文献情報
文献番号
201418004A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期病院における認知症患者の入院・外来実態把握と医療者の負担軽減を目指した支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
H25-認知症-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小川 朝生(国立研究開発法人国立がん研究センター先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
研究分担者(所属機関)
- 明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
- 井上 真一郎(岡山大学病院精神科神経科)
- 上村 恵一(市立札幌病院神経医療センター)
- 谷向 仁(大阪大学保健センター)
- 金子 眞理子(東京医療保健大学)
- 平井 啓(大阪大学 未来戦略機構)
- 清水 研(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍科)
- 木澤 義之(神戸大学大学院 医学研究科内科系講座先端緩和医療学分野)
- 近藤 伸介(東京大学医学部付属病院精神神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
8,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急性期病院における認知症患者の救急外来受診、ならびに急性期病院入院後の医療・ケアの実態を全国規模の調査で把握するとともに、医療従事者の負担を軽減する簡便な支援プログラムを開発し、その実施可能性を検証すること。
研究方法
急性期病院の認知症ケアに関して、①救急外来受診の実態調査、②急性期病院入院中の認知症患者の医療・ケアの全国調査、③認知症における痛みの評価法と精神症状・行動障害に及ぼす影響の解明、④認知症患者の受け入れ適正化を目指した周術期支援体制の検討、⑤医療従事者の負担軽減に資する認知症ケアの支援体制の構築の5つを軸に診療録調査、質問紙による郵送調査、フォーカスグループインタビュー、介入試験を中心に実施した。
結果と考察
1.認知症患者の救急外来受診の実態調査
精神科転科と他科転科後入院平均日数に優位な差は認めなかった。この結果から認知症に伴う「精神症状」が問題で在院日数が長くなっているわけではなく、「身体疾患」重症例が在院日数を長くしている可能性が考えられ、疾患による在院日数の違いはない可能性が示唆された。このことからも身体治療を優先する病棟において精神科医のリエゾン 介入を密に在宅以降を支援することが望まれる。
2.急性期病院入院中の認知症患者の医療・ケアの全国調査
a.急性期病院における看護ケアの現状調査
認知症看護において,安全面の工夫や看護師・介護者を含めたケア方法や対応の連携は行われているものの,病態やせん妄との鑑別等の知識やアセスメント,個別的・包括的アセスメント,ケアの工夫や意思決定支援については十分とは言えない現状であることが明らかになった。
b. 急性期病院の認知症の対応の実態調査
全国のDPC病を対象に調査を開始した。
3.認知症患者の受け入れ適正化を目指した周術期支援体制の検討
専門・認定看護師が用いることのできるスクリーニングツールの必要性が示唆されたことを受け、ツールと連動した周術期前介入プログラムを開発し、実施準備を整えた。
4.医療従事者の負担軽減に資する認知症ケアの支援体制の構築
a.総合的機能評価法の確立に向けた研究
本研究結果よりVES-13単独では臨床的には十分なスクリーニング能力を有しているとはいえないことが明らかになった。一方、VES-13と「興味・喜びの低下」による2段階スクリーニング方法は、既存の方法よりも優れたフレイルのスクリーニング方法であることが示唆された。
b. 包括的支援のための教育プログラムの開発に関する研究
本年度は、急性期病院の医療従事者を対象に、認知行動療法・学習理論に基づく行動観察・評価法に関する認知症・認知機能障害に関する教育プログラムの対象・教育目標・その骨格を検討した。「認知症患者の見えている・聞こえている世界を理解し、それに基づいてケアを行なうことができる」・「患者に対する基本的な見方を変えることで、成功体験を持つ」という教育目標を設定したプログラムを開発することが必要であることが明らかとなった。
精神科転科と他科転科後入院平均日数に優位な差は認めなかった。この結果から認知症に伴う「精神症状」が問題で在院日数が長くなっているわけではなく、「身体疾患」重症例が在院日数を長くしている可能性が考えられ、疾患による在院日数の違いはない可能性が示唆された。このことからも身体治療を優先する病棟において精神科医のリエゾン 介入を密に在宅以降を支援することが望まれる。
2.急性期病院入院中の認知症患者の医療・ケアの全国調査
a.急性期病院における看護ケアの現状調査
認知症看護において,安全面の工夫や看護師・介護者を含めたケア方法や対応の連携は行われているものの,病態やせん妄との鑑別等の知識やアセスメント,個別的・包括的アセスメント,ケアの工夫や意思決定支援については十分とは言えない現状であることが明らかになった。
b. 急性期病院の認知症の対応の実態調査
全国のDPC病を対象に調査を開始した。
3.認知症患者の受け入れ適正化を目指した周術期支援体制の検討
専門・認定看護師が用いることのできるスクリーニングツールの必要性が示唆されたことを受け、ツールと連動した周術期前介入プログラムを開発し、実施準備を整えた。
4.医療従事者の負担軽減に資する認知症ケアの支援体制の構築
a.総合的機能評価法の確立に向けた研究
本研究結果よりVES-13単独では臨床的には十分なスクリーニング能力を有しているとはいえないことが明らかになった。一方、VES-13と「興味・喜びの低下」による2段階スクリーニング方法は、既存の方法よりも優れたフレイルのスクリーニング方法であることが示唆された。
b. 包括的支援のための教育プログラムの開発に関する研究
本年度は、急性期病院の医療従事者を対象に、認知行動療法・学習理論に基づく行動観察・評価法に関する認知症・認知機能障害に関する教育プログラムの対象・教育目標・その骨格を検討した。「認知症患者の見えている・聞こえている世界を理解し、それに基づいてケアを行なうことができる」・「患者に対する基本的な見方を変えることで、成功体験を持つ」という教育目標を設定したプログラムを開発することが必要であることが明らかとなった。
結論
急性期病院において認知症患者に対するケアで課題となる点は、①精神症状、特にBPSDに関して、②認知症に関する理解が乏しい家族への対応、③意思決定に関する倫理的ジレンマ、④身体症上管理、⑤業務が多忙で個別ケアに限界があることが明らかとなった。
急性期病院は、身体治療と認知症へのケアの両面を提供する必要がある。特に、認知症に関しては、BPSDへの対応に加え、意思決定等の対応が求められる課題がある。
認知症患者の身体症状を拾い上げ、患者の不快を最大限取り除くために、多職種のアセスメントを統合することが重要であり、わが国の臨床に即した教育プログラムを開発する必要がある。
急性期病院は、身体治療と認知症へのケアの両面を提供する必要がある。特に、認知症に関しては、BPSDへの対応に加え、意思決定等の対応が求められる課題がある。
認知症患者の身体症状を拾い上げ、患者の不快を最大限取り除くために、多職種のアセスメントを統合することが重要であり、わが国の臨床に即した教育プログラムを開発する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2016-03-22
更新日
-