文献情報
文献番号
201415130A
報告書区分
総括
研究課題名
腎移植患者のHTLV-1感染とHAM発症に関する研究
課題番号
H26-難治等(免)-指定-113
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
湯沢 賢治(国立病院機構 水戸医療センター 臨床研究部 )
研究分担者(所属機関)
- 松岡 雅雄(京都大学ウィルス研究所 ウィルス学)
- 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 神経免疫学、ウィルス免疫学)
- 市丸 直嗣(大阪大学大学院 先端移植基盤医療学寄付講座 腎移植)
- 錦戸 雅春(長崎大学病院 血液浄化療法部)
- 柴垣 有吾(聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 腎臓内科学)
- 杉谷 篤(国立病院機構 米子医療センター 外科・移植外科)
- 中村 信之(福岡大学 泌尿器科)
- 三重野 牧子(自治医科大学 医学情報センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染からのHTLV-1関連脊髄症(HAM)は極めて低く、発病までは極めて長期間と考えられていたため、腎移植は禁忌とはされてこなかった。しかし、2014年秋に発表された厚生労働科学研究による班研究(研究代表者:山野嘉久)により、HTLV-1(+)ドナーからHTLV-1(-)レシピエントへの腎移植においてHTLV-1に感染し、移植後数年以内にHAMを高率に発症、発症後数年で急速に重篤な状態に進行する傾向がある、と報告された。腎移植患者のHTLV-1感染とHAM発症に関する大規模は疫学研究はされておらず、今後の腎移植医療の発展のためには、腎移植全症例のドナーとレシピエントでのHTLV-1感染の実態調査が必要である。今年度は、緊急的に腎移植臨床登録のデータを用いてHTLV-1感染症例を解析し、今後の詳細な解析と調査につなげるための基礎となる研究を行なうものである。
研究方法
1,全症例調査 日本移植学会登録委員会が行なっている臨床腎移植登録のデータを用いて、最近10年間(2004年から2013年)の腎移植症例から、HTLV-1(+)ドナーからHTLV-1(-)レシピエントへの腎移植症例、HTLV-1(+)ドナーからHTLV-1(+)レシピエントへの腎移植症例、HTLV-1(-)ドナーからHTLV-1(+)レシピエントへの腎移植症例をピックアップする。
2,調査項目の検討 前記の全症例調査に先立ち、腎移植患者のHTLV-1感染とHAM発症に関わる調査研究での調査項目を検討する。
3,解析 前記の各移植施設から返された症例の集計データを解析する。これにより、HTLV-1(+)ドナーからHTLV-1(-)レシピエントへの腎移植におけるHAM発症の頻度、期間、免疫抑制剤の使用状況、HTLV-1キャリアの腎移植後の状態、などが明らかになる。
4,提言 今年度の限られた解析結果からでも、腎移植医療を安全に維持するために、今年度の調査終了時点で、本研究の成果としての提言を行なう。
5,今後の研究計画の策定 今年度は、限られた期間での調査研究であり、調査内容も限られたものである。しかし、腎移植患者のHTLV-1感染とHAM発症に関する研究として、腎移植後の早期の発症に至る過程、重症化のメカニズムなど、全貌を明らかにする必要がある。このためには、ウイルス量の測定など、ウイルス学的な詳細な検討が必要である。これらは全症例に可能とは考えられないが、協力施設、症例にについて依頼していくことになる。来年度以降に行なうべき詳細な検討項目を検討し、次年度の本研究テーマの継続研究につなげる。
2,調査項目の検討 前記の全症例調査に先立ち、腎移植患者のHTLV-1感染とHAM発症に関わる調査研究での調査項目を検討する。
3,解析 前記の各移植施設から返された症例の集計データを解析する。これにより、HTLV-1(+)ドナーからHTLV-1(-)レシピエントへの腎移植におけるHAM発症の頻度、期間、免疫抑制剤の使用状況、HTLV-1キャリアの腎移植後の状態、などが明らかになる。
4,提言 今年度の限られた解析結果からでも、腎移植医療を安全に維持するために、今年度の調査終了時点で、本研究の成果としての提言を行なう。
5,今後の研究計画の策定 今年度は、限られた期間での調査研究であり、調査内容も限られたものである。しかし、腎移植患者のHTLV-1感染とHAM発症に関する研究として、腎移植後の早期の発症に至る過程、重症化のメカニズムなど、全貌を明らかにする必要がある。このためには、ウイルス量の測定など、ウイルス学的な詳細な検討が必要である。これらは全症例に可能とは考えられないが、協力施設、症例にについて依頼していくことになる。来年度以降に行なうべき詳細な検討項目を検討し、次年度の本研究テーマの継続研究につなげる。
結果と考察
HAMねっと登録患者383名を対象とした疫学調査研究結果から、HAMの臨床経過や予後因子に関する情報を抽出し、生体腎移植後HAM患者の臨床的特徴と比較検討した結果、HAMにおいて発症後の進行が早く重篤化する「急速進行群」の特徴をまとめたところ、「輸血歴」のある患者が急速進行群に有意に多く、「輸血歴」が予後不良因子であることが示された。さらに、生体腎移植後HAMの臨床的特徴が、輸血後HAMの特徴と酷似していることが示された。これらの結果は、HAMにおいて「移植歴」が、HAM発症のハイリスク要因、かつHAMの予後不良因子である可能性を強く示唆しており、今後より多くの移植後HAM症例の情報収集とその詳細な解析の必要性が高いと考えられた。今回の研究により、D+/R-生体腎移植の安全性が確立されていないことが示され、感染率や発症率を明らかにして生体腎移植の適応を改めて評価する必要性が示唆された。
結論
今後は、腎移植臨床登録集計報告をもとにHTLV-1陽性腎移植ドナーおよびレシピエントのさらに詳細な調査を行い、HTLV-1感染者における腎移植の影響を明らかにするための基本情報の構築に努める。日本移植学会の臨床腎移植登録で、2000年から2013年の腎移植症例の中で、HTLV-1感染とHAM発症の危険群として、D(+)→R(-)23症例、D(+)→R(+)44症例、D(-)→R(+)96症例あることが明らかになり、これらの症例の詳細な解析が必要であり、この結果をもとに、腎移植におけるHTLV-1感染に関する指針を作成し、腎移植のガイドラインにも盛り込まれることが必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-11
更新日
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