認知症非薬物療法の普及促進による介護負担の軽減を目指した地域包括的ケア研究

文献情報

文献番号
201418010A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症非薬物療法の普及促進による介護負担の軽減を目指した地域包括的ケア研究
課題番号
H25-認知症-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鳥羽 研二(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 朝田 隆(筑波大学医学医療系)
  • 山口 晴保(群馬大学大学院保健学研究科)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部 高齢医学)
  • 秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院 老年病科)
  • 梅垣 宏行(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 松林 公蔵(京都大学 東南アジア研究所)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 東 憲太郎(三重県老人保健施設協会)
  • 鷲見 幸彦(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 櫻井 孝(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 服部 英幸(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,625,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症の生活機能評価、BPSD、ADL障害などへの対応マニュアルを作成報告してきた。対応マニュアルの骨格となるのは、薬物療法の功罪を含めた見直しと、非薬物療法の家庭への普及であるが、非薬物療法のエビデンスの研究は不十分であり、対応マニュアルの科学性の質を担保するため、非薬物療法の研究と包括的ケアへの効果判定は同時進行して行う必要がある。これらを家族教室などの住民啓発、地域包括、訪問看護、デイケア、認知症外来などで活用して、実効性を縦断的に検証し、国家的な対策として提言を行うこと。
研究方法
1)予防的側面(予防と早期のアドバイス手技に資する研究)、2)早期発見方法の確立、3)初期対応方法の確立、4)非薬物療法のテーラーメイド医療のノウハウの調査、5)認知症の身体疾患の管理に関する研究、6)認知症の新しい介護負担指標の確立と応用に関する研究、7)認知症疾患医療センターの活動機能調査。
結果と考察
予防、生活習慣病:明らかな認知症を認めない地域在住高齢者において耐糖能を調査し、耐糖能異常は認知機能障害と関連することを明らかにした。血流研究からDMの合併によってAD関連病理以外の血管性の病理が合併しAD病理とあわせてDM合併ADの認知機能や脳血流を修飾している可能性が考えられた。
早期発見ツールの開発:PETを使った脳の測定によりAβに関連する物質を調べたところ、AβとAPの量が同病患者と健常者で逆転していたことが判明。脳内のAβの蓄積を90%以上の精度で判定できた。血清中アシルカルニチンおよびアシルカルニチン/L-カルニチン比は認知機能低下と逆相これらは認知症診断の補助的なバイオマーカーになる可能性がある。家族が記入する認知症早期診断のためのツールを開発し、感度、特異度、有効性を検討し、認知症のスクリーニングツールとして有効かつ妥当であると考えられた。介護負担:介護負担の新尺度は因子分析を経て、初期の30項目程度の仮評価法が完成した。
非薬物療法:家族教室のRCT研究を開始した。家庭におけるBPSD対策のテキスト作成を開始した。初期集中支援では、8割以上が医療サービスにつながった。一方、介護サービスには、新たに20%がつながり、既につながっていた21%と合わせて約半数が介護サービスにつながった。介入時と終了時のアセスメントを比較すると、DASC21(認知機能・生活機能全般)は不変、DBD13(行動障害)が改善傾向、J-ZBI8(介護負担)は有意に改善した。認知症短期集中リハビリテーション、老健施設へ実施率は30.1%実施状況の視察やDVD等映像も活用した実務研修の継続的な実施 で、実施施設の割合向上を図る。
早期~進行期:デメンシアサポートチーム 愛知県下三河地区の3か所の500床以上を有する、超急性期病院でDSTを立ち上げることを目的に、3病院を訪問しそれぞれの病院で講義を行い、当センターのDST活動を見学していただいた。約3か月後に再訪問して、各施設でのDSTの立ち上げ状況を調査した。結果は、3病院とも病院幹部の支援のもとにチームの結成、マニュアルの作成に成功し、うち2施設では部分的ながらラウンドも開始されていた。また1つの病院ではあわせて院内デイサービスの立ち上げを検討していた。当センターでの試みは他施設でも実行可能であることが示された。
画像教材の開発:認知症介護は、身体疾患に対するそれと比べて難しい。それを実践に移せるように画像教材を用いたケアのマニュアル化が必要だと考え、これを作成しつつある。
併存する虚弱への対応:認知症ではサルコペニアは早期より増加する。その要因として、男性では意欲低下、女性ではビタミンDの低下が重要と考えられた。早期からの介入により筋力低下の抑制ができれば、生活機能障害の抑制(認知症の進行抑制)につながる可能性を指摘した。
地域包括医療ケアシステム 地域包括ケアを支える人材育成:研修を通じて、介護者の負担軽減、さらには積極的に支援が可能となるとの結果を得た。
以上を踏まえた、認知症医療ケアのシステム評価を「身近型認知症疾患医療センターモデル事業」において行い、サポート医より高い実行力が確認できた。昨年度まで行った、かかりつけ医、サポート医、認知症疾患医療センターの機能評価と合わせ、本邦のシステム全体を俯瞰できた。教育と機能評価が有効と結論される。
結論
かかりつけ医、サポート医、認知症疾患医療センターの機能評価と合わせ、本邦のシステム全体を俯瞰できた。教育と機能評価が有効と結論され、「認知症医療介護推進会議」を通じて広く医療福祉関係者と国民に対し、2014年2月の第一回認知症医療介護推進フォーラムなどで提供普及させた。我が国の認知症医療福祉への多大な貢献がされると確信する。

公開日・更新日

公開日
2016-03-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201418010Z