もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する研究

文献情報

文献番号
201415113A
報告書区分
総括
研究課題名
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-078
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
宝金 清博(北海道大学 北海道大学病院脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 冨永悌二(東北大学大学院医学系研究科神経外科学神経科学)
  • 宮本享(京都大学医学研究科脳神経外科)
  • 鈴木則宏(慶応義塾大学医学部神経内科学)
  • 黒田敏(富山大学医学研究科脳神経外科)
  • 小泉昭夫(京都大学医学研究科社会医学系環境衛生学分野臨床遺伝学)
  • 高橋淳(国立循環器病研究センター脳神経外科)
  • 佐藤典宏(北海道大学病院高度先進医療支援センター臨床試験支援)
  • 数又 研(北海道大学病院脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班での研究事業はもやもや病の診断、診療ガイドラインの作成、改訂、普及、疫学研究、QOL調査を主な目的としている。
現在、もやもや病に関しては適正な認定や登録が必ずしもなされておらず的確な診断基準と登録法の確立が一層求められている。本疾患の全容解明と治療法の確立を目指し先進的研究を推進するため検査資料、画像情報などの交換が研究施設間で円滑に行われるようなシステムの整備を目指す。そのための基礎となる患者登録システムを、現在の行政面での運用を念頭においたシステムから研究へ運用できるような内容へ見直す必要がある。
もやもや病患者における疾患感受性遺伝子の発見を端緒に、客観的な診断基準の作成を探索する。無症候性もやもや病 (AMORE)、高次脳機能研究 (COSMO Japan), 成人出血発症例に対する血行再建術の出血予防効果の検討 (JAM trial)などの臨床研究の継続は今後も班会議での重要な任務の一つである。現時点で最も精度の高い診断法や最良の診療マネージメントを明らかにし、高いエビデンスレベルに基づく診療ガイドラインを適宜改訂し難病患者の治療の質の向上に還元することが可能である。さらに、患者による相談に必要なIT整備、医療従事者が各地域の専門家に相談できるようなシステムなど、情報公開に関する努力も必要と思われる。
研究方法
1)新たな難病政策事業に関する制度設計、難病患者登録事業に関しての周知を図る。
2)現在、進行中の各臨床研究の継続 (JAM trial, AMMORE研究、COSMO-Japan study)。
3)臨床個人調査票の改訂:
疾患登録における現状の臨床個人調査票は、臨床情報としてあいまいさを含む。特に疾患概念そのものが変遷することを念頭においた調査項目見直しを行う。
4)重症度基準設定:
重症度基準を設定し臨床個人調査票の項目に、重症度認定に必要な項目を設定する。
4) 難病指定医研修テキストの作成:
「難病指定医」は、難病に係る医療に関し専門性を有する医師であることが指定の要件とされた。これを受けて、指定された学会(日本脳神経外科学会等)の専門医資格を有さない医師に対する一定の基準を満たした研修ならびに研修に使用するテキストの作成が要請された。
5)難病ホームページの拡充
6)実用化研究への端緒:
本政策事業の班員を主な構成メンバーとし、実用化研究事業において病態解明、遺伝子解析や治療薬、新規診断法等の開発につながる研究を目指した。
7)疫学研究、難病患者QOL調査:臨床個人調査票の集計から旧臨床個人調査票の調査項目で明らかになる最新の疫学情報、患者QOLの調査を開始した。
結果と考察
H26年度は、8月、2月に研究班会議を開催し、さらに関連学会の開催を利用して2回の臨時班会議の場を設けた。この際、国立保健医療科学院、健康局疾病対策課から講師を招いた。臨床個人調査票の改訂と重症度基準の策定に関しては、平成26年度第一回班会議で問題提起を行い情報交換を行った上で10月に行われた臨時の研究班会議で班員の承認を得て決定された。これまで行われた難病登録レジストリーから、患者の発症年齢が高齢化していることが示唆された。成人の出血例に対する外科的血行再建術の予防効果に関するRCT(JAM trial)は患者登録が終了し現在、サブ解析が行われている。もやもや病における高次脳機能障害(COSMO-JAPAN study)は、平成27年3月の時点で15名の患者が登録されている。無症候性もやもや病の臨床経過を観察する多施設共同研究は、平成27年3月24日の時点で81名が登録されている。60歳以上の高齢発症もやもや病に関する多施設共同調査は現在、研究計画を作成している。難病指定医テキストを平成27年2月に完成し提出した。また、難病ホームページにより、患者、医師への情報の公開を図るための掲載文書を作成し提出した。政策研究での情報網と基礎研究との連携を利用するため、実用化研究にもやもや病診療の質を高めるためのエビデンス構築を目指した包括的研究の申請書を提出した。また、臨床個人調査票の集計から明らかになる最新の疫学情報、患者QOLの調査を国立保健医療科学院へ依頼した。
結論
患者の発症年齢が高齢化していることが示唆された。H26年度の研究結果から、現状の患者登録システムでは新たな臨床研究のための情報源としての使用ができないなどの問題点も明らかになった。進行中の臨床研究を継続し、高齢化した患者への対応、客観的診断へ向けた新たな臨床研究の開始が決定された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415113Z