再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立

文献情報

文献番号
201415115A
報告書区分
総括
研究課題名
再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-080
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 寛(東京医科大学 八王子医療センター)
  • 遊道 和雄(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター )
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再発性多発軟骨炎(RP)は、原因不明で稀な難治性疾患である。疫学情報は不十分であり、診断・治療のための指針も作成されていない。実地臨床医の認知度も低く診断が見過ごされている症例も多い。全患者の約1割程度が致死的で臓器病変を伴う患者では重症度判定基準の確立と、それに対応した治療法の確立が急務である。
 これまでに重症病態として気管・呼吸器病変ついては解析を行いその報告を行った。本年度は症例数は多くないものの、中枢神経症状と発症すると致命的になる場合の多い心血管病変について疫学的検討を行う事にした。現在の臨床ではRPの活動性を評価する臨床検査としてCRPとMMP3が使われているもののこれらでは判定不能な症例が多い。クォンティフェロン検査(QFT)で測定されているインターフェロンγが、RPの疾患活動性を評価する臨床検査として応用可能であるのか検討する。呼吸器・中枢神経症状・心血管症状の疫学解析の結果に基づきRPの重症度を評価する指標として重症度分類試案を検討して、これを裏付ける事を含めてRPの重症病態をさらに詳細に解析する。
研究方法
平成26年度研究では、当初に平成21~平成23年度本研究事業で行った患者実態・疫学調査(全239症例)をもとに中枢神経症状と心臓血管症状に関して詳細解析を行った。当初の疫学調査では外科領域からの患者情報の収集が欠けていることから、補充の目的で全国の日本胸部外科学会認定の心臓外科修練施設を中心に疫学調査を行った(アンケート発送総数755件で返信総数270件)。
我々の研究班では再発性多発軟骨炎患者会とは平成21年頃より協力関係を構築しているが本年度もRP患者会「HOPE」の疾患啓蒙活動にも積極的に参加した。平成24-平成25年度には患者会と連携して患者登録ウェブサイトJ-RARE.netを構築したが再発性多発軟骨炎患者会からも19人の患者が登録されている。このシステム自体が作成途上であり、現在は主に患者QOLにおけるリアルタイム情報を取り扱っているが、J-RAREの継続的な収集の体制の整備に協力するとともに、今後の患者情報の収集に役立てるべくそれらの医療者再度からの活用を試みた。
結果と考察
 平成26年度研究では、重症化しやすい中枢神経症状と心臓血管症状につき一部は新たな疫学調査を追加して実施し中枢神経症状に関しては既に公表、心臓血管症状は現在論文投稿中である。
中枢神経症状を持つ患者群の特徴として、男性に優位に多く、中枢神経症状の発症年齢は高く、全患者のおよそ10%に中枢神経症状が出現して、その死亡率は18%におよび、中枢神経症状を持たない患者の死亡率8.1%のおよそ2倍である事が明らかになった。この成績は、リウマチ医のみでなく、神経内科医にとっても重要な情報であり、既に一部は公表された(日本臨床別冊神経症候群II Page717-722(2014))が、今後はより積極的に神経内科領域の雑誌に日本語で論文を公表する予定にしている。再発性多発軟骨炎の重症度分類(案)は、既に日本リウマチ学会学術総会で試案として発表した。今後は我々の試案の有用性を評価できる十分な患者資料の収集を行い、その成績に基づき適宜、修正を加えていく。最終的には全国の再発性多発軟骨炎の専門医の意見を聴取して、より完成度の高い再発性多発軟骨炎の重症度分類(案)を完成させる。
結論
 平成26年度研究では、重症化しやすい中枢神経症状と心臓血管症状につき一部は新たな疫学調査を追加して実施し中枢神経症状に関しては既に公表、心臓血管症状は現在論文投稿中である。
中枢神経症状を持つ患者群の特徴として、男性に優位に多く、中枢神経症状の発症年齢は高く、全患者のおよそ10%に中枢神経症状が出現して、その死亡率は18%におよび、中枢神経症状を持たない患者の死亡率8.1%のおよそ2倍である事が明らかになった。この成績は、リウマチ医のみでなく、神経内科医にとっても重要な情報であり、既に一部は公表された(日本臨床別冊神経症候群II Page717-722(2014))が、今後はより積極的に神経内科領域の雑誌に日本語で論文を公表する予定にしている。
同様に心臓血管症状に関しても英文原著が公表されたのちに、日本語で論文を公表して一般臨床医における疾患認知度の改善に努める。
 再発性多発軟骨炎の重症度分類(案)は、既に日本リウマチ学会学術総会で試案として発表した。今後は我々の試案の有用性を評価できる十分な患者資料の収集を行い、その成績に基づき適宜、修正を加えていく。最終的には全国の再発性多発軟骨炎の専門医の意見を聴取して、より完成度の高い再発性多発軟骨炎の重症度分類(案)を完成させる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201415115C

成果

専門的・学術的観点からの成果
再発性多発軟骨炎(RP)の患者において、T細胞分化に作用する複数のサイトカインの血清濃度異常を観察した。このことは他の自己免疫疾患(ベーチェット病)にも共通しており、獲得免疫(T細胞機能)の増幅作用を介した疾患の発作的な症状発現に関与しているものと推察している。現在発作病態の分子的な阻止を目標に、同サイトカインによるT細胞の細胞内機能変動を観察している。
臨床的観点からの成果
平成21~23年度厚労科研費事業「再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立」班研究において本邦の疫学調査を行い、重症病型、すなわち呼吸器・中枢神経合併症につき解析し論文報告した(Inflamm Regen 2014; 34:206–8, Inflamm Regen 2014;34:149–56)。現在、欧米では主要な予後因子として取り扱われる循環器合併症につき、実態調査を論文投稿中である。これで重症度分類策定(次項参照)の基盤情報収集はほぼ終了した。
ガイドライン等の開発
上記研究の結果を受け、まず国際的な疾患活動性評価方法(RPDAI,relapsing polychondritis disease activity index)の確立に応用した(Autoimmun Rev 2012;12: 204–9)。この結果を前述の疫学調査解析に照らし合わせ、本邦の実態に合致するか否かを解析した。その結果を踏まえて、RP重症度分類(案)を作成し学会発表を予定している(平成27年度日本リウマチ学会総会)。
その他行政的観点からの成果
JPA/J-RARE研究班による患者登録サイトの立ち上げに協力した。現在RP患者19名がレジストリに参加している(2015年3月8日現在)。このサイトでは主に患者QOLにおけるリアルタイム情報を取り扱っており、本研究の患者情報の一環として活用する予定である。厚生労働省が目指す難病患者データの「精度の向上と有効活用」という目標の実現の一助になると考える。
その他のインパクト
本班研究による、知的財産権の出願・登録状況は、1. 出願番号PCT/JP2006/318188 自己組織化軟骨様バイオマテリアル(2013年2月現在 特許査定手続き中)、および2. 特願2010-126487 平成22年6月2日「再発性多発軟骨炎の検査方法およびそれに用いられる検査キット」。RP患者会「HOPE」の活動に対する協力・支援を実施し、その内容を会報による啓蒙に応用していただいた。また本研究班のホームページを開設し(平成26年3月~)、研究報告書アップロードを継続している。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
自己組織化軟骨様バイオマテリアル
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2012-118647
発明者名: 学校法人 聖マリアンナ医科大学
権利者名: 学校法人 聖マリアンナ医科大学
出願年月日: 20120524
国内外の別: 国内
特許の名称
再発性多発軟骨炎の検査方法およびそれに用いられる検査キット
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2010-126487
発明者名: 学校法人 聖マリアンナ医科大学
権利者名: 学校法人 聖マリアンナ医科大学
出願年月日: 20100602
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato T, Yamano Y, Tomaru U, et al.
Serum level of soluble triggering receptor expressed on myeloid cells-1 as a biomarker of disease activity in relapsing polychondritis.
Mod Rheumatol. , 2 (1) , 129-136  (2014)
10.3109/14397595.2013.852854.
原著論文2
Shimizu J, Oka H, Yamano Y,et al.
Cardiac involvement in relapsing polychondritis in Japan.
Rheumatology (Oxford). , 55 (3) , 583-584  (2016)
10.1093/rheumatology/kev320.
原著論文3
Shimizu J, Oka H, Yamano Y,et al.
Cutaneous manifestations of patients with relapsing polychondritis: an association with extracutaneous complications.
Clin Rheumatol. , 35 (3) , 781-783  (2016)
10.1007/s10067-015-3160-2.

公開日・更新日

公開日
2015-05-07
更新日
2019-06-11

収支報告書

文献番号
201415115Z