生検材料による神経・筋疾患等の成因解明と治療に関する研究

文献情報

文献番号
199800376A
報告書区分
総括
研究課題名
生検材料による神経・筋疾患等の成因解明と治療に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
埜中 征哉(国立精神・神経センター武蔵病院)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本和季(国立療養所道北病院)
  • 石川幸達(国立療養所八雲病院)
  • 木村格(国立療養所山形病院)
  • 石原傳幸(国立療養所東埼玉病院)
  • 宮内潤(国立小児病院)
  • 斎田孝彦(国立療養所宇多野病院)
  • 高橋桂一(国立療養所兵庫中央病院)
  • 澁谷統壽(国立療養所川棚病院)
  • 岩崎祐三(国立療養所宮城病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 脳科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経・筋疾患を中心とする神経難病の病因解明には研究の対象をなる検体が必
要である。例えば生検筋を凍結保存しておけば病理、生化学的研究だけでなく、DNA、RNA
レベルでの研究、in situ hybridizationでの研究が推進できる。そのような研究資源を
大切に保存(バンク化)し、さらにそれを全世界の研究者に情報公開、供与することは研
究を進める上で極めて重要である。検体には患者情報が附加されることもあるので、倫理
的問題が常につきまとう。以上のことを解決し、さらに研究者に検体を供与することを本
研究の目的とした。
研究方法
まず筋生検、DNA診断などが日常的に行われている国立病院、療養所10カ所
を選び、次の4項目について検討を開始、実施した。・生検筋等のバンクシステムの樹立、
・バンク公開のためのデータベース作成、・診断、検体保存に燗する承諾書の使用、・検
体供与に関するルール作り
結果と考察
・生検筋等のバンクシステムの樹立
神経・筋疾患の診断の際、生検された骨格筋、培養細胞、血液から分離したDNAを -
80℃のディープフリーザー内で保管し、バンク化することをスタートした。国立精神・神
経センターが中心となり、約1,200件の検体をバンク入りさせた。バンク入りさせるため
には正しい診断を下すことが大前提で生検材料には色々な組織化学、免疫組織化学染色、
DNA解析が行われた。また生検筋、皮膚の培養細胞も次々とバンク入りしている。
・バンク公開のためのデータベース作成
バンク内の検体は広く研究用に供さなければバンク樹立の意味がない。その内容を公開
するためのデータベース作成を開始し、606検体がすでに登録された。検体の種類、最終
診断名、供与可能検体、最小限の患者情報(年齢、性別)を入力する様式を作成し、Hospnet
を通じての公開システムが確立され、運用されている。
・倫理問題の検討
DNA診断のみならず病理学的診断に関わる倫理問題、また検体保存に関する倫理問題を法
律家(矢島上智大学助教授)とともに検討した。診断に関する承諾書(表1)とそれを補
充する役目をはたす患者への説明のガイドラインを作成し、平成10年度より運用開始し
た。現在までその様式は広く利用され、承諾のあるもののみがHospnetを通じて登録され
ている。
初年度からバンクシステムの樹立がほぼ完成し、多数の検体がネットワーク化し、登録
を開始したことは大きな成果であった。いよいよ本研究班の研究は軌道に乗るようになっ
た。
本研究班の最大の成果は倫理面での問題をほぼクリアしたことである。倫理面をクリアし、
患者からの承諾書が得られたもののみで登録されている。本研究班で倫理問題に真剣に取
り組み、本年度からバンク登録の運用が開始されたことは高く評価される。
結論
本研究班では研究方法に記載した4大目標を進めるため、精力的な研究を行った。
初期の目標はほぼ達成され、今後数多くの検体が保存され、バンク用検体は研究資源とし
てスムースに活用される研究基盤が完成した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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