難病患者への支援体制に関する研究

文献情報

文献番号
201415128A
報告書区分
総括
研究課題名
難病患者への支援体制に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-指定-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 正豊(新潟大学脳研究所 神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 朗子(公共財団法人東京都医学総合研究所)
  • 小森 哲夫((独)国立病院機構箱根病院神経筋・難病医療センター)
  • 成田 有吾(三重大学医学部看護学科)
  • 小林 庸子((独)国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 菊池 仁志(医療法院財団華林会 村上華林堂病院)
  • 伊藤 道哉(東北大学大学院医学系研究科)
  • 川島 孝一郎(仙台往診クリニック)
  • 荻野美恵子(北里大学医学部付属新世紀医療開発センター)
  • 溝口 功一((独)国立病院機構静岡富士病院)
  • 豊島 至(国立病院機構 あきた病院)
  • 宮地 隆史((独)国立病院機柳井医療センター)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科)
  • 春名 由一郎((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成26年5月に成立した「難病の患者に対する医療等に関する法律」(「難病法」)に基づく新たな難病対策制度により、難病患者と家族を地域で包括的に支援するために、保健所保健師と難病対策地域協議会による地域支援ネットワーク、難病相談支援センターによる福祉支援ネットワーク、難病拠点病院と難病医療コーディネーターによる医療支援ネットワークが重層的に整備されることとなった。本班は、この支援体制が全国に普く整備されるように、支援体制整備の均霑化に必要な施策のあり方を研究することを目的とした。
研究方法
研究代表者は平成23年度から「希少性難治性疾患患者に関する医療の向上及び患者支援のあり方に関する研究」班を統括し、現行制度の諸課題を検討してきた。引き続き本班は、1)難病に関係する多職種の連携のあり方、2)在宅医療体制のあり方、3)難病の災害対策のあり方について、今後の行政施策の構築に資するデータの収集と解析を行った。
結果と考察
1)多職種連携による支援体制
都道府県と保健所設置市の難病担当保健師を対象に、難病保健活動の実施体制について実態調査を行った結果、難病保健師育成プログラムの整備には遅れがみられた。地域での研修は多くの自治体で実施困難であり、中央の機関で専門的な研修制度を整備する必要があった。各自治体保健所による難病保健活動の推進には、国の基本方針が早急に示される必要があった。
難病相談支援センターの活動実態について全国調査を行った結果、相談支援員の研修体制に改めて課題が指摘された。ピアサポーターの配置は23%のセンターのみであり、3分の1のセンターでは相談援助職とピアサポーターとの連携に課題を残していた。
難病療養支援における介護の役割では、ケアマネージャーに対する活動指針の骨子を検討した。東京都では、難病患者支援における現状を聞き取り、活動指針の構成について検討した。また、難病患者等ホームヘルパー養成研修事業の実状とその研修内容についても実態調査を行った。
 難病者の就労支援については、専門職の研修プログラム作成を試みた。就労支援研修会において、担当者が抱える就労困難事例を共有するためにロールプレイを実施し、一定の効果を挙げた。
難病における患者会の役割では、2003年に設立された難病センター研究会の活動や、「難病患者サポート事業」の一環として実施されてきた「患者会リーダー養成研修会」の活動状況が報告された。「難病法」施行後の難病対策制度に関する患者団体の意識調査が開始された。
難病リハビリテーションの役割については、神経難病リハ研修に対するニーズと現状に関するアンケート調査が実施された結果、約4割の施設で研修は実施されていたが、病院と地域との連携に困難があった。

2)在宅医療の支援体制
 難病の在宅医療に従事する専門家育成のあり方では、相談・支援マニュアルを作成するために、国内外のガイドラインなどを網羅的に検索し、体系的に整理した。これを基に、国際生活機能分類に基づく実用的なマニュアルの作成を開始した。
 重症神経難病患者を対象とするレスパイト入院について、初めての全国調査を実施した。神経学会教育施設のレスパイト実施率は57%、全国訪問看護事業団施設のレスパイト依頼率は28%であった。ALSのレスパイト入院に関する聞き取り調査を三重県で実施した。
 難病の緩和ケアに従事する人材育成では、難病に特化した緩和ケアの捉え方やモルヒネの効果的な使用を含む緩和ケア技術を広く普及・啓発するための方法として、当事者向けの自己研鑚ツールや説明パンフレットを開発した。

3)災害対策
 在宅人工呼吸器装着者の外部バッテリーの装着状況、非常用電源の購入に対する公的補助、災害時の難病患者受け入れ調整について、47都道府県を対象として実態調査を行った結果、在宅人工呼吸器装着者の実態を把握できていない自治体が多いことを改めて示した。前班に引き続き、都道府県別に在宅人工呼吸器装着者の実数と外部バッテリーの装備率を明らかにした。
自治体による災害支援対策では、前年度に調査した467市町村に対し、災害時要援護者個別支援計画の策定状況に関する実態調査を再度実施し、現状では要支援者が特定されていないなど、情報共有の実態を示した。
 宮城県では、東日本大震災とその後について、県内全域の在宅人工呼吸器装着者と家族を対象とした電子メール調査を実施した。
結論
新「難病法」に基づく難病対策事業により、重層的な支援ネットワークが全国に普く構築されているかを検証し、難病患者と家族を地域で包括的に支援するための体制整備の均霑化に必要な施策のあり方を研究した。

公開日・更新日

公開日
2016-04-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415128Z