先天性難治性稀少泌尿生殖器疾患群(総排泄腔遺残、総排泄腔外反、MRKH症候群)におけるスムーズな成人期医療移行のための分類・診断・治療ガイドライン作成

文献情報

文献番号
201415103A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性難治性稀少泌尿生殖器疾患群(総排泄腔遺残、総排泄腔外反、MRKH症候群)におけるスムーズな成人期医療移行のための分類・診断・治療ガイドライン作成
課題番号
H26-難治等(難)-一般-068
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 正幸(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井 勇樹(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 上野 滋(東海大学 医学部)
  • 藤野 明浩(慶應義塾大学 医学部)
  • 矢内 俊裕(茨城県立こども病院)
  • 加藤 聖子(九州大学大学院 医学研究院)
  • 大須賀 穣(東京大学大学院 医学研究科)
  • 金森 豊(国立成育医療研究センター)
  • 天江 新太郎(宮城県立こども病院)
  • 新開 真人(神奈川県立こども医療センター)
  • 田附 裕子(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 家入 里志(九州大学大学院 医学研究院)
  • 尾藤 祐子(兵庫県立こども病院)
  • 河野 美幸(金沢医科大学)
  • 金子 一成(関西医科大学)
  • 石倉 健司(東京都立小児総合医療センター)
  • 赤澤 宏平(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 林 祐太郎(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 山口 孝則(福岡市立こども病院)
  • 山崎 雄一郎(神奈川県立こども医療センター)
  • 米倉 竹夫(近畿大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
19,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
総排泄腔遺残症(子宮・膣・直腸が総排泄腔という共通腔となり会陰に開口)、総排泄腔外反症(膀胱・直腸が体腔外に外反し、外陰・内性器の低形成を伴う)、Mayer-Rokitansky-Küster-Häuser(MRKH)症候群(膣・子宮の先天性欠損症)は、先天性難治性稀少泌尿生殖器疾患群で、生下時より生涯にわたる排便・排尿機能障害ならびに生殖機能障害を有している。排便機能に関しては、コンセンサスに基づいた治療がなされ成人期に入っての新たな問題発生は少ないが、泌尿生殖器に関しては、未だに経験的治療の域をでていない。そのため、幼少期に作成した腟が成人期に入って狭小化し臍形成が必要となり、内性器の形成不全・外科治療の不具合に基づく思春期の流血路障害や、さらに妊娠・出産などの多くの問題点が成人期に発生している。
 総排泄腔遺残症は平成22年度の先行研究が存在するものの、治療ガイドラインにまでは至っていない。さらに重症な形成不全を示す総排泄腔外反症やMRKH症候群については、世界的にみても全国的調査報告はない。総排泄腔遺残症と総排泄腔外反症に関する最も多くの症例報告は、1998年のHendrenらの治療成績報告(Ann Surg 228:331, 1998)にまで遡らなくてはならず、近年のまとまった調査報告はない。
これら治療困難な3疾患において、泌尿生殖機能を温存し、妊娠・性交・出産が可能な成人期治療へと円滑に移行させ、患児の健やかな成長と予後の改善を図ることで患児の自立を促す包括的ガイドライン作成を目的としている。
研究方法
これら3疾患は稀少難治性疾患であるため、現状では文献的エビデンスに乏しくガイドライン作成に大きな支障となっている。そこで、日本小児外科学会、日本小児泌尿器科学会、直腸肛門奇形研究会が主体となり、小児腎臓病学会、日本産婦人科学会の協力を得て、総合的で長期間にわたる実態調査を本邦で始めて実施する。平成26年度の集計結果は冊子体として出版し、集計結果をエビデンスとして引用できるものとする。集計結果によるエビデンスと文献的検索に基づくエビデンスをもとに、3つの疾患において個別のガイドラインをMindsのガイドライン作成要項に則って作成する。
全国調査は一次調査と二次調査に分け、一次調査で全数把握を行い、二次調査で症例を有する施設に個別症例調査をお願いする。調査項目は、周産期情報、合併異常、生下時外科治療、泌尿生殖合併奇形、根治的外科治療、排便機能、腎機能、生殖機能、就学状況、社会生活、障害者認定という11項目を詳細に検討する。
結果と考察
 初年度の平成26年は、総排泄腔遺残症、総排泄腔外反症、Mayer-Rokitansky-Küster-Häuser(MRKH)症候群の3疾患の網羅的全国調査を予定通り施行できた。
調査対象は、日本小児外科学会認定施設、日本小児泌尿器科学会関連施設とした。
一次調査で、対象244施設のうち113施設より回答があり、過去30年間の経験症例と治療中の症例を調査したが、経験症例数は、総排泄腔遺残症、総排泄腔外反症、MRKH症候群の順に、624例(現在治療中は417例)、358例(243例)、48例(37例)であった。二次調査は、先に示した11 の大項目それぞれに詳細な細目をつけ、合計300に近い調査項目となった。二次調査登録症例は、総排泄腔遺残症、総排泄腔外反症、MRKH症候群の順に、466例(重複24例を除く)、229例(18例)、21例(6例)の登録があり、ほぼ現在本邦において治療中の症例を網羅できたものと結論された。
今回の全国調査はwebを介した登録システムを構築し、一次調査票は遊走子、webでの登録とした。二次調査はweb登録されたメイル宛に発送し、エクセルファイルもしくはワードファイルをダウンロードしての登録とし、登録ファイルはwebでuploadする体裁とした。個別症例調査票は、最終的に一つのエクセルファイルにまとめられ、多数の症例解析が極めてスムースに短時間で行うことができた。また、同じ疾患における症例の重複の判定も容易で、MRKH症候群では27例のうち6例が総排泄腔遺残症との合併でることが判明した。新たな疾患の側面を発見することができた。
結論
平成26年度の全国調査により対象3疾患の本邦における現状を明らかにすることができた。これら集計結果を冊子で発表することにより、平成27年度からのガイドライン作成のエビデンスを構築するだけでなく、海外との治療成績比較も可能となった。さらに、今回の集計結果を海外に発信することで、世界でも類を見ない多数例の集積に基づく本邦発のエビデンスを提示でき、世界レベルにおいて3疾患治療の大きな進歩を来すものと結論された。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415103Z