文献情報
文献番号
201418009A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症のケア及び看護技術に関する研究
課題番号
H25-認知症-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(兵庫県立大学大学院 経営研究科)
研究分担者(所属機関)
- 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
- 嶋森 好子(東京都看護協会)
- 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、認知症のステージ別に、そのケアや看護技術を明らかにし、この標準化を行うことである。これにあたっては、研究代表者らがすでに開発した認知症の臨床像を総合的に評価するアセスメントツールであるDASC(粟田2012)等を用いて、介護保険施設や医療機関を利用している認知症の方へのケアや看護技術の実態調査を行うこととしている。
研究方法
①平成24 年度より、内閣府によって検討されてきた介護キャリア段位制度の介
護技術評価のフレームワークを活用し、臨床的知見を基に認知症ケアに必要とされた257 の介護技術を取り上げ、臨床的妥当性が高いとされた介護技術を選定した。②居宅介護サービス利用者に対する認知症の生活機能障害に係わるアセスメントツールであるDASC
を2か月ごとに4回に渡って調査を実施し、このデータを活用して、各調査時におけるDASC のアセスメントおよびスコア、介護サービスの利用状況を分析した。
③他計式1 分間タイムスタディを実施できる急性期医療を提供している医療機関を対象として調査を実施し、患者一人あたりに提供されたケア時間および職員一人あたりが提供したケア時間をそれぞれ分析し、属性によるケア時間の差を比較した。
④65 歳以上の地域在住高齢者7,682 名より無作為抽出した3,000 名のうち、調査協力が得られた1,341 名を対象に看護師と調査員が自宅を訪問しDASC-21 とMMSE を実施した(研究1)。研究1 の対象者のうち131 名を対象に、研究1 の結果を知らされていない医師と心理士が自宅を訪問し、CDR,MMSE, FAB を実施した(研究2)。
護技術評価のフレームワークを活用し、臨床的知見を基に認知症ケアに必要とされた257 の介護技術を取り上げ、臨床的妥当性が高いとされた介護技術を選定した。②居宅介護サービス利用者に対する認知症の生活機能障害に係わるアセスメントツールであるDASC
を2か月ごとに4回に渡って調査を実施し、このデータを活用して、各調査時におけるDASC のアセスメントおよびスコア、介護サービスの利用状況を分析した。
③他計式1 分間タイムスタディを実施できる急性期医療を提供している医療機関を対象として調査を実施し、患者一人あたりに提供されたケア時間および職員一人あたりが提供したケア時間をそれぞれ分析し、属性によるケア時間の差を比較した。
④65 歳以上の地域在住高齢者7,682 名より無作為抽出した3,000 名のうち、調査協力が得られた1,341 名を対象に看護師と調査員が自宅を訪問しDASC-21 とMMSE を実施した(研究1)。研究1 の対象者のうち131 名を対象に、研究1 の結果を知らされていない医師と心理士が自宅を訪問し、CDR,MMSE, FAB を実施した(研究2)。
結果と考察
①認知症の対応に係る介護技術項目を統計的手法及び臨床家の知見を基礎として選定することができた。また認知症に係わる医療処置や見当識障害の有無別に、選定された介護技術には違いがあることが明らかになった。
②DASC スコアは調査対象を全体的にみると、経時的な悪化(スコアの上昇)傾向がみられ、DASC 評価項目ごとにも見当識障害、問題解決能力、電話のかけ方、薬の管理、着替えや排せつの自立といったADL 能力については、6 カ月の間にすべて悪化する傾向が示されていた。また2か月ごとのDASC スコアの経時的な変化からは、要介護度との関連性が示され、要介護度が低く、認知症の症状が比較的、軽い状況での介入は生活機能の変化が起こりやすいことが推察された。
③急性期病院で看護師が認知症患者に特別に提供している看護や看護技術はほとんどなく、看護補助者と同様のケアが提供されていた。このことは、今後の入院医療においては、看護師だけで患者らの療養上の世話や専門的看護を提供していくことを検討するのではなく、看護補助者との役割分担を明確にし、看護補助者が提供する介護サービスを前提とした、ケアミックスのあり方をさらに検討していく必要があると考えられた。
④本研究によって、訓練を受けた看護師が、地域在住高齢者を対象にDASC-21 を実施した場合のDASC-21 の信頼性係数は0.934、「家族からの情報があるDASC-21」では0.950、「家族からの情報がないDASC-21」では0.808 であり、いずれも十分な内的信頼性を有することが確認された。
②DASC スコアは調査対象を全体的にみると、経時的な悪化(スコアの上昇)傾向がみられ、DASC 評価項目ごとにも見当識障害、問題解決能力、電話のかけ方、薬の管理、着替えや排せつの自立といったADL 能力については、6 カ月の間にすべて悪化する傾向が示されていた。また2か月ごとのDASC スコアの経時的な変化からは、要介護度との関連性が示され、要介護度が低く、認知症の症状が比較的、軽い状況での介入は生活機能の変化が起こりやすいことが推察された。
③急性期病院で看護師が認知症患者に特別に提供している看護や看護技術はほとんどなく、看護補助者と同様のケアが提供されていた。このことは、今後の入院医療においては、看護師だけで患者らの療養上の世話や専門的看護を提供していくことを検討するのではなく、看護補助者との役割分担を明確にし、看護補助者が提供する介護サービスを前提とした、ケアミックスのあり方をさらに検討していく必要があると考えられた。
④本研究によって、訓練を受けた看護師が、地域在住高齢者を対象にDASC-21 を実施した場合のDASC-21 の信頼性係数は0.934、「家族からの情報があるDASC-21」では0.950、「家族からの情報がないDASC-21」では0.808 であり、いずれも十分な内的信頼性を有することが確認された。
結論
今年度の研究の結果、以下のことが明らかとなった。①認知症の対応に係る介護技術項目を統計的手法及び臨床家の知見を基礎として選定することができた。また認知症に係わる医療処置や見当識障害の有無別に、選定された介護技術の違いが明らかになった。②認知症に係わる生活機能障害の経時的変化、そして変化の時期や属性別の変化の傾向に関する知見が得られた。③認知症高齢者に対し、入院医療機関で提供されていた看護技術の実態が明らかになり、その技術は標準化されておらず、看護補助者との業務分担もできていないことがわかった。④DASC-21 は、専門職が地域の中で高齢者の認知機能障害と生活障害を把握し、認知症を検出し、重症度を評価するツールとして、適切な内的信頼性、併存的妥当性、弁別的妥当性を有する。
研究の最終年度となる次年度は、認知症ケアのヒアリング調査を実施し、国内の認知症ケアの臨床知見(暗黙知としてのケア)の収集と整理を行うと共に、これまで実施している認知症のステージ別ケアの分析を引き続き実施し、DASC や認知症の方やご家族の方々へのQOL の測定に関する尺度を活用した、認知症者に対するケア・看護技術の標準化に向けた方策について検討を進めていくことを予定している。
研究の最終年度となる次年度は、認知症ケアのヒアリング調査を実施し、国内の認知症ケアの臨床知見(暗黙知としてのケア)の収集と整理を行うと共に、これまで実施している認知症のステージ別ケアの分析を引き続き実施し、DASC や認知症の方やご家族の方々へのQOL の測定に関する尺度を活用した、認知症者に対するケア・看護技術の標準化に向けた方策について検討を進めていくことを予定している。
公開日・更新日
公開日
2016-03-22
更新日
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