  • 堀口 寿広(国立精神・神経医療研究センター)
  • 立森 久照(国立精神・神経医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
17,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24年6月の精神科医療の機能分化と質の向上に関する検討会で、「精神科の入院患者は『重度かつ慢性』を除き1年で退院させ、入院外治療へ移行させる仕組みを検討する」との方針がまとめられ、「重度かつ慢性」の基準については、調査研究等を通じて明確化していくこととされた。本研究は上記の方針に沿い、「重度かつ慢性」の基準と必要な治療体制・治療指針を明らかにすることを目的に実施している。
 平成26年度は平成25年度に作成した暫定基準案を骨格とする調査票を作成し、急性期群500人、亜急性期群700~1000人を目標に新規入院患者を登録し、入院後1年までの前向きフォローアップ調査を開始することを目的に本研究を実施した。
研究方法
日本精神科病院協会、自治体病院協議会、精神病床を有する国立病院、総合病院精神医学会および医療観察法関係団体の協力を得て、全国の精神科病院に協力を依頼し、精神科救急病棟への入院時点から評価を実施する群(以下「急性期群」)と、入院後3ヵ月を超えて入院している患者群(以下「亜急性期群」)の2群の登録と入院後1年までの評価を依頼した。患者選択が恣意的にならないよう、平成26年10月1日以降の新入院患者について、急性期群では最初から10人まで、亜急性期群では5人まで、連続的に登録するよう依頼した。
評価については、暫定基準案をもとに作成した調査票(患者状態評定、医療プロセス評定等)を用い、急性期群では入院時および3ヵ月在院時(それまでに退院した場合は退院時)に実施し、亜急性期群では3ヵ月および1年在院時(それまでに退院した場合は退院時)に評価を行うこと、急性期群では入院1年後に転帰調査を実施することとした。
結果と考察
平成26年10月から患者登録を開始し、急性期群は524人(56病院)、亜急性期群742人(212病院)の新規入院患者が登録され、登録患者数の目標は達成された。急性期群と亜急性期群のプロフィールを予備的に検討した。また急性期群524人のうち、入院後3ヶ月までに地域に退院した286人と残留患者20人の入院時および3ヶ月時点の精神症状を比較して両者の差違を検討した。
現時点で急性期群登録患者524人のうち、3ヶ月時点の転帰が報告されているのは369人(70.4%)であり、まだ約30%の患者について未回答であるが、退院転帰をめぐって予備的検討を行った。急性期群のうち、入院後3ヶ月までに退院した患者(退院群)と入院を継続している患者(入院継続群)を比較すると、診断は、入院継続群では統合失調症圏患者(49人, 77.8%)が退院群(143人, 46.7%)より有意に多く(p<0.01 Chi-square)、入院継続群では気分障害患者(8人, 12.7%)は退院群(91人, 29.7%)より有意に少なかった(p<0.01 同)[図表77]。入院時の精神症状(BPRS)の評価では、入院継続群の方が退院群より、概念の統合障害、幻覚による行動などで有意に高く(p<0.01 同)、問題行動では、入院継続群は退院群と比べて、自殺念慮と自傷行為が有意に低く(p<0.01 同)、徘徊や多動・行動の停止で有意に高かった(p<0.05)。
結論
以上のように、今年度の研究で急性期群524人、亜急性期群742人の登録が出来、現在入院後1年までの前向き追跡調査を実施中である。このように目標数の患者が登録できたので、追跡調査を予定通り進めることにより、平成27年度研究において「患者の状態評定」(精神症状、行動・障害等)、「医療プロセス」(クロザピンを含む薬物療法、m-ECTや地域ケア・心理社会的治療等)と「アウトカム」との関連を検討し、「重度かつ慢性」の基準を精密化し、これらの患者に対する治療体制と治療指針を検討する予定である。
なお、各分担研究班は、それぞれの関連領域での調査研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419037Z