専門的医療の普及の方策及び資質向上策を含めた医療観察法の効果的な運用に関する研究

文献情報

文献番号
201419028A
報告書区分
総括
研究課題名
専門的医療の普及の方策及び資質向上策を含めた医療観察法の効果的な運用に関する研究
課題番号
H24-精神-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 三澤孝夫(国際医療福祉大学)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構花巻病院)
  • 角野文彦(滋賀県健康医療福祉部健康福祉政策課)
  • 松原三郎(社会医療法人財団松原愛育会松原病院)
  • 山本輝之(成城大学法学部)
  • 椎名明大(千葉大学医学部附属病院こどものこころ診療部)
  • 五十嵐禎人(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療観察法に関わる人材の確保方法から育成方法、さらに鑑定入院医療及び指定通院医療、地域処遇という対象者のステージ移行に伴う医療や支援体制における現状と課題、そして司法精神医療に関わる法的問題について明らかとすることが本研究の目的である。今年度は3年目で最終年度であった。
研究方法
①医療観察法医療に携わる人材の確保と地域特性を踏まえた専門家の育成に関する研究として、全国十数か所の指定入院医療機関や指定通院医療機関などを結んでWeb会議を行った。また、司法精神医療に関わる人材を長期的な視点から確保するために一般人への司法精神医療をテーマとしたセミナーなどを実施し、一般人の司法精神医療への関心、理解に関するアンケート調査を行った。②精神保健判定医の質の担保に関する研究として、精神保健判定医等養成研修会における仮想事例やグループディスカッションの導入及び仮想事例のケースブックの有用性について調査した。③今年度のみの研究だが、鑑定入院制度のモニタリングに関する研究として、鑑定入院医療機関の実態調査を調査票を用いて行った。④司法精神医療における退院調整・社会復帰援助を行う関係機関職員の支援と研修方法の開発に関する研究として、医療観察体制での退院調整・社会復帰援助を行う関係機関職員の確保と質の向上のためのツール開発及び有効な研修会の内容について検討した。⑤指定通院医療機関の治療機能の向上と多職種・多機関の連携を効果的に行う方策に関する研究として、鑑定入院制度のモニタリングに関する研究入院処遇から通院処遇へ移行の実態に関する調査を行った。⑥司法精神医療における行政機関の役割に関する研究に関しては、全国の494保健所に対して自記式質問紙法による郵送留置き調査を実施して経年変化をみるとともに、新たな課題について調査した。⑦地域における処遇を含めた医療観察法制度に対する法学的視点からの研究として、医療観察法に関連する最高裁判所の判例について調査した。
結果と考察
①全国十数か所の指定入院医療機関や指定通院医療機関などを結んで行われたWeb会議ではクロザピンを使用できる指定通院医療機関の増加や身体合併症対策が必要であることが明らかとなった。また、司法精神医療に関わる人材を長期的な視点から確保するために一般人への司法精神医療をテーマとしたセミナーなどを実施して一般人の司法精神医療への関心、理解を高めることが重要であることが指摘された。②精神保健判定医等養成研修会は仮想事例やグループディスカッションの導入により極めて有用な研修会となっていた。また作成した仮想事例のケースブックも既に判定医になっている者に対して有用であった。さらに物質使用障害者の鑑定・審判についての道筋が提示された。③鑑定入院制度のモニタリングに関する研究から鑑定入院医療機関の職員に対する研修・教育体制の整備の必要性が提起された。④医療観察体制での退院調整・社会復帰援助を行う関係機関職員の確保と質の向上のためのツール開発及び有効な研修会の内容について検討され、上級者のための研修会も企画された。入院処遇から通院処遇へ移行する際には、入院機関、通院機関、社会復帰調整官との情報共有が重要であり、通院へ移行したあとも多職種チームが手厚く守ることが大切であることが明らかとなり、ガイドラインの改正も必要であることが指摘された。⑤保健所などの地域の行政機関が対応することになる事例は1200を超えるまで増加していたが、マンパワー不足で支援スキルの質の維持も困難であることが改めて明らかとなった。体制整備は必須である。⑥最高裁判所の判例で医療観察法における法的問題も示され、運用面での改善や法改正の必要があることが指摘された。
結論
本研究において、医療観察法の各ステージにおいて専門家の資質向上や効果的な運用に関する研究がなされ、課題が提起されるとともに具体的な対策とその導入によって効果があることも検証されてきていることが示された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201419028B
報告書区分
総合
研究課題名
専門的医療の普及の方策及び資質向上策を含めた医療観察法の効果的な運用に関する研究
課題番号
H24-精神-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 三澤孝夫(国際医療福祉大学)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構花巻病院)
  • 角野文彦(滋賀県健康医療福祉部健康福祉政策課)
  • 松原三郎(社会医療法人財団松原愛育会松原病院)
  • 山本輝之(成城大学法学部)
  • 椎名明大(千葉大学医学部附属病院こどものこころ診療部)
  • 五十嵐禎人(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療観察法に関わる人材の確保方法から育成方法、さらに鑑定入院医療及び指定通院医療、地域処遇という対象者のステージ移行に伴う医療や支援体制における現状と課題、司法精神医療に関わる法的問題について明らかとすることが本研究の目的である。
研究方法
①医療観察法医療に携わる人材の確保と地域特性を踏まえた専門家の育成として、全国の関係機関を結ぶWeb会議、司法精神医学に関する知識やモチベーションの向上を図るための方法論確立のための実証研究、一般人への司法精神医療への理解に関する調査を行った。②精神保健判定医の質の担保に関する研究として、模擬事例を用いた受講者参加型研修会(ワークショップ形式の導入)や事例集の作成とその有用性について検討した。④司法精神医療における退院調整・社会復帰援助を行う関係機関職員の支援と研修方法の開発に関する研究として、医療観察法おける実務者養成研修会では英国での研修を参考に企画・開催し、実務に有用な各種ツールや教材を作成することを計画した。③最終年度のみの研究だが、鑑定入院制度のモニタリングに関する研究として、鑑定入院医療機関の実態調査を調査票を用いて行った。⑤指定通院医療機関の治療機能の向上と多職種・多機関の連携を効果的に行う方策に関する研究として、通院処遇の事例検討や通院医療機関による研究会を開催し、指定通院医療の実態と課題について検討した。⑥司法精神医療における行政機関の役割に関する研究に関しては、全国の保健所に対して自記式質問紙法による郵送留置き調査を実施して経年変化をみるとともに、新たな課題について調査した。⑦地域における処遇を含めた医療観察法制度に対する法学的視点からの研究として、処遇困難な対象者の通院の問題や精神科救急と移送制度の整備の問題等について、また地域処遇における多職種間での対象者に関する情報共有に関する法的問題点について、最高裁判所の判例について検討した。
結果と考察
①司法精神医療に関するセミナーは一般人の啓発に有効であり、若手精神科医には様々な医療場面での関わりを示す研修が有効であることが示唆された。またWeb会議は医療レベルの地域格差是正に有用と思われた。②模擬事例を用いた受講者参加型研修会や事例集は精神保健判定医の質の向上に寄与することが明らかとなった。③医療観察法おける実務者養成研修会では英国での研修を参考に企画・開催し、実務に有用な各種ツールや教材を作成した。④鑑定入院医療機関の職員に対する研修・教育体制の構築が必要であることが示唆された。⑤通院処遇では病状悪化早期の精神保健福祉法上での入院を利用することで入院期間短縮や順調な通院医療、自殺予防に重要な役割を担っていた。⑥保健所の事例数は増加しており、マンパワー不足や支援スキルの質の維持の困難さなどから地域支援者の不安が高くなっていることが明らかとなり、また家族による支援が負担になっていることが示唆された。⑦通院処遇や地域処遇における体制整備や情報の取り扱い、医療観察法における法的課題が示され、地域の保健・医療体制を整備・充実させることが不可欠であり、また最高裁判所の判例に基づき医療観察法の運用面や法改正についての検討が必要であることが指摘された。
結論
医療観察法を含む司法精神医療・保健に携わる人材の確保や資質の向上に関する対策が検討され、具体的に実施もされてきた。その結果、本研究は医療観察法の効果的な運用に貢献してきたと考えられる。しかし、依然としていくつもの課題が提起されており、今後も検討していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201419028C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療観察法導入の我が国の日常精神科臨床への影響について調べ、特に多職種チームによる医療の広がりに影響があることをAnn Gen Psychiatryに報告した。また医療観察法における鑑定入院での評価項目について専門家への調査を繰り返し行うこと(デルファイ調査)により確立しInt J Ment Health Syst.に報告した。これまで司法精神医療保健的な問題の国際学術雑誌への掲載は稀であったが本研究を通して、世界に我が国の司法精神医療保健に関わる学術的報告が促進されると考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究では判定医研修等への仮想事例への導入やワークショップ方式の導入を促し、その成果について検討した。その結果、判定医の質の向上に役立っていることが明らかとなり、これは司法精神保健の臨床に大きく貢献するものと考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究でガイドラインは開発していない。しかし、対象者用・多職種チーム用の「クライシスプラン」作成マニュアル、医療観察法審判ハンドブック、心神喪失者等医療観察制度ハンドブック、を作成及び改訂を行った。これらは多職種チームや保健所等で有用であることが示されており、医療観察法の運用に貢献していると考えられる。
その他行政的観点からの成果
医療観察法における判定医研修会に仮想事例を提供したり、退院調整・社会復帰援助者のための研修会に資料を提供し、それらの研修会の運営に貢献した。
その他のインパクト
統合失調症患者に長期に亘る抗精神病治療によって生じ、再発しやすさの増強や重症化、治療抵抗化に関係するドパミン過感受性精神病に関するシンポジウムを平成24年10月21日千葉市幕張で開催した。この疾患は医療観察法における対象者や長期入院患者に多くみられるものである。翌年その記録集(過感受性精神病、星和書店H25)を出版。全国へのドパミン過感受性精神病の概念とその予防・治療の普及・啓発に寄与した。これは我が国における統合失調症治療に大きく影響するものであり、精神保健福祉上大きく貢献すると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Akihiro Shiina, Masaomi Iyo, Yoshito Igarashi
Defining outcome measures of hospitalization for assessment in the Japanese forensic mental health scheme
a Delphi study.International Journal of Mental Health Systems2015 , 9 (7)  (2015)
原著論文2
Akihiro Shiina, Masaomi Iyo, Akira Yoshizumi etal.
Recognition of change in the reform of forensic mental health by clinical practitioners
a questionnaire survey in Japan.Annals of General Psychiatry2014 , 13 (9)  (2014)
原著論文3
Akihiro Shiina, Masaomi Iyo, Toyoaki Hirata,etal.
Audit study of the new hospitalization for assessment scheme for forensic mental health in japan
World Journal of Psychiatry , in press  (2015)
原著論文4
Akihiro Shiina, Kyoji Okita, Mihisa Fujisaki, Yoshito Igarashi, Masaomi Iyo
No change of attitude toward forensic psychiatry: 5 years after the Medical Treatment and Supervision Act in Japan
Open Journal of Psychiatry , 2013 (3) , 203-205  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2019-08-28

収支報告書

文献番号
201419028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,400,000円
(2)補助金確定額
6,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,428,876円
人件費・謝金 1,065,774円
旅費 644,625円
その他 1,784,833円
間接経費 1,476,000円
合計 6,400,108円

備考

備考
預金口座利息の発生による差異

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-