難治性筋疾患の疫学・自然歴の収集および治療開発促進を目的とした疾患レジストリー研究

文献情報

文献番号
201415121A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性筋疾患の疫学・自然歴の収集および治療開発促進を目的とした疾患レジストリー研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-086
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
木村 円(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 疾病研究第一部)
  • 青木 正志(東北大学大学院 医学系研究科 神経内科学)
  • 大野 欽司(名古屋大学大学院医学系研究科 神経遺伝情報学分野)
  • 武田 伸一(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 林 由起子(東京医科大学 神経生理学分野)
  • 古谷 博和(高知大学医学部老年病・循環器・神経内科学講座 神経内科学部門)
  • 松浦 徹(自治医科大学 神経内科学講座 神経内科学部門)
  • 高橋 正紀(大阪大学大学院 医学系研究科 神経内科学)
  • 川井 充(国立病院機構東埼玉病院)
  • 小牧 宏文(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター病院小児神経診療部)
  • 森 まどか (吉村 まどか)(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター病院神経内科)
  • 松村 剛(国立病院機構 刀根山病院神経内科)
  • 大澤 裕(川崎医科大学神経内科学)
  • 山下 賢(熊本大学大学院生命科学研究部 神経内科学分野)
  • 渡辺 範雄(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター 情報管理・解析部)
  • 米本 直裕(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神薬理研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少な難治性筋疾患の疾患レジストリーを構築し、疫学・自然歴の収集および治療開発を促進する。特に臨床試験の対象になるべき軽症患者が参加でき、精度の高い詳細な疫学データを収集・解析し、患者のQOL 向上や政策に活用しうる基礎的知見の集積と将来的な臨床開発に寄与する登録体制の整備モデルを示し、新・難病対策事業における登録制度が抱える課題を補完するとともに有益な情報を提供し、難治性疾患全般の研究の進展と政策に寄与することを目的とする。
研究方法
本研究は観察研究である。対象は遺伝子解析などの方法により診断が確定した希少な難治性筋疾患とする。それぞれの疾患の専門施設が事務局もしくはキュレーターを担当し、国立精神・神経医療研究センターNCNP に中央登録事務局を整備し、Remudyのシステムを用いて登録を行う。インフォームド・コンセントに同意し登録を希望する患者本人が、担当医と相談のうえで必要事項を確認しRemudyウェブ登録システムを経由して登録する。登録情報は連結可能匿名化され、個人情報と臨床情報に分けて管理され常時バックアップされる。原則として1 年に1 回定期的に更新とし、登録情報に変更が生じた際は適宜更新を行う。登録者・協力医療機関等に情報提供を行う。研究結果の公表は集団として連結不可能匿名化された解析結果のみとする。研究利用目的の情報開示依頼は、公平な審査を行った上で研究対象者個人が特定できないように完全に匿名化した情報のみを提供する。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターおよび分担研究者の施設の倫理審査委員会の承認を受けて実施する。
結果と考察
ミオトニー症候群は、代表的な筋強直性ジストロフィー登録を、平成26 年度厚生労働科学研究委託費(障害者対策総合事業)「筋強直性ジストロフィー治験推進のための臨床基盤整備の研究」(研究代表者 松村剛・国立病院機構 刀根山病院)と協調し、平成26年10 月2 日より大阪大学神経内科を事務局(分担研究者・髙橋政紀講師)として開始した。ディスファリノパチー登録(東北大学)、先天性筋無力症候群登録(名古屋大学)、先天性ミオパチー登録(国立精神・神経医療研究センター)は登録項目を検討し、関係者との調整を行った。また国際協調を見据えてヨーロッパの同疾患登録のエキスパートと意見交換を行った。研究班会議(平成27 年2 月6 日)では、実施上の問題点を議論した。特に登録項目の設定にかかる専門家・研究者、患者及び支援団体、情報の利用者たる製薬企業の開発関係者間の調整、遺伝子解析にかかるコストとマンパワーに対するサポートが不十分な点がディスカッションの焦点となった。医療環境によっては発病しても鑑別診断として疑われることがない、また疑われたとしても確定診断に至っていない患者が多く存在することも考えられており、疾患登録を行うこと自体が周知につながるという意見も出された。
 限られたリソースを活かして希少疾患全体の臨床研究に有用なレジストリーシステムを構築するための方策が求められている。最新のICT 技術を活かしたウェブ登録システムは、マンパワーとコストの増大を抑制しニーズに対応する方法として検討され、筋ジストロフィー登録に応用され現在テスト中である。また平成27 年から施行された新しい「難病の患者に対する医療等に関する法律による指定難病」登録の進捗状況を確認しつつ、本研究で行う登録システム構築が新しい指定難病の登録システムに対して貢献出来るような体制構築が望まれている。本研究で進めるシステムは、治験・臨床試験のフィージビリティスタディおよびリクルートに関わる登録者への情報提供を行うことを目的としており、精確な遺伝子・臨床情報を登録し、かつ発症初期の軽症患者の参加が予想されている。これを進め臨床試験の実施、新薬の開発につなげることで情報の精度や全例登録をすすめることの重要性を提言し、指定難病登録の現状を改善することに有用な情報を提供できる。将来的には一つのシステムに統合されることが望ましいが、喫緊の課題である臨床開発を加速させ革新的医療技術を創生し、医療分野の成長戦略を実現するためには最先端のICT システムを活かした方法の拡充が重要である。
結論
ミオトニー症候群の代表として筋強直性ジストロフィー登録を開始し、ディスファリノパチー登録、先天性筋無力症候群登録、先天性ミオパチー登録についても着実に準備を進めつつ、他の候補疾患についての検討も行っている。指定難病登録との将来的な統合を見据えつつ、現実問題として近づいてくる臨床開発を促進するレジストリーシステムを提案している。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415121Z