文献情報
文献番号
201417006A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者在宅医療に関する多職種協働の阻害要因を克服する教育システムの構築に関する研究
課題番号
H24-長寿-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鳥羽 研二(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 辻 哲夫(東京大学高齢社会総合研究機構)
- 三浦 久幸(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
- 千田 一嘉(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
- 太田 秀樹(医療法人アスムス)
- 和田 忠志(医療法人財団実幸会 いらはら診療所)
- 亀井 智子(聖路加国際大学)
- 真田 弘美(東京大学大学院医学系研究科)
- 田高 悦子(横浜市立大学大学院医学研究科)
- 百瀬 由美子(愛知県立大学)
- 秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院)
- 大河内 二郎(介護老人保健施設竜間之郷)
- 神崎 恒一(杏林大学医学部)
- 高杉 敬久(日本医師会)
- 武久 洋三(日本慢性期医療協会)
- 大島 浩子(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
- 後藤 百万(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 鈴木 邦彦(日本医師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,042,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替
高杉敬久(平成26年4月1日~平成26年7月7日)→鈴木邦彦(平成26年7月8日以降)
所属機関名変更
研究分担者 亀井智子 聖路加看護大学 →聖路加国際大学(平成26年4月~)
研究報告書(概要版)
研究目的
在宅高齢者医療の進展を阻害する主要因を1)医療サービス連携、2)高齢者疾患の対処困難性の問題の二つに絞り、現状分析を踏まえて解決策として教育とそれを生かした政策提言を行うことである。
研究方法
事例の収集を行い、在宅医療における症状・所見の頻度や、在宅医療支援病棟における在宅から急性疾患で入院依頼となった疾患構成、症状頻度を基礎資料として、在宅看護テキストVersion1を作成した。在宅療養開始の困難性の分析から構造的DVD作成を開始し完成をめざす。看護テキスト評価(3500箇所)を受け改訂し在宅看護テキストVersion2として在宅看護教育に利用、評価を行うとともに、ケアプランの立案のためのQ and A集を作成し、一部は多職種間での知識不均衡があるかを検討する。平成26年度には、多職種共用テキストを用い、多職種、医学生、看護学生への教育効果について従来のテキストとの比較検討を行う。比較検討は、全体得点だけでなく、認知症であれば、診断、治療、身体的ケア、周辺症状への対応、介護保険の利用、終末期対応など、要素別に「Q and A方式が優れている分野がある」という仮説を検定する。
結果と考察
多職種研修における課題の抽出
1)介護施設におけるBPSD対応の多職種協働研修に関する研究では、認知症BPSDの対応において、多職種協働の重要性は、介護職・看護師ともに十分に認識されていた。一方、介護施設の職員において、多職種協働を目的とした研修を受けた者は少なく、多くの職員が、多職種協働に困難を感じていた.研修会の前後で比較すると、「多職種協働ができそう」と感じた者は増加し、多職種でのグループ討議などの研修会は、多職種協働に効果があると考えられる。
2)看護・介護職向けの排尿障害ケアに関する体系的情報は少なく、多職種連携に関する指針も示されていない。本研究に基づいて構築される、在宅医療における多職種連携のための排尿障害に関する教育ツールは、在宅医療における高齢者の生活の質向上に大きく貢献することが期待される。
3)在宅療養中止理由(日野市)としては、肺炎後の在宅療養継続困難例(5例)、認知症の介護困難例(4例)が約60%を占めていた。このことから、肺炎の予防、認知症患者の介護破綻の抑止に資する教育ツールが必要である。多職種カンファが生きた例として、診断のほか、医療面特に服薬整理、介護面で複数の職種が協働した結果、患者の独居生活を維持することができた。このような多職種協働の実例を集積することで、在宅医療の継続推進のためのツール(教育のための事例集)を作成することができると考えられる。
4)在宅の特徴は、生まれ育った社会との接点である。しかし高齢者の社会参加の指標は確立しておらず、実態調査して課題を抽出するところから始める必要がある。余暇および社会交流のICFステージング指標は構成概念妥当性、内容的妥当性およびテスト再テスト法による信頼性に優れた指標である。
在宅事例集の収集と解析
1)2012年度に在宅療養支援診療所を対象に行った事例調査の解析により、急性疾患併発により入院を余儀なくされる因子として、「初期の感染症治療への抵抗性」と「急な状態変化にともなう不十分な介護体制」等が抽出された。自宅で最期までの療養については、「基礎疾患が悪性腫瘍」、「本人の意思が明確」であること、一方、入院・入所が余儀なくされた事例では、「認知症の合併」や「独居」等の因子が抽出された。
2)在宅医療支援病棟入院患者については、2009~2013年度の4年間に入院した延べ1008人に対する後ろ向きコホート調査を行った結果、がん患者の自宅死亡率が28.8%(vs.非がん37.8%)と低く、また、施設入所が増える傾向にあった。がん、非がん別に自宅死亡、病院死亡、施設入所・死亡の典型例につきそれぞれ事例収集を行った。
1)介護施設におけるBPSD対応の多職種協働研修に関する研究では、認知症BPSDの対応において、多職種協働の重要性は、介護職・看護師ともに十分に認識されていた。一方、介護施設の職員において、多職種協働を目的とした研修を受けた者は少なく、多くの職員が、多職種協働に困難を感じていた.研修会の前後で比較すると、「多職種協働ができそう」と感じた者は増加し、多職種でのグループ討議などの研修会は、多職種協働に効果があると考えられる。
2)看護・介護職向けの排尿障害ケアに関する体系的情報は少なく、多職種連携に関する指針も示されていない。本研究に基づいて構築される、在宅医療における多職種連携のための排尿障害に関する教育ツールは、在宅医療における高齢者の生活の質向上に大きく貢献することが期待される。
3)在宅療養中止理由(日野市)としては、肺炎後の在宅療養継続困難例(5例)、認知症の介護困難例(4例)が約60%を占めていた。このことから、肺炎の予防、認知症患者の介護破綻の抑止に資する教育ツールが必要である。多職種カンファが生きた例として、診断のほか、医療面特に服薬整理、介護面で複数の職種が協働した結果、患者の独居生活を維持することができた。このような多職種協働の実例を集積することで、在宅医療の継続推進のためのツール(教育のための事例集)を作成することができると考えられる。
4)在宅の特徴は、生まれ育った社会との接点である。しかし高齢者の社会参加の指標は確立しておらず、実態調査して課題を抽出するところから始める必要がある。余暇および社会交流のICFステージング指標は構成概念妥当性、内容的妥当性およびテスト再テスト法による信頼性に優れた指標である。
在宅事例集の収集と解析
1)2012年度に在宅療養支援診療所を対象に行った事例調査の解析により、急性疾患併発により入院を余儀なくされる因子として、「初期の感染症治療への抵抗性」と「急な状態変化にともなう不十分な介護体制」等が抽出された。自宅で最期までの療養については、「基礎疾患が悪性腫瘍」、「本人の意思が明確」であること、一方、入院・入所が余儀なくされた事例では、「認知症の合併」や「独居」等の因子が抽出された。
2)在宅医療支援病棟入院患者については、2009~2013年度の4年間に入院した延べ1008人に対する後ろ向きコホート調査を行った結果、がん患者の自宅死亡率が28.8%(vs.非がん37.8%)と低く、また、施設入所が増える傾向にあった。がん、非がん別に自宅死亡、病院死亡、施設入所・死亡の典型例につきそれぞれ事例収集を行った。
結論
在宅療養継続困難事例の分析から生活機能と症候に着目した構造的テキストを作成した。班員から具体的事例を集積し、適切なケアプランを立案できるかどうかのQ and A集を作成し、一部は多職種間での知識不均衡があるかを検討し、職種間差異はヒエラルキーでなく日常臨床の対応経験による項目による差であった。視覚的学習が適当な診断治療に役立つDVDを作成1000部配布し、理解が深まった。
「多職種共用の高齢者在宅医療」テキストを用い、多職種、医学生、看護学生でも教育効果を検討し、多職種テキストがより効果的である結果を得た。医師、看護師など教育現場で従来の教育方法に加え多職種共用テキストを用いて、共通言語の醸成チーム医療、チームケアの土台作りを行う必要がある。
「多職種共用の高齢者在宅医療」テキストを用い、多職種、医学生、看護学生でも教育効果を検討し、多職種テキストがより効果的である結果を得た。医師、看護師など教育現場で従来の教育方法に加え多職種共用テキストを用いて、共通言語の醸成チーム医療、チームケアの土台作りを行う必要がある。
公開日・更新日
公開日
2015-06-08
更新日
-