小児期発症の希少難治性肝胆膵疾患における包括的な診断・治療ガイドライン作成に関する研究

文献情報

文献番号
201415117A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期発症の希少難治性肝胆膵疾患における包括的な診断・治療ガイドライン作成に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-082
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
仁尾 正記(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松井 陽(聖路加国際大学 小児科学・小児肝臓学)
  • 橋本 俊(名古屋市立大学大学院医学研究科・分子神経生物学)
  • 安藤 久實(愛知県障害者コロニー・発達障害研究所・小児外科(小児肝・胆・膵))
  • 北川 博昭(聖マリアンナ医科大学・外科学 小児外科)
  • 虻川 大樹(宮城県立こども病院総合診療科・小児科学・小児肝臓消化器病学)
  • 林田 真(九州大学大学大学病院・小児外科)
  • 佐々木 英之(東北大学大学院医学系研究科・小児外科学分野)
  • 島田 光生(徳島大学大学院消化器・移植外科)
  • 神澤 輝実(都立駒込病院・消化器内科)
  • 藤井 秀樹(都立駒込病院・消化器内科)
  • 遠藤 格(横浜市立大学消化器・腫瘍外科学)
  • 浜田 吉則(関西医科大学・小児外科)
  • 窪田 正幸(新潟大学医歯学系・小児外科学)
  • 鈴木 達也(藤田保健衛生大学・小児外科)
  • 漆原 直人(静岡県立こども病院・小児外科)
  • 須磨崎 亮(筑波大学医学医療系・小児科学分野・小児肝臓病学)
  • 田口 智章(九州大学大学院医学研究院・小児外科学分野)
  • 前田 貢作(神戸大学大学院医学研究科・小児外科学)
  • 近藤 宏樹(大阪大学・小児科)
  • 木下 義晶(九州大学大学院医学研究院・小児外科学分野)
  • 岡田 忠雄(北海道教育大学 教育学部 札幌校・ 養護教育専攻医科学看護学分野)
  • 清水 教一(東邦大学医学部医学科小児科学講座 大橋・小児科学)
  • 位田 忍(地方独立法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター・消化器・内分泌科)
  • 清水 俊明(順天堂大学医学部・小児科)
  • 松藤 凡(聖路加国際大学・聖路加国際病院・小児外科)
  • 玉井 浩(大阪医科大学・小児科)
  • 八木 実(久留米大学医学部外科学講座・小児外科学部門)
  • 工藤 豊一郎(国立成育医療研究センター・肝臓内科)
  • 黒田 達夫(慶應義塾大学医学部・外科学(小児))
  • 杉浦 時雄(名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学分野)
  • 村上 潤(鳥取大学周産期・小児医学)
  • 韮澤 融司(杏林大学医学部・小児外科学)
  • 呉 繁夫(東北大学大学院医学系研究科・小児科学分野)
  • 坂本 修(東北大学大学院医学系研究科・小児科学分野)
  • 田尻 仁(大阪府立急性期・総合医療センター・小児科)
  • 乾 あやの(済生会横浜市東部病院・小児肝臓消化器科)
  • 虫明 聡太郎(近畿大学医学部奈良病院・小児科)
  • 米倉 竹夫(近畿大学医学部奈良病院・小児外科)
  • 鹿毛 政義(久留米大学病院・病理部)
  • 原田 憲一(金沢大学大学院・形態機能病理学)
  • 猪股 裕紀洋(熊本大学大学院・小児外科学・移植外科学分野)
  • 岩中 督(東京大学大学院医学系研究科・小児外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
20,231,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 近藤宏樹 大阪大学大学院医学研究科小児科学(平成26年4月1日~平成26年8月31日)→地方独立行政法人堺市立病院機構市立堺病院診療局小児科(平成26年9月1日~平成27年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究が対象とする小児期発症難治性希少肝胆膵疾患は早期診断と治療で救命可能だが、診断治療ガイドラインが未策定で、均てん化された医療が提供されていない。ガイドライン整備を通じて、該当患者が健常に発育可能な環境整備は、少子化の本邦では国民的要請かつ急務である。
本研究では対象疾患を登録システム確立群(胆道閉鎖症(BA)、先天性胆道拡張症(CBD))、全国調査実施群(アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、ウィルソン病、遺伝性膵炎)、全国調査未実施群(カロリ病、肝内胆管減少症、原因不明肝硬変症、先天性門脈欠損症、新生児ヘモクロマトーシス、膵島細胞症)に分類し、各疾患の医療水準向上を目指して科学的根拠と合意に基づいた診断基準・症度分類を包含する診断治療ガイドラインの作成を目的として研究を計画した。
研究方法
本研究は対象疾患を扱う主な5つの学会・研究会が全て結集し、悉皆性の高い全国調査と幅広い意見集約、総力を挙げたガイドライン作成が可能な体制で行われる。手術症例はNational Clinical Database (NCD)との連携で更に詳細なデータ収集を行う。対象疾患は適切な管理で成人期を迎えられるが、ガイドライン作成による診断治療の標準化と拠点化を図ることで、厚生労働行政の課題の一つである「小児から成人への切れ目のない医療支援」の提供が可能となる。具体的には疾患・疾患群毎にガイドライン完成までの工程のどの段階にあるかを基準にして研究グループを形成して以下の研究を実施した。
1)各疾患の大規模全国疫学調査を実施して発生状況、治療内容を把握する。
2)診断基準・重症度分類を策定し、科学的根拠に基づいた診断治療ガイドラインを作成する。
3)策定された基準の妥当性について検討する。
4)疾患横断的に、病理学的検討、本邦の実情に適合した肝移植適応ガイドライン作成、疾患別年次症例登録システム構築を行う。
結果と考察
平成26年度における研究結果は以下の通りである。
1)BAとCBDについては、診断基準と重症度分類および診療ガイドラインのCQ作成を行った。
2)BAとCBDについては、登録データベース集積を継続し、その解析結果を報告するとともに登録症例とNCDとの比較検討を行うための研究計画書案を策定した。
3)BAについて26例の一次的肝移植例の詳細を解析し、移植適応等についての検討を行った。移植成績は概ね良好であった。
4)難治性小児肝胆膵疾患における病理および診断的遺伝子解析の役割を検討し、病理コンサルテーションと免疫組織化学の意義が大きいこと、遺伝子解析の診断的意義が大きいことが確認された。
5)アラジール症候群の診断基準と重症度分類を策定した。
6)ウィルソン病については、疾患概念、臨床病型、各病型における臨床症状、発症前型への対応、診断方法、診断基準、スクリーニングの適応、治療方針、治療法、合併症、妊娠と出産について検討した。
7)PFIC、遺伝性膵炎、全国調査未実施疾患群については、疾患の概要を把握するために一次および二次調査を実施している。
これらの研究成果と研究概要との関連をまとめると、各疾患の発生状況ならびに治療内容の把握は2)と7)、診断基準・重症度分類の策定とガイドライン作成は1)、5)、6)、策定された基準の妥当性の検討は1)、疾患横断的研究は2)、3)、4)が相当する。研究は概ね予定通り進めることができている。
結論
小児における稀少難治性肝胆膵疾患の克服のためには診療水準を高レベルで均てん化することと理想的なトランジション体制の確立や地域の特性を考慮した拠点化等がきわめて重要であり、診療ガイドラインはそのための有力なツールとなる。多診療科にわたる専門医療職のコンセンサスに基づき、かつ患者にとって有用性の高い診療ガイドライン作成には学会間の壁を越えた連携が不可欠であり、本研究班で構築された小児希少難治性肝胆膵疾患を扱う全日本的な学会連携の枠組みをいかに効率的に活用するかが今後のポイントとなる。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415117Z