今後の難病対策のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201415125A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の難病対策のあり方に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 小池 和彦(東京大学大学院医学系研究科消化器内科学)
  • 千葉 勉(京都大学医学研究科消化器内科学)
  • 五十嵐 隆(国立成育医療研究センター)
  • 水澤 英洋(国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学)
  • 葛原 茂樹(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療福祉学科)
  • 松井 健志(国立循環器病研究センター)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院健康危機管理研究部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院生涯健康研究部)
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター)
  • 水島 洋(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター)
  • 福田 敬(国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部)
  • 冨田 奈穂子(国立保健医療科学院国際協力研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
111,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年1月25日「難病対策の改革について(提言)」が示された。本研究では、「提言」で示された難病対策の方向性を具現化するために必要な科学的根拠を確立し、対策の推進に資する基礎的資料を提供することを目的とした。
研究方法
難病指定医の研修プログラムの開発、難病データ登録システムの開発、難病患者データの活用方策の検討、希少・難治性疾患の類型化及び認定審査のための診断基準・重症度分類整備の検討、難病医療提供体制のあり方の検討、小児期から成人期への切れ目のない支援のあり方に関する検討、難病に関する国際連携方策の検討、難病に関する情報提供のあり方の検討、希少・難治性疾患研究の研究評価・進捗管理の方策に関する検討、難病患者等の実態把握、難病医療支援ネットワークのあり方の検討などを実施した。これらの分担研究項目の結果を総括し、包括的かつ長期的視点から今後の難病対策の推進に関する基礎的資料をとりまとめた。
結果と考察
(1)難病指定医の研修プログラムの開発
内科、血液、神経、免疫(リウマチ)、消化器、呼吸器、眼科、皮膚、耳鼻科、整形外科、腎臓、内分泌・代謝、小児科の各学会に対して、指定難病に関する標準テキストの作成を依頼し、それらを用いた研修プログラムを提案した。
(2)難病データ登録システムの開発
指定難病110疾患について、データ登録システムへの登録項目及び登録様式(ウェブ形式、紙形式)を作成した。登録項目に関しては、全疾患共通な項目、分野で共通な項目、疾患群で共通な項目などの整理を行い、単位の統一や国際標準化について検討した。
(3)難病患者データの活用方策の検討
難病データ登録システムのデータベースを研究で利用するに当たっての倫理的な問題点を検討し、当該データベースの研究利用に関する同意の倫理的に適切な在り方について理論的考証を行った。
(4)希少・難治性疾患の類型化及び認定審査のための診断基準、重症度分類整備の検討
指定難病の法制化に対応して、臨床的観点から希少・難治性疾患の類型化、診断基準、重症度分類等の資料作成を行うとともに、地方自治体等で認定審査の際に使用できる、認定基準(診断基準、重症度分類)の策定を試みた。
(5)難病医療提供体制のあり方の検討、および小児期から成人期への切れ目のない支援のあり方に関する検討
医療提供体制では、①小児期より治療優先の生活を送ることが多かった患者に対する自立支援、②小児の慢性疾病患者を成人科等で受け入れる診療体制の整備という課題が明らかとなった。研究面では、難病と小児慢性特定疾病において切れ目のないデータの連携が重要であることが確認され、GUIDが有効であると判断された。さらに、小児慢性特定疾病の対象疾患のうち、成人期以降も切れ目のない医療支援・研究等が必要と考える疾患を整理した。
(6)難病に関する国際連携方策の検討
①欧州連合加盟国とのデータ相互利用を視野に入れながら希少疾患患者についてのデータ登録の整備を進めるフランス、②欧州を中心に公衆衛生および研究を目的とした患者登録情報の相互利用に関する法的整備状況、のレビューを行った。
(7)難病に関する情報提供のあり方の検討
患者や国民にわかりやすい情報提供の方策の検討、情報を研究班から効率的に収集するための方策の検討、研究班と患者との双方向コミュニケーション体制のあり方を検討した。
(8)希少・難治性疾患研究の研究評価・進捗管理の方策に関する検討
平成26年度難治性疾患政策研究事業の研究課題全89課題を対象に、進捗状況の把握・管理、研究成果をとりまとめた。適切な「研究開発管理」の実施によって、期限内の目標達成が可能であること、設定期限を前倒しして目標達成することも可能なことが示唆された。
(9)難病患者等の実態把握
3県在住の難病患者で、特定疾患医療受給者証交付申請を行う方々を対象として、無記名自記式(代筆可)の「難病患者様の生活実態調査」を行った。15,366名に調査票を送付し、6,843名から回答があった(回収率44.5%)。日常生活の自立度、年間世帯収入、直近1か月の医療費・介護保険サービスの自己負担額・難病に関連した支出等の実態を把握した。
(10)難病医療支援ネットワークのあり方の検討
わが国では、国立高度専門医療研究センターがあり、このような難病の研究や診療が進んでいるため、それらを難病診療に関する支援ネットワークのハブとして各分野の学会や全国の病院と連携させることが望ましいことが示唆された。
結論
平成26年5月23日難病の患者に対する医療等に関する法律が成立し、平成27年1月1日より施行されたが、本研究で得られた知見と各種成果物を活用することによって、医療費助成、調査研究、療養生活環境整備事業など難病対策の円滑な推進が可能になることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2016-09-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415125Z