青年期・成人期発達障がいの対応困難ケースへの危機介入と治療・支援に関する研究

文献情報

文献番号
201419034A
報告書区分
総括
研究課題名
青年期・成人期発達障がいの対応困難ケースへの危機介入と治療・支援に関する研究
課題番号
H25-精神-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(福島大学 人間発達文化学類)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 善郎(和歌山県精神保健福祉センター)
  • 近藤 直司(大正大学 人間学部臨床心理学科)
  • 桝屋 二郎(福島大学 子どものメンタルヘルス支援事業推進室)
  • 市川 宏伸(東京都立小児総合医療センター)
  • 黒田 安計(さいたま市保健福祉局 保健部)
  • 安藤 久美子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 水藤 昌彦(山口県立大学 社会福祉学部)
  • 堀江 まゆみ(白梅学園大学 子ども学部)
  • 太田 達也(慶應義塾大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
13,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
青年期・成人期発達障害の対応困難ケース、とりわけ引きこもりや触法行為,緊急入院が必要なほどの問題行動、自殺関連行動のような深刻な問題を有する発達障害事例への社会的関心が高まり、専門的な支援による予防可能性の検討が喫緊の課題になっている。本研究班では自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder,以下ASD)および注意欠如多動性障害(ADHD)の青年・成人を対象に、精神保健福祉機関や医療機関などで対応困難事例がどの程度存在するのか、換言すれば特別に支援を必要としている事例がどの程度存在するかを把握し、どのような支援があれば対応困難事例を予防できるのか、再犯防止のためにはどのようなシステムが必要なのかを検討する。
研究方法
研究は以下の3つのテーマにわけ、主として自閉症スペクトラムの青年・成人を対象に行う。
①児童福祉・地域保健・精神保健福祉分野における予防と介入方法の検討
(専門家のヒアリング・アンケート、医療・矯正・福祉機関等におけるカルテ調査・アンケート調査、事例面接等)
②児童・思春期精神科、医療観察法対象者、矯正施設における治療方法の検討
(発達障害に特化したリスクアセスメントツールの開発、支援上の問題点の解明と改善点の検討)
③諸外国での対応困難ケースへの支援状況の調査・研究
(アセスメント方法、支援方法、支援システム等の調査、日本の実情に適したアセスメントツールや支援手法、研修手法の開発と支援システムの提案)
結果と考察
 二年間の研究調査によって福祉機関、病院、精神保健機関等の触法発達障害者を支援する多様な支援機関において支援が必要な対応困難事例がどの程度存在するかの概数を把握できた。児童養護施設、児童自立支援施設、情緒障害児短期治療施設、少年院における調査で発達障害児の割合が3割以上になることや医師など専門家の役割、事例の困難点を明らかにした。また、発達特性(ASD特性やADHD特性)及びひきこもりや触法行為などの社会行動面の課題を持つ事例の頻度や年間新規相談発生例についても推定値が得られた。精神科診療所対する全国調査から発達障害の対応困難な事例は8割もの施設で認められ、一般の成人精神科診療についても発達障害事例を支援することの重要性が示唆された。特別支援学校等教員へのヒアリング調査では、すべての学校で対応困難な発達障害の生徒が複数存在し、暴力・窃盗、性非行等であることが明らかになった。各領域において対応困難事例の特徴や専門家の果たす役割、支援システムの問題点などを事例検討やヒアリングなどにより検討できた。また、発達障害のある児・者を対象とした「問題行動の予防的介入アセスメントツール@PIP33 」を作成し、さらに性犯罪者に特化したリスクアセスメントツール「ARMIDILO-S」の日本版を完成した。今後、医療・保健・福祉・教育・矯正機関などでリスクのある児・者に対して触法・非行リスク等について適切に情報共有を行い、早期の予防的介入が行えるようになる可能性が高まった。今後CRAFT, SOTOSEC-ID, 弁証法的行動療法などの支援方法の国内研修プログラムを作成する。海外の支援システム調査からは、触法発達障害者への対応に特化した事業者の存在、大学等における短期集中研修が効果があること、発達障害者の意思決定支援に方法について重要な情報がえられ、自閉症スペクトラムに特化した保安病棟調査からは構造化や行動療法、コミュニケーション療法、弁証的行動療法など複数の支援手段を組み合わせることで触法発達障害者の症状が安定することがわかり、その一部は我が国でも応用可能である。これらの知見を活用し、自閉症スペクトラムやADHDなどの発達障害の児・者の引きこもりや触法行為,自殺と自殺関連行動を予防し、当事者と家族や支援者のQOLの向上とともに、罪を犯した発達障害の青年・成人の再犯を予防し、日本をより安全な社会に変えていくことを目指す。
結論
医療・保健・矯正・福祉・教育等の多様な領域における疫学調査の実施は国内では初めての試みであり、発達障害の犯罪等を予防することや専門家養成の施策を行うための基礎的資料として貴重である。海外調査により日本でも導入可能な支援方法や支援システムがあることが明らかになり、その情報を参考に@PIP33などを活用した情報共有や発達障害に特化した研修プログラムを実行する準備ができた。異なる領域の専門家が協力して領域横断的に活用可能な支援ガイドラインと支援プログラムのパッケージを提案し、人材育成と専門家の技術向上を図る。また、海外の支援手法やシステムを参考にしつつ領域を超えたネットワーク型の多領域の専門機関が協力して行う支援システムの提案を行い、直接・間接に施策や関係法規の改正などに反映されるようにする。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,000,000円
(2)補助金確定額
17,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,156,044円
人件費・謝金 2,647,978円
旅費 5,633,868円
その他 3,639,110円
間接経費 3,923,000円
合計 17,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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